刑事事件における示談交渉のメリットと進め方

刑事事件における示談交渉のメリットと進め方

刑事事件を犯した場合、被害者がいる犯罪であれば、被疑者やそのご家族は、被害者との示談交渉を通じて、示談の成立を強く望むことでしょう。しかし、多くの被疑者やそのご家族は、被害者との示談交渉の糸口さえつかめないかもしれません。

そこで本記事では、刑事事件に精通した弁護士が、示談の対象となる事件や示談成立のメリット、進め方、弁護士に依頼する意義などを概観し、示談交渉の重要性について説明します。

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目次

刑事事件における示談

刑事事件における示談とは、加害者(被疑者または被告人)と被害者との間で、裁判手続によらずに、加害者の犯罪行為によって生じた被害や慰謝料等を含む損害賠償について、双方の話し合いにより解決することをいいます。

示談が成立した場合、示談書の作成は絶対的な要件ではないものの、将来トラブルが生じないように、その証拠となる示談書を作成することが一般的です。

示談書には、加害者の謝罪の意思、被害者の「加害者を許す」、「処罰を望まない」、「寛大な処分を望む」あるいは「重い処罰を求めない」などの意思を表明する文言が記載されることが多く、このような記載がある場合には、被害者の処罰感情が緩和されたり、なくなったものとして、加害者に有利な事情として考慮されることになります。

示談の対象となる刑事事件

示談の対象となる刑事事件は、加害者の犯罪行為により被害者が存在し、犯罪行為の性質上、被害者が加害者を許すことができるものになります。

示談の対象となる刑事事件
  • 被害者の生命を断絶するまたは断絶しかねない犯罪(殺人・同未遂罪)
  • 被害者の身体を攻撃または傷つける犯罪(暴行・傷害罪)
  • 被害者の財産を奪取する犯罪(窃盗・強盗罪)
  • 被害者の瑕疵ある意思に基づいて財産を取得する犯罪(詐欺・恐喝罪)
  • 被害者の財産を領得する犯罪(横領・業務上横領罪)
  • 被害者の性的自由を侵害する犯罪(強制わいせつ・強制性交・痴漢・盗撮・撮影罪)
  • 被害者の財産を損壊する犯罪(器物損壊罪)
  • 被害者の生命・身体を侵害する犯罪(過失運転致死傷罪)

なお、国家や社会の利益を侵害するような犯罪、薬物犯罪や直接の被害者がいない犯罪は、示談の対象とならない刑事事件になります。

刑事事件における示談成立のメリット                             

刑事事件における示談成立のメリットについては、以下のような5つの場合が考えられます。

告訴を思いとどまったり、いったんした告訴を取り消す可能性がある

器物損壊罪のような親告罪では、被害者との間で示談が成立すれば、被害者や告訴権者は告訴を思いとどまるか、いったんした告訴を取り消す可能性があります。

検察官は、親告罪の場合、告訴がなければ起訴することができません。

被害者や告訴権者の告訴がないことになれば、検察官は、告訴の欠如、告訴の取り消しを理由に、被疑者を不起訴処分とします。

被害届を取り下げる可能性がある

被害者から被害届が提出されている場合に、被害者との間で示談が成立すれば、被害者は、被害届を取り下げる可能性があります。

被害届の取り下げには、法律上の効力はありません。しかし、あくまでも犯罪の内容によるとはいえ、示談が円満に成立し、被害者が被害届を取り下げた場合には、当事者間ですでに事件が解決したものとして、検察官は被疑者に対し不起訴の処分をする可能性もあります

また、検察官は、被害者が被害届を取り下げた場合、罰金が選択刑にあれば、公判請求ではなく、略式命令請求にとどめたり、あるいは公判請求をするにしても、軽い求刑をすることも考えられます。

逮捕・勾留の回避や早期釈放の可能性がある

早期に被害者との間で示談が成立すれば、逮捕されないで済む可能性(逮捕の回避)があり得ますし、仮に逮捕されたとしても、検察官においては、事件の早期処理が可能になり、被疑者の勾留請求をせずに(勾留の回避)、被疑者を早期に釈放する可能性があります。

不起訴処分の可能性がある

被害者との間で示談が成立していれば、検察官は、起訴・不起訴の処分を検討する際に、特に被害回復や被害者の被害感情を重視する事件の場合には、刑事処分をする必要がないものとして、不起訴処分(起訴猶予)にする可能性があります。

検察官の起訴や裁判所の量刑に影響する可能性がある

被害者との間で示談が成立した場合、検察官の起訴や裁判所の量刑に影響する可能性があります。

検察官は、起訴するにあたり、罰金が選択刑に含まれていれば、公判請求ではなく、略式命令請求にとどめたり、あるいは公判請求をするにしても、軽い求刑をすることが考えられます。

また、裁判所は、量刑をするにあたり、被害回復や被害者の処罰感情から、重い刑事処分を科す必要はないものとして、罰金あるいは執行猶予付きの判決、仮に実刑にする場合でも刑期を軽減する判決をする可能性があります。

刑事事件において示談を進める方法

刑事事件において示談を進める方法について見てみましょう。

刑事事件によっては、被疑者やその家族が被害者の連絡先等を知っている場合もありますが、そのような場合であっても、捜査中に、被害者と直接接触を持つことは証拠隠滅行為と受け取られかねないだけに、被疑者やその家族が被害者と示談交渉を行うことは許されません

被害者は、犯罪の種類を問わず、犯罪被害によって大きな精神的打撃を受けているうえ、示談交渉に応じることになれば、その精神的な負担は計り知れません。

そして、捜査機関(警察官や検察官)は、被疑者やその家族が被害者の連絡先等を知らない場合、被害者のプライバシー保護の観点から、被害者の氏名、住所や連絡先を教えることは決してしませんそのため、被害者との折衝および示談交渉は、法律のプロである弁護士に委ねることが望ましいです。

しかし、弁護士であっても、捜査機関の意向を無視して、被害者と直接接触することは許されません。

捜査機関は、捜査の進捗状況や被害者の精神状態を踏まえ、被疑者やその家族に教えないことを条件に、弁護士を信頼して、被害者(被害者が未成年者の場合は親権者)の承諾が得られた場合に限り、その氏名、住所や連絡先を開示します。

弁護士は、被害者の心情に配慮しながら示談交渉に臨み、示談書にどのような条項を盛り込むか、示談金をいくらにするかなどについて被害者と話し合い、示談内容で合意ができた場合には、合意した内容を記載した示談書を作成し、示談金を支払います。

被害者との示談が可能な場合には、弁護士は、被疑者の身柄拘束の回避や早期釈放を目指すためにも、できるだけ早いタイミングで示談交渉を行うのが望ましいといえます。

刑事事件における示談金相場の傾向

刑事事件における示談金相場の傾向については、以下の3つの場合に分けて説明します。

被害者の生命・身体に対する犯罪の場合

被害者の生命・身体に対する犯罪の場合は、一般的に、交通事故の場合の損害算定基準が参考として用いられています。

ただし、実際の事件の示談では、被害感情の強さ被疑者(起訴後は被告人)側の支払能力も考慮されています。

被害者の財産に対する犯罪の場合

被害者の財産に対する犯罪の場合は、基本的に、侵害された財産の経済的価値が基準となりますが、被害に遭った際の恐怖等の被害感情は精神的損害(慰謝料)として勘案され、示談金に含めることになります。

被害者の性的自由に対する犯罪の場合

被害者の性的自由に対する犯罪の場合は、強制わいせつ・強制性交・痴漢・盗撮・撮影罪というように、同じ罪種に属する犯罪であっても、事案ごとに、犯行に至る経緯、動機、目的、手段や方法、犯罪の結果が異なり、被害の深刻さや被害感情は必ずしも一律ではありません。

したがって、罪種ごとの示談金相場の傾向を見いだすことは難しいことになります。

刑事事件における示談交渉は弁護士に依頼すること

被害者との示談交渉は、特に捜査中の場合、被疑者やその家族が、被害者と示談交渉を行うことにはかなりの困難を伴います。

そのため、法律のプロである弁護士に、被害者との示談交渉を依頼するのが最善の方法になります。

被害者がいる刑事事件の場合、被疑者の逮捕・勾留の回避や身柄拘束の早期釈放、検察官が不起訴処分で終わらすか、起訴を略式命令請求にするか公判請求にするか、裁判所が判決で罰金あるいは執行猶予付きとするか、実刑の刑期を軽減するかに最も影響を与えるのが、被害者との示談です。

弁護士は、弁護活動を通じて、各種事件ごとの妥当な示談金額に精通していますので、被疑者のために、適正な示談金による解決を目指して、被害者と示談交渉を行ってくれます。

まとめ

刑事事件を犯した場合、被害者がいる犯罪については、被害者に許してもらうため、被害者と示談交渉を行い、示談の成立を目指すことが非常に重要です。

しかし、被疑者やその家族が、被害者と直接示談交渉を行うことは望ましいことではありません。弁護士であれば、被疑者のために被害者と示談交渉を行い、示談成立に尽力してくれることが期待できます。

刑事事件において、被害者との示談成立を望んでいる被疑者やそのご家族は、ぜひ一度専門の弁護士にご相談ください。

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