公然わいせつ罪で逮捕されたら

公然わいせつ罪で逮捕されたら

公然わいせつ罪で逮捕されると、今後どうなるのかと不安に感じる方も多いでしょう。

被疑者のご家族も、つらい思いを抱えながら、被疑者の早期の社会復帰を願い、刑事事件に精通した弁護士を頼りたいと考えていることでしょう。

そこで以下では、公然わいせつ罪の内容公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の身柄状況公然わいせつ罪で逮捕された後の流れ終局処理の状況科刑の傾向検察官の処分や裁判所の量刑傾向よくある事例などについて説明します。

なお、統計資料は、説明の便宜上、2023年(令和5年)によっています。

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目次

公然わいせつ罪の内容

以下では、公然わいせつ罪の内容について説明します。

犯罪の成立

公然わいせつ罪は、公然とわいせつな行為をした場合に成立します(刑法174条)。

公然」とは、不特定または多数の人が認識できる状態をいいます。現実に不特定または多数の人が認識する必要はなく、その認識の可能性があれば足ります。

たとえば、不特定多数の人が通行する可能性のある場所(路上や公園など)でわいせつな行為に及んだ場合、たとえその場に通行人がいなかったとしても、目撃される可能性があれば、公然とわいせつな行為をしたといえます

わいせつな行為」とは、いたずらに性欲を興奮または刺激させ、かつ、普通人の正常な性的羞恥心を害し、善良な性的道義観念に反する行為をいうものと解されています。

故意

行為者が、公然とわいせつな行為をすることを認識していることが必要です。

もっとも、当該行為およびその客観的状況を認識していれば、それがわいせつに該当するか、公然といえるかまで認識している必要はないとされています。

具体例

公然わいせつ罪にあたる具体例としては、以下のような行為が挙げられます。

公然わいせつ罪の具体例
  • 公園や路上などの公共の場で全裸になる行為や下半身を露出する行為
  • カップル喫茶やハプニングバーなどでの性交または性交類似行為
  • ストリップ劇場の観客の前で陰部を露出する行為
  • 自己の性器を露出した映像をインターネット上に配信して視聴者に閲覧させる行為

刑罰

公然わいせつ罪は、6か月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金、または拘留(1日以上30日未満)もしくは科料(1,000円以上1万円未満)に処せられます(刑法174条)。

公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の身柄状況

2023年検察統計年報によれば、公然わいせつ罪のみの統計資料が存在しないため、公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の両罪に関する令和5年の検察庁既済事件の身柄状況は、下記のとおりです(同年報「41 罪名別・既済となった事件の被疑者の逮捕および逮捕後の措置別人員」参照)。

逮捕関係勾留関係
総数(A)逮捕されない者警察等で逮捕後釈放警察等で逮捕・身柄付送致(B)検察庁で逮捕(C)身柄率(%)認容(D)却下(E)勾留請求率(%)
1,9801,32610754727.63548079.3
逮捕関係総数(A)1,980
逮捕されない者1,326
警察等で逮捕後釈放107
警察等で逮捕・身柄付送致(B)547
検察庁で逮捕(C)
身柄率(%)27.6
勾留関係認容(D)354
却下(E)80
勾留請求率(%)79.3

身柄率は(B+C)÷A、勾留請求率は(D+E)÷(B+C)により、それぞれ算出されます。

公然わいせつ罪とわいせつ物頒布等罪を比較すると、後述するように、起訴率および略式命令請求率はわいせつ物頒布等罪の方が高く、公判請求率および不起訴率は公然わいせつ罪の方が高い傾向にあります。

そのため、両罪の身柄率や勾留請求率に大きな差はないものと考えられます。

公然わいせつ罪で逮捕された後はどうなるのか

上述した「公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の身柄状況」によれば、公然わいせつ罪で逮捕された場合でも、勾留請求前に釈放される者が一定数存在するため、身柄率は3割程度と考えられます。

また、勾留請求率および勾留認容率は8割程度であるため、逮捕に引き続いて勾留される者も比較的多いといえます。

公然わいせつ罪では、現行犯逮捕が多いとされているため、現行犯逮捕に引き続いて勾留された場合には、原則として10日間の勾留期間内に検察官の起訴または不起訴が決まります。

目撃情報やこれを裏付ける防犯カメラ映像などから犯人が特定され、後日逮捕された場合でも、犯行を認めていれば、逮捕後に勾留されたとしても、原則として10日間の勾留期間内に検察官の起訴または不起訴が決まります。

もっとも、わいせつな行為が自己の陰茎を露出して手淫したうえで射精したという内容であり、かつ犯行を否認している場合には、犯人との同一性を確認するため、現場で採取された精液様の遺留物について鑑定が必要となります。

このような場合、10日間の勾留期間内に起訴または不起訴を判断できず、やむを得ない事情があるとして、検察官の請求により、裁判官がさらに10日以内の勾留期間延長を認めることがあります

公然わいせつ罪の終局処理状況

令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)によれば、公然わいせつ罪の検察庁終局処理人員は、下記のとおりです(同白書「資料2-2 検察庁終局処理人員(罪名別)」参照)。

なお、下記にわいせつ物頒布等罪を併記しているのは、公然わいせつ罪の身柄状況や科刑状況を把握するためです。

罪名総数起訴
(起訴率)
公判請求
(起訴で占める率)
略式命令請求
(起訴で占める率)
不起訴
(不起訴率)
起訴猶予
(不起訴で占める率)
その他
(不起訴で占める率)
公然わいせつ1,459822
(56.3%)
151
(18.4%)
671
(81.6%)
637
(43.7%)
554
(87.0%)
83
(13.0%)
わいせつ物頒布等339233
(68.7%)
31
(13.3%)
202
(86.7%)
106
(31.3%)
80
(75.5%)
26
(24.5%)
罪名公然わいせつわいせつ物頒布等
総数1,459339
起訴
(起訴率)
822
(56.3%)
233
(68.7%)
公判請求
(起訴で占める率)
151
(18.4%)
31
(13.3%)
略式命令請求
(起訴で占める率)
671
(81.6%)
202
(86.7%)
不起訴
(不起訴率)
637
(43.7%)
106
(31.3%)
起訴猶予
(不起訴で占める率)
554
(87.0%)
80
(75.5%)
その他
(不起訴で占める率)
83
(13.0%)
26
(24.5%)

起訴率は「起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100、不起訴率は「不起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100により算出した百分比を指します。

公然わいせつ罪とわいせつ物頒布等罪の人数の比率は、総数、起訴、公判請求、略式命令請求(罰金または科料)のいずれにおいても、おおむね8対2となっています。

公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の科刑状況

令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)によれば、公然わいせつ罪のみについての統計資料は存在しません。

そのため、公然わいせつ罪およびわいせつ物頒布等罪の両罪に関する地方裁判所における科刑状況は、下記のとおり示しています。

なお、下記の総数110は、同白書の「2-3-3-1表 通常第一審における終局処理人員(罪名別・裁判内容別)」、「2-3-3-3表 通常第一審における有期刑(懲役・禁錮)科刑状況」および「資料2-3 地方裁判所における死刑・懲役・禁錮の科刑状況(罪名別)」を参照し、わいせつ等罪(刑法第2編第22章の罪)の総数1427から、不同意性交等罪および不同意わいせつ罪の総数1317を差し引いて算出したものです。

総数2年以上3年以下1年以上2年未満6か月以上1年未満6か月未満
110実刑
(実刑率)
執行猶予
(執行猶予率)
実刑
(実刑率)
執行猶予
(執行猶予率)
実刑
(実刑率)
執行猶予
(執行猶予率)
実刑
(実刑率)
執行猶予
(執行猶予率)
1
(33.3%)
2
(66.7%)
4
(28.6%)
10
(71.4%)
19
(38%)
31
(62%)
17
(39.5%)
26
(60.5%)
総数110
2年以上3年以下実刑
(実刑率)
1
(33.3%)
執行猶予
(執行猶予率)
2
(66.7%)
1年以上2年未満実刑
(実刑率)
4
(28.6%)
執行猶予
(執行猶予率)
10
(71.4%)
6か月以上1年未満実刑
(実刑率)
19
(38%)
執行猶予
(執行猶予率)
31
(62%)
6か月未満実刑
(実刑率)
17
(39.5%)
執行猶予
(執行猶予率)
26
(60.5%)

わいせつ物頒布等罪の法定刑は2年以下の拘禁刑もしくは250万円以下の罰金もしくは科料であり、公然わいせつ罪の法定刑は6か月以下の拘禁刑もしくは30万円以下の罰金または拘留・科料です。

このため、1年以上3年以下の科刑(17人)は、わいせつ物頒布等罪によるものと考えられ、その実刑と執行猶予の比率はおおむね3対7になります。

また、1年未満の科刑における実刑と執行猶予の比率はおおむね4対6であることから、わいせつ物頒布等罪の1年未満の科刑における実刑と執行猶予の比率は、おおむね3ないし4対7ないし6と推計できます。

以上を踏まえると、公然わいせつ罪の実刑と執行猶予の比率も、わいせつ物頒布等罪と大きな差はないと考えられます。

そのうえで、両罪の公判請求人員の比率(8対2)を考慮すると、公然わいせつ罪の実刑率は4割程度、執行猶予率は6割程度と推認できます。

検察官の処分や裁判所の量刑傾向

公然わいせつ罪では、上述したとおり、不起訴率は43.7%、起訴率は56.3%、起訴猶予率は87.0%、起訴された事件のうち略式命令請求は81.6%となっています。

このように不起訴率が高く、かつ略式命令請求が多い実情からすると、公然わいせつ罪では、実質的な被害者(性器の露出行為を見せられた者や、公然わいせつ行為が行われた公共の建物・施設等の管理者など)との示談成立(被害弁償を含みます)が、検察官の処分に影響を与えるものと考えられます。

このことは、公判請求された場合の裁判所の量刑についてもいえることです。

検察官による起訴・不起訴の判断や、裁判所が量刑を定める際には、実質的な被害者との示談が成立しているかどうかに加え、次のような事情が考慮されます。

考慮される主な事情
  • わいせつな行為の態様(悪質性、異常性、計画性など)
  • 犯行の動機
  • 常習性の有無 など

一般的には、下半身の露出行為であっても、深夜の公園など人目に触れる可能性が低い状況であれば、初犯の場合、不起訴となる可能性があります。

犯行態様が悪質な場合であっても、初犯であれば、罰金(相場は10~30万円程度)または科料にとどまる可能性があります。

また、同種犯行による罰金前科があり、常習性が認められる場合には、公判請求されることになりますが、公判請求が初めてであれば、執行猶予となる可能性が高いといえます。

常習性や前科の有無によっては、上述したように、統計上、4割程度が実刑になっています。

よくある事例

公然わいせつ罪でよく見られる事例としては、以下のようなものがあります。

ライブチャットのケース

ライブチャットとは、基本的に、パソコンやスマートフォンを使って、インターネット上で相手とやり取りをすることをいいます。ネット上で顔合わせをした者同士が、直接コミュニケーションをとることを目的としています。

しかし近年、ライブチャットをわいせつ目的で利用したとして、逮捕される事例も多くなっています。

ライブチャットの場合、FC2ライブチャットのように、複数人が生放送を視聴できるアダルトチャットでは、「公然性」が認められます。

また、ライブチャットを有料配信する場合も、お金を払えば不特定多数の人が視聴可能なため「公然性」があるといえます。

したがって、ライブチャットで性器の露出や性行為を配信した場合には、公然わいせつ罪に問われます。

問題になるのは、非公開のツーショットチャットの場合です。

確かに、特定かつ少数ということで「公然性」が否定されそうですが、会員になれば不特定多数の人が視聴可能になるということから、わいせつな映像を配信したチャットレディが、公然わいせつ罪で逮捕された事例もあります。

このような理由から、1対1形式のライブチャットであっても注意が必要です。

動画の投稿サイトおよび配信サイトの管理・運営者のケース

従来、インターネットサイトの管理・運営者の刑事責任については、裁判例において、共同正犯、幇助犯あるいは単独犯とするものに分かれていました。

そのような状況のもとで、最高裁は、下記のとおり、明示的な判断を初めて示しました。

事案の概要

被告人両名は、日本のY社の実質的相談役および代表取締役として、アメリカのX社と共同し、インターネット上の動画の投稿サイトおよび配信サイト(以下「各サイト」という)を管理・運営していたところ、X社の代表者Z、わいせつ動画の投稿者B、わいせつ動画の配信者C・D・Eおよび出演者(パフォーマー)(以下「B~Eら」といい、これらを総称して「投稿者ら」という)と共謀のうえ、2回にわたり、無修正わいせつ動画の配信、すなわち公然わいせつの犯行に及んだ。

第1審判決は、被告人両名をそれぞれ懲役2年6か月(執行猶予4年)および罰金250万円に処した(上告棄却により確定)。

決定要旨

被告人両名およびZは、各サイトに無修正わいせつ動画が投稿または配信される蓋然性があることを認識したうえで、仮に投稿・配信された動画が無修正わいせつ動画であったとしても、これを利用して利益を上げる目的で、各サイトにおいて不特定多数の利用者の閲覧または観覧に供するという意図を有していた。

そして、各サイトの仕組みや内容、運営状況等を通じて動画の投稿・配信を勧誘することにより、被告人両名およびZのその意図は、投稿者らに示されていた。

他方、投稿者らは、働きかけを受け、同様の意図に基づき、各サイトのシステムに従って投稿または配信を行ったものであり、投稿者らの意図も、各サイトの管理・運営を行う被告人両名及びZに対し表明されていた。

そうすると、被告人両名およびZと投稿者らとの間には、無修正わいせつ動画を投稿・配信することについて、黙示の意思連絡があったと評価できる。

そして、公然わいせつ罪は、投稿者らが無修正わいせつ動画を各サイトに投稿または配信することによって初めて成立するものであり、投稿者らも、被告人両名およびZによる勧誘並びに各サイトの管理・運営行為がなければ、無修正わいせつ動画を不特定多数の者が認識できる状態に置くことはなかった。

加えて、被告人両名およびZは、公然わいせつの各犯行については、より多くの視聴料を獲得することについて、動画配信者らとその意図を共有していた。

以上の事情によれば、被告人両名について、Zおよび投稿者らとの共謀が認められ、公然わいせつ罪の共同正犯が成立する(最決令和3・2・1刑集52巻2号123頁)。

なお、上記の説明では、最決で認定された「わいせつ電磁的記録記録媒体陳列罪」は除外しています。

共犯が成立する典型的なケース

わいせつな行為を行わない者であっても、公然わいせつ罪の共同正犯幇助犯が成立する場合があります。

たとえば、わいせつなストリップショーを行わせた興業主、ショーの内容を知りながら出演契約を締結して場所を提供した劇場の支配人は、わいせつな行為を行った者との間で公然わいせつ罪の共謀共同正犯が成立します。

また、たとえば、舞台上で演じられるわいせつなショーに照明をあてる照明係は、公然わいせつ罪を犯した者に対する幇助犯が成立します。

まとめ

公然わいせつ罪で逮捕された場合、事案の内容や前科前歴の有無にもよりますが、早期の社会復帰を目指すためには、できるだけ早期に弁護士へ相談することが重要です。

刑事事件に精通した弁護士であれば、今後の見通しについて具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者(起訴された場合は被告人)にとって有利な結果を得られる可能性が高まります。

公然わいせつ罪に関してお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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