犯罪は1人で行われるわけではなく、複数の者が関与することがあります。複数の者が関与して犯罪が行われることを共犯といい、共同正犯・教唆犯・幇助犯という種類に分かれます。
そこで以下では、共犯についてその内容や、罪に問われる場合どう扱われるのかについて説明します。
共犯とその種類
複数の者が犯罪に関与している場合が共犯です
必要的共犯と任意的共犯
共犯はまず、犯罪自体が複数の者による共犯であることが前提となっている必要的共犯と、単独の者による犯罪を複数の者で行う任意的共犯に分類されます。
種類 | 例 |
必要的共犯 | 重婚罪(配偶者のある者とその相手が必要)賄賂罪(賄賂を与える人と受け取る人が必要)わいせつ物頒布罪(わいせつ物を頒布する人と受け取る人が必要) |
任意的共犯 | 窃盗罪傷害罪詐欺罪etc… |
任意的共犯の3種類(共同正犯・教唆犯・幇助犯)
その関与の程度によって共同正犯・教唆犯・幇助犯という3つの種類に分かれます。
共犯の種類 | 内容 | 処罰 |
共同正犯 | 共同して犯罪を実行すること | 正犯として処罰 |
教唆犯 | 犯罪をそそのかすこと | 正犯として処罰 |
幇助犯 | 犯罪を手助けすること | 従犯として処罰 |
なお、正犯とは自ら犯罪を行う場合、従犯とは正犯を手助けすることをいいます。
共同正犯(刑法第60条)
共同して犯罪を実行することが共同正犯です。
例えば、人に暴行をして怪我をさせた場合には傷害罪が成立しますが、複数人で暴行を加えて怪我をさせた場合には、暴行に参加した全員が傷害罪の共同正犯となります。
なお、実行行為を行っていない場合でも、共謀に加わったことをもって共同正犯として扱われることもあります(共謀共同正犯)。暴力団による刑事事件で実際に実行していない幹部に刑事責任を負わせるようなケースで問題となります。
共同正犯として扱われる場合、全員が1人で犯罪を行った場合と同様に正犯として処罰されます。
教唆犯(刑法第61条)
人をそそのかして犯罪を行わせるのが教唆犯です。
例えば、AがBに対して「Cを殴ってこい」と唆し、BがCを殴って怪我を負わせるようなケースで、Bには傷害罪が、Aには傷害罪の教唆犯が成立します。もっとも、教唆犯が成立するためのは、そそのかされた結果、正犯が犯罪を実行することが必要です。そのため、他人が犯罪を実行しなかった場合はもちろん、そそのかした行為とは無関係に正犯が犯罪を実行した場合には、教唆犯は成立しません。
実行行為を行っていない点で教唆犯と共謀共同正犯は共通します。その違いは犯罪の重要な役割を担っているか、そそのかしたに過ぎないかです。
教唆犯は正犯として処罰されることになっていますが、正犯よりも刑が軽くなる傾向にあります。そのため、共謀共同正犯として刑事責任を追及されている場合には、教唆犯に過ぎないと主張して、刑を軽くしてもらうように活動する必要があります。
幇助犯(刑法第62条)
犯罪を手助けするのが幇助犯です。
例えば、Aが住居侵入をするために、BがAに道具を貸したケースでは、Aには住居侵入罪が、Bには住居侵入罪の幇助犯が成立します。凶器の準備や逃走の手助けなど物理的なものはもちろん、心理的に励ますなど精神的なものであっても成立します。本人は手助けのつもりでも、犯罪の一部を実行しているので幇助犯ではなく共同正犯です。例えば、本人は手助けのつもりでも特殊詐欺の受け子(現金を受け取る役目)は実行行為の一部なので幇助犯ではなく共同正犯となります。
幇助については従犯とされ、従犯は正犯の刑を減軽する(=半分にする)ことになっています。
共犯事件になりやすい犯罪
犯罪のうち共犯になりやすい犯罪として、詐欺罪・強盗罪・恐喝罪が挙げられます。
詐欺罪
詐欺罪では、特に特殊詐欺において前述の受け子や出し子(奪ったキャッシュカードで現金を引き出す役目)といった人の他にも、様々な役割を持った人がおり、共犯となりやすいことが知られています。
強盗罪・恐喝罪
強盗罪や恐喝罪は多数の人によって計画して行われることが多く、共犯になりやすいことが知られています。
共犯事件における3つの特徴
共犯事件においては次の3つの特徴があります。
- 逮捕・勾留される可能性が高くなる
- 勾留が長期化する
- 接見禁止処分が下される可能性が高い
逮捕・勾留される可能性が高くなる
逮捕・勾留は罪証隠滅・逃亡を防ぐためにされますが、共犯事件では共犯者に証拠隠滅される可能性が高くなるため、逮捕・勾留される可能性が高くなります。
勾留が長期化する
起訴前の勾留は20日、起訴後には2ヶ月で、必要に応じて1ヶ月ごとに更新されます。共犯事件では罪証隠滅・逃亡を防ぐ必要があるので、勾留が長期化し保釈の許可も下りない可能性が高いです。
接見禁止処分が下される可能性が高い
共犯事件では、まだ逮捕されていない共犯者や事件の関係者がが接見に来て、証拠隠滅や口裏合わせなどを行うおそれがあり、接見禁止処分が下される可能性が高いです。
まとめ
本記事では、共犯について解説しました。共犯は関わり方によって共同正犯・教唆犯・幇助犯に分類されます。共犯は逮捕・勾留などの身柄拘束の可能性が高くかつ長期化し、接見禁止処分もされることもあり、不利な状況に追い込まれがちです。また、どれに認定されるかは言い渡される刑に影響しますので、なるべく早く弁護士に相談してください。