刑事事件
2025/06/18 2026/05/19

公務執行妨害で逮捕されたら | 判例で問題になった事例などについて

公務執行妨害で逮捕された場合、どのくらいの期間、身柄拘束が続くのか、また起訴されるのか不起訴になるのか、不安を感じる方は少なくありません。

ご家族の立場でも、検察官による処分や裁判所の判断が少しでも有利な結果となるようにと願い、刑事事件に詳しい弁護士に相談したいと考えるのが自然でしょう。

以下では、公務執行妨害罪とは、職務の適法性、公務執行妨害罪の身柄状況、公務執行妨害罪の終局処理人員、裁判所における公務執行妨害罪の科刑状況、判例で問題になった事例などについて説明します。

暴力事件の全体像を知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

https://justus-law.jp/criminal/305/

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公務執行妨害罪とは

以下で、公務執行妨害罪の成立、公務執行妨害罪の保護法益、公務員の職務について、見てみましょう。

公務執行妨害罪の成立

公務執行妨害罪は、職務を行っている公務員に対して、暴行または脅迫を加えることによって成立します(刑法95条1項)。公務執行妨害をした者は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます。

暴行の程度および脅迫の程度は、以下のとおりです。

暴行の程度

公務執行妨害罪における「暴行」とは、刑法208条で定められる狭い意味での暴行とは異なり、より広い意味が採られています。すなわち、公務員に対して向けられた有形力の行使であれば、広義の暴行として扱われます。

具体的には、公務員の身体に直接有形力を加える行為(直接暴行)だけでなく、公務員の補助者や物に対して有形力を加え、その結果として間接的に公務員に物理的または心理的な影響を与える行為(間接暴行)も含まれます。

なお、このような暴行が公務執行妨害罪として成立するには、公務員の職務の執行を妨げる程度のものであることが必要です。

脅迫の程度

公務執行妨害罪における「脅迫」は、人を畏怖させるに足る害悪の告知のすべてを含みます。その害悪の内容、性質、告知の方法を問いません。直接公務員に対するものに限らず、公務員の補助者に対するものでもよいのです。実際に公務員が畏怖したかどうかは問いません。

そして、脅迫の程度は、公務員の職務の執行を妨げる程度のものであることが必要です。

公務執行妨害罪の保護法益

公務執行妨害罪は、公務員に向けられた行為を対象としますが、公務員を保護するのではなく、公務員によって行われる国または地方公共団体の作用、すなわち公務を保護法益とするものです。

公務員の地位自体が保護される面もありますが、これは公務が保護されることの反射的効果とみられています。

And、公務執行妨害罪は、公務員の現在の職務執行を対象としています。

公務員の職務

公務執行妨害罪の客体である公務員については、刑法7条1項が「公務員とは、国又は地方公共団体の職員その他法令により公務に従事する職員、委員その他の職員をいう」と規定しています。

公務員は、一般的に、法令により公務に従事する職員ということができ、国または地方公共団体の職員が代表的な例になります。公務は、国または地方公共団体の事務をいいますが、公務執行妨害罪にいう「職務」とは、広く公務員が取り扱う事務のすべてを含むと解されています。

ところで、「職務」については、判例通説は適法でなければならないと解しています。公務員の違法な行為まで保護を与えるべきではないというのが理由です。

職務の適法性

以下で、要件、判断基準について、見てみましょう。

要件

職務が適法であると判断されるためには、以下の3つの要件をすべて満たす必要があります。

職務の適法性が認められるための3要件
  1. 一般的・抽象的職務権限の範囲内であること
     職務の執行が、その公務員に与えられた一般的・抽象的な職務権限に属していること。
  2. 具体的職務権限を有していること
     当該の具体的な職務行為を行うための権限を、その公務員が実際に持っていること。
  3. 法律上の重要な方式を守っていること
     職務行為としての有効性を保つために必要な、法律上の重要な手続(方式)を正しく履行していること。

このうち、特に③の「法律上の重要な方式を守っていること」が、実質的にもっとも重要な要件であると考えられています。

たとえば、警察官が逮捕状を所持していたにもかかわらず、逮捕の際にそれを被疑者に示さず、被疑事実の要旨も告げなかった場合には、この重要な方式の履践が欠けており、行為は違法とされます。このような場合、その職務は適法といえず、公務執行妨害罪による保護の対象とはなりません。

判断基準

職務の適法性を判断する基準については、次の3つの立場に大別されます。

職務の適法性に関する判断基準の分類
  1. 主観説:公務員自身の認識を基準とする立場
  2. 折衷説:一般人の判断を基準とする立場
  3. 客観説:裁判所による法令解釈を基準とする立場

現在では、客観説が有力とされていますが、その内部でもさらに次の2つの見解が対立しています。

客観説内部の対立する立場
  • 裁判時基準説:裁判時までに明らかになった全事情を基礎に判断すべきとする立場
  • 行為時基準説:行為当時に明らかになっていた状況を基礎に判断すべきとする立場

たとえば、ある逮捕が刑事訴訟法上の現行犯逮捕の要件を満たしていたにもかかわらず、後の裁判でその人物が真犯人ではなかったと判明した場合(いわゆる誤認逮捕)には、この2説により結論が分かれます。

裁判時基準説によれば、後に違法性が明らかになった場合は、遡ってその職務行為は違法とされるため、公務執行妨害罪は成立しません

一方、行為時基準説によれば、事後的に違法と評価される場合であっても、逮捕時点で法定の要件が満たされていれば、その職務は一応適法であり、公務執行妨害罪は成立するという結論になります。

この点に関し、最高裁決定(昭和41年4月14日)は、「事後的に純客観的な立場から判断されるべきでなく、行為当時の状況にもとづいて客観的、合理的に判断さるべき」と述べました。そして、被告人の挙動には現行犯人と認めるに足りる十分な理由があり、逮捕行為は適法であるとした原判決を「相当」として是認しました。

このような内容から、最高裁が行為時基準説を採用したとする見解もありますが、判例において明確に立場を示しているわけではありません。そのため、判例は裁判時基準説と行為時基準説のいずれにも明確に立っていないと解する見解も有力です。

公務執行妨害罪の身柄状況

令和5年検察統計年報によれば、令和5年(2023年)の検察庁既済事件の公務執行妨害罪の身柄状況は、下記表のとおりです。

逮捕関係 勾留関係
総数(A) 逮捕されない者 警察等で逮捕後釈放 警察等で逮捕・身柄付送致(B) 検察庁で逮捕(C) 身柄率(%) 認容(D) 却下(E) 勾留請求率(%)
1,796 234 285 1,276 1 71.1 890 148 81.3
逮捕関係 総数(A) 1,796
逮捕されない者 234
警察等で逮捕後釈放 285
警察等で逮捕・身柄付送致(B) 1,276
検察庁で逮捕(C) 1
身柄率(%) 71.1
勾留関係 認容(D) 890
却下(E) 148
勾留請求率(%) 81.3

公務執行妨害罪には、刑法第5章(公務の執行を妨害する罪)の公務執行妨害罪を含むすべての罪を含みます。

身柄率は(B+C)÷Aで、勾留請求率は(D+E)÷(B+C)でそれぞれ求めます。

上記の数字から、逮捕率が87.0%(1,562人)、身柄率が71.1%であることがわかります。

以上によれば、適正に執行されている公務を保護する観点から、公務執行妨害罪の逮捕率や身柄率が、他の罪(たとえば、同じ資料で殺人罪の逮捕率が36.2%、身柄率が36.5%)と比べても高い傾向にあるといえます。

公務執行妨害罪の終局処理人員

令和5年検察統計年報によれば、令和5年(2023年)の公務執行妨害罪の検察庁終局処理人員は、下記表のとおりです。

総数 起訴(起訴率) 公判請求(起訴で占める率) 略式請求(起訴で占める率) 不起訴(不起訴率) 起訴猶予(不起訴で占める率) その他(不起訴で占める率)
1,602 712(44.4%) 307(43.1%) 405(56.9%) 890(55.6%) 748(84.0%) 142(16.0%)
総数 1,602
起訴(起訴率) 712(44.4%)
公判請求(起訴で占める率) 307(43.1%)
略式請求(起訴で占める率) 405(56.9%)
不起訴(不起訴率) 890(55.6%)
起訴猶予(不起訴で占める率) 748(84.0%)
その他(不起訴で占める率) 142(16.0%)

公務執行妨害罪は、刑法第5章(公務の執行を妨害する罪)のうちの公務執行妨害罪のみの数字です。

起訴率は、「起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100の計算式で得た百分比、不起訴率は、「不起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100の計算式で得た百分比のことです。

上記の数字から、起訴率が44.4%、不起訴率が55.6%であることがわかります。

以上によれば、公務執行妨害に対する厳しい姿勢は、起訴・不起訴の終局処理人員にも表れており、公務執行妨害罪の起訴率が、他の罪(たとえば、同じ資料で殺人罪の起訴率が27.4%、脅迫罪の起訴率が36.4%)と比べても比較的高いといえます。 

裁判所における公務執行妨害罪の科刑状況

以下で、公務執行妨害罪の地方裁判所における科刑状況および第一審における罰金の科刑状況について、見てみましょう。

地方裁判所における公務執行妨害罪の科刑状況

令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)の「資料2-3 地方裁判所における死刑・懲役・禁錮の科刑状況(罪名別)」によれば、地方裁判所における公務執行妨害罪の科刑状況は、下記表のとおりです。

総数 2年以上3年以下 1年以上2年未満 6か月以上1年未満 6か月未満
実刑 全部執行猶予 実刑 全部執行猶予 実刑 全部執行猶予 実刑 全部執行猶予
157 2 4 19 60 33 35 3 1
総数 157
2年以上3年以下 実刑 2
全部執行猶予 4
1年以上2年未満 実刑 19
全部執行猶予 60
6か月以上1年未満 実刑 33
全部執行猶予 35
6か月未満 実刑 3
全部執行猶予 1

上記の数字から、実刑率は36.3%、全部執行猶予率は63.7%になっています。

第一審における公務執行妨害罪の罰金の科刑状況

令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)の「2-3-3-4表 第一審における罰金・科料科刑状況(罪名別)」によれば、第一審における公務執行妨害罪の罰金の科刑状況は、下記表のとおりです。 

下記表では、通常第一審も略式手続でも、30万円以上50万円未満の罰金額が多い傾向にあるといえます。

通常第一審

総数 100万円未満 50万円未満 30万円未満 20万円未満 10万円未満 5万円未満
45 8 24 13
総数 45
100万円未満 8
50万円未満 24
30万円未満 13
20万円未満
10万円未満
5万円未満

略式手続

総数 100万円未満 50万円未満 30万円未満 20万円未満 10万円未満 5万円未満
421 25 278 103 15
総数 421
100万円未満 25
50万円未満 278
30万円未満 103
20万円未満 15
10万円未満
5万円未満

判例で問題になった事例

公務執行妨害罪について判例で問題になった事例は、以下のとおりです。

公務執行妨害罪の暴行にあたるとされたケース

判例では、公務執行妨害罪における「暴行」は、必ずしも公務員の身体に対する直接的な暴行に限られず、物に対する行為であっても、それが公務員に向けられたものと評価できる場合には、「間接暴行」として暴行に該当するとされています。

判例上、「間接暴行」とされた具体的行為
  • 押収してトラックに積み込んだ煙草を街路上に投げ捨てた行為
  • 差し押さえた密造酒入りのかめを鉈で破砕し、中身を流出させた行為
  • 差し押さえた覚せい剤入りのアンプルを足で踏みつけて損壊させた行為

これらの行為はいずれも、公務員の身体に対するものではなく物に向けられたものですが、公務の執行に対する妨害の意思と結果があるため、間接暴行として公務執行妨害罪の暴行に該当すると判断されています。

逮捕状の緊急執行におけるケース

逮捕状の緊急執行に関するケースについては、下級審の判断が分かれています。

刑訴法201条および同条2項が準用する73条3項によれば、「逮捕状により被疑者を逮捕するには、逮捕状を被疑者に示さなければならない。逮捕状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、被疑者に対し被疑事実の要旨および令状が発せられている旨を告げて、その執行をすることができる」とされています。

この点について、東京高判昭和34年4月30日は、「急速を要するとき」という要件を満たしていなかったうえ、被告人に対し、「罪名および逮捕令状が発せられている旨」のみを告げ、「被疑事実の要旨」を告げなかったことから、逮捕行為は「緊急性の要件」を備えておらず、また「逮捕状の緊急執行の重要な方式」を履践していないとして、逮捕は違法であり、被告人がこれを排除するために暴行を加えても、公務執行妨害罪は成立しないと判断しました(大阪高判昭和32年7月22日も同旨)。

一方、福岡高判昭和27年1月19日は、警察官が「逮捕状を所持しないためこれを示すことができない場合において、急速を要するときは、被告人に対し、被疑事実の要旨と令状が発せられている旨を告げなければならない」ことを誤解し、「単に罪名と令状が発せられている旨を告げれば足るものと考え、被告人に対し、窃盗の嫌疑により逮捕状が発せられている旨を告げて逮捕せんとした」ケースについて、逮捕行為は法令に定める手続に違反し違法ではあるものの、その違法の程度は「全然被疑事実を告げなかった場合」とは異なり、重大な違法とはいえないとしました。

そのうえで、「形式的には適法な職務執行行為と称しうる」ため、被告人が巡査に加えた暴行については、公務執行妨害罪が成立すると判断しています。


まとめ

公務執行妨害で逮捕された場合、不安や疑問が募ることと思います。被疑者の早期釈放や不起訴を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判所に対して適切に働きかけます。経験豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しについても、具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者に有利な結果を引き出す可能性が高まります。公務執行妨害でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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