あへん法違反で逮捕された場合、身柄拘束がどの程度続くのか、検察官の処分がどうなるのかと不安に感じる方も多いでしょう。
被疑者のご家族も、検察官の不起訴処分を願い、刑事事件に精通した弁護士を頼りたいと望んでいることでしょう。
以下では、あへん法違反で問われる罪、あへん法違反の罰則、あへん法違反の身柄状況、あへん法違反で逮捕された後はどうなるのか、あへん法違反の終局処理状況、あへん法と刑法との関係などについて説明します。
なお、以下のあへん法における条文は、条文番号のみを掲げています。
あへん法違反で問われる罪
あへん法違反は、あへん、けしおよびけしがらを犯罪の客体とするものです。
具体的には、次のような行為が罪に問われます。
- けしの栽培(4条)
- あへんの採取(5条)
- あへん・けしがらの輸入および輸出(6条)
- あへん・けしがらの譲渡および譲受(7条)
- あへん・けしがらの所持(8条)
- あへんまたはけしがらの吸食(9条)
以下で、それぞれについて見ていきましょう。
けしの栽培
けしの栽培とは、けしの種子を蒔いてからけしを収穫するまでの一連の行為のことをいいます。
けしとは、パパヴェル・ソムニフェルム・エル、パパヴェル・セティゲルム・ディーシーおよびその他のけし属の植物であって、厚生労働大臣が指定するものをいいます(3条1号)。
あへんの採取
あへんの採取とは、けしの未熟な実に傷をつけ、そこから分泌される乳液状の物質をかき集めることをいいます。
あへんとは、けしの液汁が凝固したもの、またはこれに加工を施したもの(医薬品として加工を施したものを除きます)をいいます(3条2号)。
あへん・けしがらの輸入、輸出
あへん・けしがらの輸入とは、国外から国内へあへん・けしがらを搬入する行為をいいます。
あへん・けしがらの輸出とは、国内から国外へあへん・けしがらを搬出する行為をいいます。
けしがらとは、けしから麻薬を抽出することができる部分(種子を除きます)をいいます(3条3号)。
あへん・けしがらの譲渡、譲受
あへん・けしがらの譲渡とは、相手方に対し、あへん・けしがらについての法律上または事実上の処分権限を付与し、かつ、その所持を移転することをいいます。
あへん・けしがらの譲受とは、相手方から、あへん・けしがらについての法律上または事実上の処分権限を付与され、かつ、その所持の移転を受けることをいいます。
あへん・けしがらの所持
あへん・けしがらの所持とは、人があへん・けしがらを保管する実力支配関係を有していることをいいます。
あへんまたはけしがらの吸食
あへんまたはけしがらの吸食とは、あへんまたはけしがらを人体内に摂取する行為をいいます。具体的には、次のような方法が該当します。
- あへんまたはけしがらを、たばこのように吸煙すること
- あへんの丸薬を飲み下すこと
- けしがらを浸したものを食べること
要するに、あへんまたはけしがらを使用することをいいます。
なお、けしのさく果を傷つけて得られる液汁を乾燥させたものを生あへんといい、これを濃縮してエキス状としたものを発酵させて得られるのがあへん煙(あへん煙膏)であり、これが主に吸食に用いられます。
あへん法違反の罰則
あへん法違反の罰則は、下記の表のとおりです。
| 規制対象 | 主な違反態様 | 罰条 | 罰則 |
| けし、あへん、けしがら | (けし)栽培 | 51条1項1号、営利目的ありの場合さらに同条2項 | (営利目的なし)1年以上10年以下の拘禁刑 (営利目的あり)1年以上の有期拘禁刑、または情状により1年以上の有期拘禁刑および500万円以下の罰金 |
| (あへん)採取 | 51条1項2号、営利目的ありの場合さらに同条2項 | ||
| (あへん、けしがら)輸入、輸出 | 51条1項3号、営利目的ありの場合さらに同条2項 | ||
| (あへん、けしがら)譲渡、譲受、所持 | 52条1項、営利目的ありの場合さらに同条2項 | (営利目的なし)7年以下の拘禁刑 (営利目的あり)1年以上10年以下の拘禁刑、または情状により1年以上10年以下の拘禁刑および300万円以下の罰金 | |
| (あへん、けしがら)吸食 | 52条の2第1項 | 7年以下の拘禁刑 |
あへん法違反の身柄状況
2022年から2024年までの各検察統計年報によれば、令和4年から令和6年までの検察庁既済事件の身柄状況(あへん法違反)は下記表のとおりです(同各年報「41罪名別・既済となった事件の被疑者の逮捕および逮捕後の措置別人員」参照)。
| 令和・年度 | 逮捕関係 | 勾留関係 | |||||||
| 総数(A) | 逮捕されない者 | 警察等で逮捕後釈放 | 警察等で逮捕・身柄付送致(B) | 検察庁で逮捕(C) | 身柄率(%) | 認容 (D) | 却下 (E) | 勾留請求率 (%) | |
| 4年 | 2 | 2 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| 5年 | 8 | 8 | ― | ― | ― | ― | ― | ― | ― |
| 6年 | 11 | 8 | ― | 3 | ― | 27.3 | 3 | ― | 100 |
| 令和・年度 | 4年 | 5年 | 6年 | |
| 逮捕関係 | 総数(A) | 2 | 8 | 11 |
| 逮捕されない者 | 2 | 8 | 8 | |
| 警察等で逮捕後釈放 | ― | ― | ― | |
| 警察等で逮捕・身柄付送致(B) | ― | ― | 3 | |
| 検察庁で逮捕(C) | ― | ― | ― | |
| 身柄率(%) | ― | ― | 27.3 | |
| 勾留関係 | 認容(D) | ― | ― | 3 |
| 却下(E) | ― | ― | ― | |
| 勾留請求率(%) | ― | ― | 100 | |
身柄率は(B+C)÷Aで、勾留請求率は(D+E)÷(B+C)でそれぞれ算出します。
上記の数字から、あへん法違反を犯した者のうち、そのほとんどは逮捕されていないこと、しかし、逮捕されて検察庁に送致された場合には、その全員が勾留されていることが分かります。
あへん法違反で逮捕された後はどうなるのか
上述した「あへん法違反の身柄状況」によれば、あへん法違反で逮捕された場合、勾留請求率および勾留認容率はいずれも100%となっています。
したがって、逮捕されたあへん法違反の被疑者は、引き続き勾留されることになります。
勾留期間は、原則として10日間です。
ただし、次のようなやむを得ない事情があるときは、検察官の請求により、裁判官がさらに10日以内の勾留期間の延長を認めることがあります。
- 捜査を継続しなければ、検察官が事件を処分できない場合
- 10日間の勾留期間内に、捜査を尽くせなかった場合
- 勾留を延長することにより、捜査上の障害が取り除かれると見込まれる場合
あへん法違反の終局処理状況
2022年から2024年までの各検察統計年報によれば、令和4年から令和6年までのあへん法違反の検察庁終局処理人員は、下記の表のとおりです(同各年報「8罪名別・被疑事件の既済および未済の人員」参照)。
| 令和・年度 | 総数 | 起訴 (起訴率) | 公判請求 (起訴で占める率) | 略式請求 (起訴で占める率) | 不起訴 (不起訴率) | 起訴猶予 (不起訴で占める率) | その他 (不起訴で占める率) |
| 4年 | 2 | ― | ― | ― | 2 (100%) | 2 (100%) | ― |
| 5年 | 8 | ― | ― | ― | 8 (100%) | 5 (62.5%) | 3 (37.5%) |
| 嫌疑不十分:1 | |||||||
| 時効完成:1 | |||||||
| その他:1 | |||||||
| 6年 | 11 | ― | ― | ― | 11 (100%) | 4 (36.4%) | 嫌疑不十分: 7 (63.6%) |
| 令和・年度 | 4年 | 5年 | 6年 |
| 総数 | 2 | 8 | 11 |
| 起訴 (起訴率) | ― | ― | ― |
| 公判請求 (起訴で占める率) | ― | ― | ― |
| 略式請求 (起訴で占める率) | ― | ― | ― |
| 不起訴 (不起訴率) | 2 (100%) | 8 (100%) | 11 (100%) |
| 起訴猶予 (不起訴で占める率) | 2 (100%) | 5 (62.5%) | 4 (36.4%) |
| その他 (不起訴で占める率) | ― | 3 (37.5%) 嫌疑不十分:1 時効完成:1 その他:1 | 嫌疑不十分: 7 (63.6%) |
上記の数字から、公判請求は1人もなく、全員が不起訴処分となっていることが分かります。
そして、上記の3年に限ると、不起訴21人のうち、起訴猶予が11人、嫌疑不十分が8人という結果になっています。
また、令和4年から令和6年までの各司法統計年報(2刑事編)によれば、上述した公判請求が0人であることに対応して、令和4年、令和5年および令和6年の通常第一審事件におけるあへん法違反の有罪人員はいずれも0人となっています(同各年報「第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮)|裁判所ホームページ」参照)。
あへん法と刑法との関係
上述したあへん法違反に該当する行為が、刑法14章の「あへん煙に関する罪」にも該当する場合には、刑法の罪と比較して、重い方の法定刑に従って処断するものとされています(あへん法56条)。
そのため、次の刑法上の罪については、あへん法の罪の方が法定刑が重く、実務上は刑法犯としての処罰を検討する必要はありません。
- 刑法136条のあへん煙輸入罪・販売罪・販売目的所持罪
- 刑法139条1項のあへん煙吸食罪
- 刑法140条のあへん煙所持罪
現在では、刑法のあへん煙に関する罪のうち、実務的に意義があるものは、上記の罪以外の罪に限られています。具体的には、次の罪が該当します。
- 刑法136条のあへん煙製造罪
- 刑法137条のあへん煙吸食器具輸入罪・製造罪・販売罪・販売目的所持罪
もっとも、刑法138条の税関職員によるあへん煙輸入等の罪についても、営利目的による場合には、あへん法の罪の方が法定刑が重くなる点に注意が必要です。
まとめ
あへん法違反で逮捕された場合、不安や心配が募ることと思われます。被疑者の早期釈放や不起訴を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。
弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判官に対して適切に働きかけることができます。経験豊富な弁護士であれば、今後の見通しについても具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者にとって有利な結果を引き出す可能性が高まります。
あへん法違反でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

