私選弁護人と国選弁護人の違いについて

私選弁護人と国選弁護人の違いについて

刑事事件の場合、弁護人なしでもよい事件がありますが、多くの事件では、私選・国選を問わず、弁護人が関与するのが一般的になっています。では、私選弁護人と国選弁護人には、どのような違いがあるのでしょうか。

以下では、選任の主体・方法・時期・要件・手続などの項目ごとに検討しながら、私選弁護人と国選弁護人の違いについて説明します。                    

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目次

選任の主体

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の主体に違いがあるのか見てみましょう。

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の主体は、私人になります。

したがって、私人が選任した弁護人私選弁護人といいます。

国選弁護人の場合

国選弁護人選任の主体は、勾留後の被疑者については裁判官、起訴後の被告人については裁判所(または裁判長。以下「裁判所」といいます)になります。 

したがって、裁判官(勾留後の被疑者の段階)または裁判所(起訴後の被告人の段階)が選任した弁護人国選弁護人といいます。                          

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任の主体に違いがあります。

選任の対象となる者

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の対象となる者に違いがあるのか見てみましょう。                             

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の対象となる者には、特段の制約はありません

国選弁護人の場合

国選弁護人選任の対象となる者は、勾留されている被疑者起訴された被告人になります。                     

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任の対象となる者に違いがあります。

選任の方法

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の方法に違いがあるか見てみましょう。  

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の方法には、特段の制約はありません

国選弁護人の場合

国選弁護人選任の方法には、被疑者の段階では、被疑者の請求により裁判官が選任する場合裁判官が職権により選任する場合があり、起訴後の段階では、被告人の請求により裁判所が選任する場合裁判所が職権により選任する場合があります。

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任の方法に違いがあります。

選任の時期

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の時期に違いがあるのか見てみましょう。  

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の時期には制限はなく、いつでも選任することができます。         

したがって、私選弁護人は、被疑者の逮捕中はもとより、在宅事件であっても、弁護活動を行うことができます

国選弁護人の場合

国選弁護人選任の時期は、被疑者については勾留後の段階からとされ、被告人については起訴後の段階とされています。

したがって、国選弁護人は、被疑者が勾留される前(逮捕中や在宅事件)の段階では弁護活動を行うことができません

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任の時期に違いがあります。

選任の対象となる事件

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の対象となる事件に違いがあるのか見てみましょう。  

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の対象となる事件に限定はなく、どのような事件であっても私選弁護人選任の対象になります。

国選弁護人の場合

国選弁護人の場合、被疑者の段階では、被疑者が勾留されていれば、被疑者が勾留されているすべての事件が国選弁護人選任の対象になり、起訴後の段階では、被告人が起訴されているすべての事件が国選弁護人選任の対象になります。

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、被疑者の段階では弁護人選任の対象となる事件に違いがありますが、起訴後の段階では双方の間に弁護人選任の対象となる事件に違いはありません。 

選任の要件

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任の要件に違いがあるのか見てみましょう。  

私選弁護人の場合

私選弁護人選任の要件に制約はなく、私人は私選弁護人を自由に選任することができます

国選弁護人の場合

国選弁護人の場合、勾留された被疑者(または被告人)は、被疑者(または被告人)が貧困その他の事由により弁護人を選任することができないときは、裁判官(または起訴後の裁判所)に対して、国選弁護人を付すよう請求することができます(請求による選任)。

国選弁護人の請求をするには資力申告書を提出しなければなりません。 

なお、資力が政令で定める基準額(現在は50万円)以上である者が請求するには、まず、弁護士会に対して私選弁護人の選任の申出をしていなければなりません。

資力が基準額未満である場合資力は基準額以上であるが、私選の申し込みを拒否された場合必要的弁護事件(起訴後)の場合には、請求を受けた裁判官(または起訴後の裁判所)は、選任の要件を認めるときは、被疑者(または被告人)のため国選弁護人を付さなければなりません。 

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、被疑者の勾留段階または起訴後の段階を問わず、選任の要件に違いがあります。 

選任の手続

私選弁護人と国選弁護人の場合には、その選任の手続に違いがあるのか見てみましょう。

私選弁護人の場合

私選弁護人の場合は、選任の手続に制約はなく、私人は弁護人を自由に選任することができます。

国選弁護人の場合

裁判所は、弁護人を付すべきときは、日本司法支援センター(法テラス)に国選弁護人を指名して通知するように求め、その指名に基づいて、勾留された被疑者については裁判官が、起訴後の被告人については裁判所が、国選弁護人を選任します。

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任の手続きに違いがあります。

選任後の解任

私選弁護人と国選弁護人の間には、その選任後の解任に違いがあるのか見てみましょう。

私選弁護人の場合

私選弁護人の場合は、選任した弁護人をいつでも解任することができます

国選弁護人の場合

国選弁護人の場合は、法律に定められた事由に該当する場合を除き、原則として、選任した弁護人を解任することができません

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、選任後の解任に違いがあります。

弁護費用の負担

私選弁護人と国選弁護人の間には、その弁護費用の負担に違いがあるのか見てみましょう。  

私選弁護人の場合

私選弁護人として活動してもらうためには、弁護費用として着手金報酬金が必要です。  

着手金は、結果にかかわらず受任時に支払われ、報酬金は、起訴・不起訴などの結果に応じて支払われます。また、報酬の金額は、弁護士と依頼者が原則として自由に決定できます。

私選弁護人の場合、弁護費用は選任した私人の自己負担となります。

国選弁護人の場合

国選弁護人として活動してもらうためには、弁護費用として一定の報酬や費用が必要です。

国選弁護人に支払う報酬や費用については、法テラスが「報酬および費用の算定基準」に基づき算定し、国選弁護人に報酬や費用の支払をします。被疑者は、国選弁護人に支払われた弁護費用としての報酬や費用を負担しません

しかし、被告人は、執行猶予付きの有罪判決を受けた場合に、訴訟費用を支払う能力がある場合には、国選弁護人の報酬を含む訴訟費用の負担を命じられることがあります。

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、弁護費用の負担に違いがあります。 

弁護活動

私選弁護人と国選弁護人の間には、その弁護活動に違いがあるのか見てみましょう。

私選・国選であれ、いずれも資格のある弁護人ですから、弁護士倫理上、弁護活動をおろそかにすることは許されません。このことが大前提です。

私選弁護人の場合

私選弁護人は、選任された時点から弁護活動を行うことができますので、早期の対策が可能になります。

たとえば、被害者と示談することにより逮捕を回避できたり、あるいは逮捕中も検察官への働きかけができるため、勾留を回避できたりすることも考えられます。

また、私選弁護人であれば、在宅事件であっても逮捕中であっても、捜査機関の取り調べに関するアドバイスができますので、被疑者には心強いものになります。

そして、被疑者(起訴後は被告人)は、一般的な弁護士のレベルよりも経験値が高く、刑事事件に真に精通している弁護士を選任することが可能なため、その私選弁護人の積極的かつ熱心な弁護活動によって、不起訴処分を獲得できたり、有利な裁判結果を得られたりする可能性もあります。

国選弁護人の場合

国選弁護人は、法テラスの名簿順に機械的に選任されるため、刑事事件に不慣れな弁護士が選任されることもあります。

しかも、在宅事件や逮捕中では、国選弁護人は選任されませんので、どうしても初動の弁護活動が遅れてしまいます。

そのため、結果的に逮捕や勾留を回避できないことも起こり得ます。

双方における違いの有無

私選弁護人と国選弁護人の間には、基本的に弁護活動でやれることに違いはありません。

ただし、弁護活動を開始できる時期に違いがあるため、私選弁護人は早期に関与でき、その結果、被疑者が逮捕や勾留を回避できる可能性があります。

また、私選弁護人には刑事事件に強い弁護士が選任される傾向にありますが、国選弁護人の選任は名簿順のため、私選弁護人と国選弁護人の間には、上述したように、弁護活動に違いが出る場合もあります

まとめ

私選弁護人と国選弁護人には、それぞれ異なる特徴とメリットがあります。私選弁護人早期に関与でき、刑事事件に精通した弁護士を選任できる点が特徴です。一方で、国選弁護人経済的な理由で弁護人を選任できない場合に提供される制度ですが、選任の時期や弁護活動開始が遅れる可能性もあります。

どちらの弁護人を選ぶべきかは、事件の内容や状況に応じて異なります。刑事事件でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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