飲酒運転で逮捕されたら

飲酒運転で逮捕されたら

飲酒運転で逮捕された場合、いつまで身体を拘束されるのか不安に感じる方も多いでしょう。

被疑者のご家族も、逮捕後に検察官がどのような処分を下すのか、また裁判所がどのように判断するのか、不安は尽きないことでしょう。

以下では、飲酒運転とは飲酒運転で逮捕された後はどうなるのか飲酒運転の運転者以外の周辺の者の罪飲酒運転の罪の量刑傾向よくある事例などについて説明します。

なお、「道路交通法」は「道交法」、「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」は「自動車運転死傷処罰法」、「令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)の『2-3-3-4表 第一審における罰金・科料科刑状況(罪名別)』」は「犯罪白書Ⅰ」、「令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)の『4-1-3-4表 交通事件通常第一審における有罪人員(懲役・禁錮)の科刑状況』」は「犯罪白書Ⅱ」と略称します。

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目次

飲酒運転とは

道交法65条1項は、「何人も、酒気を帯びて車両等を運転してはならない」と規定しています。

道交法は、程度や量を問わず、一律に車両等(自転車を含む)の飲酒運転を禁止しています。

すなわち飲酒運転とは、酒気を帯びた状態で車両等を運転することをいいます。

酒に酔っているかどうかは個人差が大きいため、酒気を帯びて運転しても、必ずしも具体的な危険が生じるとは限りません。

このため、罰則の適用にあたっては、酒酔い運転(道交法117条の2第1項1号)酒気帯び運転(道交法117条の2の2第1項3号)に区分して取り扱われています。

以下で、酒酔い運転、酒気帯び運転について見てみましょう。

酒酔い運転

酒酔い運転とは、「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」で車両等を運転した場合をいいます(道交法117条の2第1項1号)。 

酒に酔った状態かどうかは、血中・呼気中アルコール濃度に関係なく、アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態かどうかで判断します。

体内に保有されるアルコール量は一定ではありません。

この「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態」とは、社会通念上のいわゆる酔っている状態に限らず、その程度に至らない場合でも、アルコールにより身体や判断に明らかな影響が認められる状態を指します。

具体的には、以下のような症状がみられる場合が該当します。

該当するおそれのある症状
  • 歩行が不安定である(直線上をまっすぐ歩くことができない など)
  • 言語動作が不明瞭である(明らかに呂律が回っていない など)
  • 警察官の質問に対して適切に受け答えができない
  • 感覚機能・運動機能・判断能力・抑制能力のいずれかが著しく低下している

以上の症状が確認される場合には、「正常な運転ができないおそれがある状態」に該当すると判断されます。

そのため、このような状態にあるときは「酒酔い」に該当すると解されています。

なお、アルコールに対する耐性には個人差があるため、アルコール濃度が後述する基準値を下回っていても、本人の動作や反応に異常がみられれば、酒酔い運転と認定される可能性があります。

そして「正常な運転」とは、「道路における危険を防止し、交通の安全と円滑を図るため、運転者に課せられている相当の注意義務を十分に守ることができる身体的または精神的状態のもとで行う運転」のことを意味します。

酒酔い運転の「故意」については、「自らがアルコールの影響により正常な運転ができないおそれがある状態に達している」ということまで認識している必要はなく、飲酒によりアルコールを自己の身体に保有しながら車両等の運転をすることの認識があれば足りると解されています。

酒酔い運転の罪は、5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金に処せられます(道交法117条の2第1号)。

酒気帯び運転

酒気帯び運転とは、身体に、政令(道交法施行令44条の3)で定める基準値(血液1mLにつき0.3mgまたは呼気1Lにつき0.15mg)以上のアルコールを保有した状態で車両等を運転したことをいいます(道交法117条の2の2第1項3号)。

酒気帯び運転は、意識がはっきりしていて運転に支障がないように見える場合でも、検知されたアルコール濃度が基準値以上であれば成立します。

酒気帯び運転の「故意」については、飲酒によりアルコールを体内に保有した状態で車両等を運転する認識があれば足り、「政令所定のアルコール保有量の基準値以上である」ということまで認識している必要はないと解されています。

酒気帯び運転の罪は、3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処せられます(道交法117条の2の2第3号)。

飲酒運転で逮捕された後はどうなるのか

飲酒運転で逮捕された場合でも、住居不定、罪証隠滅のおそれ、または逃亡のおそれに該当しない限り、被疑者が勾留に至らないケースが多いのが現状です。

また、飲酒運転中に人身事故を起こして逮捕された場合でも、危険運転致死傷罪やひき逃げ事件でない限り、住居不定、罪証隠滅のおそれ、または逃亡のおそれに該当しなければ、勾留されず、任意に釈放されることが一般的です。

飲酒運転の運転者以外の周辺の者の罪

道交法は、飲酒運転を行う運転者以外の周辺者についても罰則を設けています。

主な周辺者の罪は、下記のとおりです。

罪名道交法の違反規定罰則
運転者が酒酔い運転(道交法の罰条)運転者が酒気帯び運転(道交法の罰条)
車両等提供罪※165条2項5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金(117条の2第1項2号)3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(117条の2の2第1項4号)
酒類提供罪※265条3項3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(117条の2の2第1項5号)2年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(117条の3の2第2号)
要求・依頼同乗罪※365条4項3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(117条の2の2第1項6号)※42年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(117条の3の2第3号)※5

※1 「酒気を帯びている者で、道交法65条1項に違反して車両等を運転することとなるおそれがあるもの」に対して車両等を提供することを禁止する規定です。提供を受けた者が酒酔いまたは酒気帯び状態で運転した場合に成立します。

※2 「道交法65条1項に違反して車両等を運転することとなるおそれがある者」に対して、支配下の酒類を提供したり飲酒をすすめる行為も禁止されています。酒類の提供を受けた者が酒酔いまたは酒気帯び状態で運転した場合に成立します(なお、飲酒をすすめた者への罰則は設けられていません)。

※3 車両の運転者が酒気を帯びていると知りながら、その運転者に自らの運送を要求または依頼し、道交法65条1項に違反して運転する車両に同乗する行為を禁止する趣旨の規定です。

※4 ※3の要求・依頼した者が、運転者が酒に酔った状態にあると知りながら同乗し、その運転者が酒酔い状態で運転した場合に成立します。

※5 「車両の運転者が酒気を帯びていることは認識しているものの、酒に酔った状態にあるまでの認識はない中で要求または依頼して同乗したときで、当該運転者が酒に酔った状態または酒気を帯びた状態で当該車両を運転した場合」および「運転者が酒に酔っていると認識して要求または依頼をして同乗したときで、当該運転者が酒気を帯びた状態で当該車両を運転した場合」に成立します。

飲酒運転の罪の量刑傾向

飲酒運転の罪を犯した場合、初犯であれば罰金で処理されることが多いものの、同種の罰金前科がある場合には公判請求されるのが一般的です。

はじめて公判請求された場合は、執行猶予となる可能性が高いといえます。

飲酒運転の罪に関する量刑傾向は、おおむね以下のとおりです。

罰金の場合

飲酒運転が初犯の場合、酒酔い運転では50万円程度酒気帯び運転では20万〜30万円程度の罰金が科されることが多いようです。

なお、犯罪白書Ⅰによれば、第一審における道交法違反の罰金科刑状況は、次のとおりです。

総数100万円以上100万円未満50万円未満30万円未満20万円未満10万円未満5万円未満
2392481171054413
(令和5年)
総数239
100万円以上2
100万円未満48
50万円未満117
30万円未満10
20万円未満5
10万円未満44
5万円未満13
(令和5年)

拘禁刑の場合

以下では、交通事犯(道交法違反または人身事故)に関する公判請求歴がある場合と、それ以外の罪で公判請求歴がある場合とに分けて、飲酒運転の量刑傾向を説明します。 

交通事犯の罪の公判請求歴がある場合の飲酒運転の罪の量刑傾向

交通事犯の罪に関する公判請求歴がある場合の飲酒運転の量刑傾向は、以下のとおりです。

交通事犯の公判歴がある場合の量刑傾向
  1. 交通事犯で執行猶予中の場合:実刑となります。
  2. 交通事犯(飲酒運転)の実刑歴がある場合:執行猶予が可能であっても、原則として実刑。ただし、服役から相当の期間が経過しているときは、情状により保護観察付き執行猶予となる可能性があります。
  3. 交通事犯(飲酒運転以外の道交法違反または人身事故)の実刑歴がある場合:執行猶予が可能な場合は、罪の内容や服役からの経過年数などの情状により、実刑になるか、保護観察付き執行猶予となるかが判断されます。
  4. 交通事犯(飲酒運転)の執行猶予歴がある場合:猶予期間がすでに経過しており執行猶予が可能であっても、原則は実刑。ただし、猶予期間終了後の年数が長い場合には、情状により保護観察付き執行猶予となる可能性があります。
  5. 交通事犯(飲酒運転以外の道交法違反または人身事故)の執行猶予歴がある場合:猶予期間が経過し執行猶予が可能な場合でも、当時の罪の内容や猶予期間経過後の年数などの情状によって、実刑になるか、保護観察付き執行猶予となるかが判断されます。

交通事犯以外の罪の公判請求歴がある場合の飲酒運転の罪の量刑傾向

交通事犯以外の罪で公判請求歴がある場合の飲酒運転の量刑傾向は、以下のとおりです。

交通事犯以外の公判歴がある場合の量刑傾向
  1. 交通事犯以外の罪で執行猶予中の場合:原則として実刑。ただし、執行猶予中の罪の内容など、個別の情状によっては保護観察付き執行猶予となる可能性があります。
  2. 交通事犯以外の罪で実刑歴がある場合:執行猶予が可能なときは、服役した罪の内容や服役からの経過年数などの情状によって、実刑となるか、保護観察付き執行猶予となるかが判断されます。
  3. 交通事犯以外の罪で執行猶予歴があり、猶予期間が経過している場合:執行猶予が可能な場合でも、当時の罪の内容や猶予期間経過後の年数などの情状により、実刑か保護観察付き執行猶予のいずれかが選択されます。

なお、犯罪白書Ⅱによれば、通常第一審における道交法違反の罪の有罪人員(懲役)の科刑状況は、下記表のとおりです。

総数実刑総数(実刑率)5年以下3年2年以上1年以上(一部執行猶予)※6か月以上(一部執行猶予)※6か月未満執行猶予総数(執行猶予率)
4,833775(16.0%)4615135(うち1)433(うち1)1824,058(84.0%)
(令和5年)
総数4,833
実刑総数
実刑率
775
(16.0%)
5年以下4
3年6
2年以上15
1年以上
一部執行猶予
135
(うち1)
6か月以上
(一部執行猶予)※
433
(うち1)
6か月未満182
執行猶予総数
執行猶予率
4,058
(84.0%)
(令和5年)

※一部執行猶予は、一部執行猶予付き判決の言渡しを受けた人員(括弧内)であり、実刑部分と猶予部分を合わせた刑期によります。

よくある事例

飲酒運転した者が呼気検査を拒否するケース

道交法67条3項は、車両等に乗車している者、または乗車しようとしている者が、道交法65条1項(酒気帯び運転の禁止)に違反して車両等を運転するおそれがあると認められる場合について定めています。

この場合、警察官は、その者が正常に運転できる状態になるまで運転を禁止するなど、道路における交通の危険を防止するために必要な応急措置を講じることができます。

さらに、身体に保有しているアルコールの程度を調べるため、道交法施行令26条の2の2に定める手続により呼気検査を実施できます。

同条は、「呼気の検査は、検査を受ける者にその呼気を風船またはアルコールを検知する機器に吹き込ませることによりこれを採取して行うものとする」と規定しています。

飲酒検問において、呼気検査を拒否することは認められていません。

飲酒していない場合であっても、呼気検査には必ず応じる必要があります

呼気検査を拒否したり、検査を妨げたりした場合は、飲酒検知拒否罪に問われます。

道交法118条の2は、「67条3項の規定による警察官の検査を拒み、または妨げた者は、3月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金に処する」と定めています。

飲酒運転の罪が自動車運転死傷処罰法所定の罪と併合罪になるケース

危険運転致死傷罪(自動車運転死傷処罰法2条1号・3条1項。以下同じ)は、構成要件に酒酔いの状態を包含しており、法定刑も重いため、危険運転致死傷罪が成立する場合は、同時に酒酔い運転に該当していても、酒酔い運転の罪は成立しないと解されています。

他方で、危険運転致死傷罪の構成要件には酒気帯び運転が含まれていないため、酒気帯び運転の罪は別個に成立します。

すなわち、酒気を帯びて自動車運転死傷処罰法2条2号の制御困難な高速度の危険運転行為を行った場合には、危険運転致死傷罪(同法2条2号)と別に酒気帯び運転の罪が成立し、両罪は併合罪の関係に立ちます。

また、飲酒運転中に、アルコールの影響を伴わない過失運転致死傷罪(同法5条)を起こせば、過失運転致死傷罪飲酒運転(酒酔いあるいは酒気帯び)の罪が成立し、両罪は併合罪の関係に立ちます。

飲酒運転の罪と自動車運転死傷処罰法所定の罪が併合罪になる場合の処断刑は、下記表のとおりです。

飲酒運転の罪(罰則)自動車運転死傷処罰法所定の罪(該当法条)(罰則)併合罪加重による処断刑
酒酔い運転の罪(5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)過失運転死傷罪(5条)(7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)10年6か月以下の拘禁刑または200万円以下の罰金
酒気帯び運転の罪(3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)危険運転致傷罪(3条1項)(人を負傷させた場合には12年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合には15年以下の拘禁刑)
人を負傷させた場合には15年以下の拘禁刑、人を死亡させた場合には18年以下の拘禁刑
過失運転死傷罪(5条)(7年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)10年以下の拘禁刑または150万円以下の罰金 

飲酒運転の内容によって行政処分が変わるケース

自動車免許制度では、運転者が交通違反や自動車事故を起こすと、内容に応じた「違反点数」が加点され、過去3年間の累積点数が一定の数値に達すると、一定期間の免許停止や免許取消しといった行政処分が科されます。

行政処分の対象となる点数や、免許停止・取消期間の長さは、過去3年以内の行政処分歴(前歴)の有無によって変動します。

飲酒運転の場合の行政処分は、下記表のとおりです(飲酒運転の内容によって行政処分が変わります)。

違反種別行政処分※1
違反点数免許停止・取消し(欠格期間※2)
酒酔い運転35点免許取消し(欠格期間3年)
酒気帯び運転呼気中アルコール濃度0.15mg/1L未満処分なし
呼気中アルコール濃度0.15mg/1L以上0.25mg/1L未満13点免許停止90日
呼気中アルコール濃度0.25mg/1L以上25点免許取消し(欠格期間2年)

※1 「違反点数、その他の処分」は、いずれも前歴やその他の累積点数がない場合です。なお、前歴や累積点数がある場合は、違反内容に応じてより高い点数が付されます。

※2 「欠格期間」とは、運転免許を取り消された後、運転免許を再取得できない期間のことです。

まとめ

飲酒運転で逮捕された場合、罰金で済むのか、公判請求されるのかなど、不安は尽きないものと思われます。

被疑者の早期釈放を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

飲酒運転に関するお困りごとがある際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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