保釈の際に裁判所に預ける金銭が「保釈金」です。この保釈金はどのような目的で預けられるのでしょうか。また、預ける際の金額の相場はどのくらいなのでしょうか。
以下では保釈金とはどのようなものか、その目的や相場などについて説明します。
保釈金とは
保釈金とは、保釈によって身柄を釈放する際に裁判所に預ける金銭のことをいいます。
正式には保釈保証金と言いますが、実務では保釈金と呼ばれることが多いです。この記事でも以下、保釈金と呼びます。
保釈とは
保釈とは、勾留されている被告人の身柄を解放する制度です。
犯罪を犯して逮捕・被疑者勾留によって身柄拘束されている人は、検察官に起訴されると被告人勾留により引き続き身柄拘束されます。この被告人勾留は罪証の隠滅を防ぎ、被告人が公判・刑の執行のための出頭を確実にするのが目的です。一方で、被告人の身柄拘束を続けることは、無罪の場合や執行猶予や罰金で済む場合の社会復帰を阻害することになりかねません。
罪証隠滅の防止や出頭確保と社会生活維持とのバランスを取るために、保釈という制度が定められています。
保釈金の目的
保釈金は保釈をするにあたって罪証隠滅の防止・公判への出頭を確保する目的で預けるものです。
罪証隠滅の防止・公判への出頭の確保という保釈の目的から、被告人の身柄拘束をする勾留のほかに、金銭を預かって何かあると没収するという経済的な手段によって達成します。
保釈金は返還してもらえる
保釈金の目的は罪証隠滅の防止・公判への出頭確保なので、刑事事件において罪証隠滅をせずにきちんと公判に出頭し、無事刑事裁判が終了すれば、保釈金の目的を終えます。そのため、刑事裁判が終了すると保釈金は返還してもらえます。
なお、実刑判決が下された場合でも保釈金は返還されます。
保釈金が没収されるケース
次の事由があると裁判所は保釈を取り消すことができます。
- 被告人が召喚されたのに正当な理由なく出頭しなかった
- 被告人が逃亡した・逃亡することが疑われる相当な理由がある
- 被告人が罪証隠滅した・罪証隠滅することが疑われる相当な理由がある
- 被告人が被害者や事件に関係ある人、その家族の身体もしくは財産に害を加えた・加えようとした、またはこれらの者が恐怖を感じる行為をした
- 被告人が裁判所への報告をしなければならない事項について報告をしない・虚偽の報告をした
- 被告人が住居の制限など裁判所が定めた条件に違反した
保釈が取り消されると、預けた保釈金は一部または全額が没収されることがあります。
保釈金の相場
保釈金として預ける金銭の相場はどのくらいなのでしょうか。
保釈金の決め方
保釈金はどのように決定されるのでしょうか。
保釈金は被告人の罪証隠滅を防ぎ、出頭を確保するために預けさせるものであり、抑止力として働く額である必要があります。そこで次のような要素によって保釈金が決まります。
- 犯罪の性質
- 犯罪の情状
- 証拠の証明力
- 被告人の性格
- 被告人の資産
とくにその中でも、犯罪の性質と被告人の資産が大きな要素となります。
犯罪の性質
犯罪が重大・刑が重いほど、罪証隠滅や逃亡したいという気持ちが強く働きます。そのため、犯罪の性質は保釈金の額に影響を与えます。
被告人の資産
同じ100万円でも、資産が1億円ある人と、資産が500万円しかない人では、没収されたときの重みが異なります。そのため、被告人の資産は保釈金の額に影響します。
保釈金の一般的な相場は150~300万円
被告人に保釈金の支払い能力がない場合であっても150万円を下回ることは稀であり、一般的には150万円が最低限と考えておくべきです。そこから犯罪の性質や被告人の資産などの要素をもとに保釈金が決められ、一般的には150~300万円が保釈金の相場とされています。
保釈金を用意できない場合には保釈保証金立替を利用
保釈金の金額は非常に高額です。すぐに用意するのが難しい場合には、保釈保証金立替を利用しましょう。
保釈保証金立替とは、一般社団法人日本保釈支援協会が行っている、保釈金の立替をしてくれるものです。500万円を限度額として立替払いを受けることができます。もっとも保釈保証金立替を利用できるのは被告人の関係者(家族・友人など)のみで、被告人自身は利用できません。
まとめ
保釈金とはどのようなものか、保釈金の相場について解説しました。被告人の罪証隠滅を防止し、出頭を確保するための保釈金は、犯罪の性質・被告人の資産に応じて150万円以上かかります。
できるかぎり有利に保釈をしてもらいたい場合には、弁護士に依頼して保釈請求するのがおすすめです。
家族が刑事事件を起こして起訴された場合の対応についてお悩みであれば、まず刑事事件に詳しい弁護士に相談することをおすすめします。