薬物犯罪で逮捕されたら

薬物犯罪で逮捕されたら

薬物犯罪で逮捕された場合、犯罪の性質上、必ず有罪になるのではないかと不安に感じる方も多いでしょう。

薬物犯罪とは、覚醒剤、大麻草、ヘロイン、大麻、コカイン、MDMA、ケタミン、LSD、向精神薬、あへん、けしやけしがらなどの薬物を取り締まる法律に違反した場合に成立する犯罪です。

これらの薬物は、人の心身への影響が大きく、その薬理作用から幻覚・妄想などの精神障害に陥ったり、依存性や中毒症状から社会生活に支障をきたしたりします。

以下では、薬物犯罪とは、薬物犯罪を規制する主な法律、その法律による主な規制対象・主な違反態様・罰則、よくある事例などについて説明します。

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目次

薬物犯罪を規制する主な法律

以下で示す法律は、いわゆる薬物四法といわれるものです。

なお、罰則に記載されている懲役は「拘禁刑」、有期懲役は「有期拘禁刑」と表記されるようになります。この変更は、令和7年6月1日(改正刑法施行日)から適用されます。

また、罰則における「営利の目的」は、「営利を目的に違反行為を犯したこと」を意味します。

覚醒剤取締法

覚醒剤取締法は、覚醒剤の濫用による保健衛生上の危害を防止するため、覚醒剤および覚醒剤原料の輸入、輸出、製造、所持、使用、譲渡、譲受に関して必要な取り締まりを行うことを目的とする法律です。                                    

主な規制対象主な違反態様罰則
覚醒剤
輸入、輸出、製造1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
(営利の目的)無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)または情状により無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)および1,000万円以下の罰金
所持、使用、譲渡、譲受10年以下の懲役(拘禁刑) 
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
覚醒剤原料輸入、輸出、製造10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
所持、使用、譲渡、譲受7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
主な規制対象覚醒剤
主な違反態様輸入、輸出、製造
1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
(営利の目的)無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)または情状により無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)および1,000万円以下の罰金
主な違反態様所持、使用、譲渡、譲受
10年以下の懲役(拘禁刑) 
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
主な規制対象覚醒剤原料
主な違反態様輸入、輸出、製造
10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
主な違反態様所持、使用、譲渡、譲受
7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
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大麻草の栽培の規制に関する法律

大麻草の栽培の規制に関する法律は、大麻草の栽培の適正を図るために必要な規制を行うことにより、大麻の濫用による保健衛生上の危害を防止することなどを目的とする法律です。

令和5年12月の改正(令和6年12月12日施行)により、大麻に含まれている精神作用物質の一つであり、依存性のあるテトラヒドロカンナビノール(THC)が、麻薬および向精神薬取締法における「麻薬」に分類され、「大麻取締法」は「大麻草の栽培の規制に関する法律」という名称に変更されました。

そして、この法改正により、医療用大麻の患者への使用が可能(医療用大麻の解禁)になり、大麻使用行為が麻薬および向精神薬取締法における「大麻施用罪」として処罰されることになりました。

主な規制対象主な違反態様罰則
大麻草栽培
1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 
主な規制対象大麻草
主な違反態様栽培
1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 
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麻薬および向精神薬取締法

麻薬および向精神薬取締法は、麻薬および向精神薬の輸入、輸出、製造、所持、施用、譲渡、譲受などについて必要な取り締まりを行うなどして、麻薬および向精神薬の濫用による保健衛生上の危害を防止することなどを目的とする法律です。

主な規制対象主な違反態様罰則
ヘロイン(麻薬)

輸入、輸出、製造1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
(営利の目的)無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)または情状により無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)および1,000万円以下の罰金
所持、施用、譲渡、譲受10年以下の懲役(拘禁刑) 
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
大麻、コカイン、MDMA
ケタミン、LSD(ヘロイン以外の麻薬)



輸入、輸出、製造1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
所持、施用、譲渡、譲受7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
向精神薬輸入、輸出、製造5年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)7年以下の懲役(拘禁刑)または情状により7年以下の懲役(拘禁刑)および200万円以下の罰金
譲渡、譲渡目的所持3年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)5年以下の懲役(拘禁刑)または情状により5年以下の懲役(拘禁刑)および100万円以下の罰金
主な規制対象ヘロイン(麻薬)
主な違反態様輸入、輸出、製造
1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
(営利の目的)無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)または情状により無期もしくは3年以上の懲役(拘禁刑)および1,000万円以下の罰金
主な違反態様所持、施用、譲渡、譲受
10年以下の懲役(拘禁刑) 
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
主な規制対象大麻、コカイン、MDMA、ケタミン、LSD(ヘロイン以外の麻薬)
主な違反態様輸入、輸出、製造
1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
主な違反態様所持、施用、譲渡、譲受
7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
主な規制対象向精神薬
主な違反態様輸入、輸出、製造
5年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)7年以下の懲役(拘禁刑)または情状により7年以下の懲役(拘禁刑)および200万円以下の罰金
主な違反態様譲渡、譲渡目的所持
3年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)5年以下の懲役(拘禁刑)または情状により5年以下の懲役(拘禁刑)および100万円以下の罰金

あへん法

あへん法は、あへんの供給の適正を図るため、国があへんの輸入、輸出などを行い、けしの栽培、あへんおよびけしがらの所持、譲渡、譲受などについて必要な取り締まりを行うことを目的とする法律です。

主な規制対象主な違反態様罰則
あへん、けし、けしがら(けし)栽培(あへん、けしがら)輸入、輸出(あへん)採取1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 
(あへん、けしがら)所持、譲渡、譲受7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金 
(あへん、けしがら)吸食7年以下の懲役(拘禁刑)
主な規制対象あへん、けし、けしがら
主な違反態様(けし)栽培(あへん、けしがら)輸入、輸出(あへん)採取
1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 
主な違反態様(あへん、けしがら)所持、譲渡、譲受
7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利の目的)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金 
主な違反態様(あへん、けしがら)吸食
7年以下の懲役(拘禁刑)

よくある事例

薬物犯罪でよくある事例は、以下のとおりです。

覚醒剤を少量所持していたケース

覚醒剤に限らず、薬物事犯では依存性が強く、隠匿・投棄・焼却などが容易で証拠隠滅のおそれがあり、他の刑法犯に比べ重罪のため、逃亡のおそれも高いことから、覚醒剤を含む薬物事犯では、一般的に逮捕・勾留される確率は高くなっています

逮捕後の尿検査で陽性反応が出ず、家宅捜索でも覚醒剤使用や所持を疑わせる物品が発見されなかったうえ、薬物事犯での前科前歴もなければ、覚醒剤に対する依存性や親和性はそれほど高くないといえます。

そうすれば、覚醒剤の1回の使用量と比較しても、少量の所持にとどまる場合には、所持としての悪質性は低いといえますので、起訴猶予の不起訴処分の可能性もあり、仮に起訴されたとしても執行猶予付きの判決が期待できます。

海外旅行先で薬物を購入し、持ち帰ったケース

空港などの税関で薬物と思われる物品が発見され、簡易検査の結果、薬物の陽性反応が出れば、薬物所持の現行犯として逮捕されます。

この場合には、薬物の輸入罪が成立しますが、薬物輸入は薬物所持などと比較して重い罰則が定められており重罪です。

海外では、たとえば大麻成分入りのクッキーなどの食品のように、合法に販売されている国もありますが、そういったものを土産として持ち込むことは、薬物の輸入罪にあたります。「知らなかった」では済まされません。

知人から受け取った荷物に薬物が入っていたケース

受け取った荷物の中に薬物が入っていると認識できなければ、その人を罪には問えません。

その認識の程度は、確定的である必要はなく、荷物の中に身体に有害で違法な薬物が入っているかも知れないという程度の認識で足りると解されています。

しかし、知人から受け取った荷物を携行するという自分の行為が、犯罪にあたると判断することのできる程度の事実認識さえないときには、荷物の中に薬物があるという故意の成立は否定されます。

ただし、荷物が不自然な形状で、何かを隠しているように見える場合や、届け先への連絡時に合言葉を使うよう指示を受けた場合、受け渡し場所での服装や荷物の隠し方について指示を受けた場合、または知人が荷物を持ち運ぶことが可能なのに、高額な報酬で携行を依頼された場合など(これらは情況証拠にあたります)は、荷物の中に違法な薬物が入っている可能性があるとの認識があったと推測されます

大麻草を自宅で栽培していたケース

大麻草を栽培すれば、大麻草の栽培の規制に関する法律に違反し、犯罪が成立します。

大麻草の栽培とは、大麻草の種子を蒔いてから大麻を収穫するまでの一連の行為のことをいいます。

したがって、通報を受けて、警察官が大麻草の栽培場所に赴き、被疑者が任意捜査に応じたことから、被疑者を大麻草栽培の現行犯として逮捕するとともに、栽培場所を家宅捜索することも可能になります。

MDMAが発覚するケース

MDMAが発覚するケースとしては、例えば、MDMAの取引を仲介するために見本として微量のMDMAを持ち運んでいた際、挙動不審などの理由で職務質問を受け、MDMA所持の現行犯として逮捕される場合があります。

また、職業運転手が運転中に疲れてMDMAを使用し、自動車のダッシュボードに隠していたMDMAが交通事故の際に発見され、現行犯逮捕されることもあります。

LSD所持の疑いで家宅捜索されるケース

警察官から職務質問を受け、所持品検査の結果、ミシン目入りの厚紙の切れ端が見つかったため、LSDの施用が疑われ、尿を任意提出したところ、尿の簡易鑑定で陽性反応が出たことから、LSD所持の疑いで家宅捜索されるケースがあります。

その場合、捜索差押許可状に基づいて差し押さえるべき物は、一般的に「液体を染み込ませたミシン目入りの数センチ角の厚紙、錠剤、カプセル、ゼラチン、LSD施用器具、LSD取引に関する文書・手帳・メモ類、携帯電話など、本件に関連するすべての物品」となります。

まとめ

薬物犯罪で逮捕された場合、不安や疑問が募ることと思います。被疑者の早期釈放や不起訴を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判所に対して適切に働きかけます。経験豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しについても具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者に有利な結果を引き出す可能性が高まります。薬物犯罪でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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