性犯罪で逮捕されたら

性犯罪で逮捕されたら

性犯罪で逮捕された場合、被疑者およびその家族が最初に理解すべきことは、逮捕後の流れがどうなるかという点です。逮捕されると、被疑者は直ちに警察の取り調べを受け、その後、検察に送致される可能性があります。この状況で、家族がとるべき最初の行動は、できるだけ早期に弁護士に相談することです。

弁護士は、被疑者の早期釈放を目指して、迅速に弁護活動を開始し、被害者との示談交渉や被害者の処罰感情の緩和に努めます。逮捕された際、被疑者に面会できるのは弁護士のみであり、早い段階で専門家に依頼することが重要です。

本記事では、性犯罪に関連する犯罪の種類罪名刑罰、そして逮捕後の流れについて、詳しく説明します。また、被害者との示談や処罰感情の緩和が、どのように弁護活動に影響を与えるのかにも触れていきます。

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目次

性犯罪とは

性犯罪とは、被害者の性的自由を侵害する犯罪、健全な性秩序ないし性風俗を侵害する犯罪(たとえば、公然わいせつ罪)の総称です。

本稿では、令和5年6月16日に成立し、同年7月13日に施行された改正刑法に焦点を当てて説明します。

刑法における性犯罪の内容

刑法における性犯罪のうち、以下では、被害者の性的自由を侵害する犯罪について説明します。

その犯罪とは、不同意わいせつ罪および不同意性交等罪監護者わいせつ罪および監護者性交等罪不同意わいせつ致傷罪および不同意性交等致死傷罪面会要求罪・面会罪および映像送信要求罪になります。

不同意わいせつ罪および不同意性交等罪

不同意わいせつ罪は、下記の番号Ⅰの要件または番号Ⅱの要件がある場合、あるいは番号Ⅲの要件がある場合に、わいせつな行為をしたときに成立します。 

不同意性交等罪は、下記の番号Ⅰの要件または番号Ⅱの要件がある場合、あるいは番号Ⅲの要件がある場合に、性交等をしたときに成立します。

性交等とは、性交肛門性交口腔性交のほか、膣や肛門に、陰茎以外の身体の一部または物を挿入する行為であってわいせつなものをいいます。 

これらの罪は、行為者と被害者に婚姻関係があるか否かは問題とならず、配偶者やパートナーの間でも成立します

番号要件
①暴行・脅迫
②心身の障害
③アルコール・薬物の摂取・影響
④睡眠その他の意識不明瞭
⑤不意打ち
⑥恐怖・驚愕
⑦虐待
⑧経済的・社会的関係に基づく不利益の憂慮
⑨その他これらに類する行為・事由のいずれかにより、同意しない意思を形成、表明または全うすることが困難な状態にさせること、あるいは被害者がそのような状態にあることに乗じること
わいせつな行為ではないと誤信させたり、人違いをさせること、または被害者がそのような誤信・人違いをしていることに乗じること
被害者が13歳未満の者である場合、または、被害者が13歳以上16歳未満の者で、行為者が5歳以上年長である場合
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監護者わいせつ罪および監護者性交等罪

監護者わいせつ罪は、18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力を利用して、当該18歳未満の者に対し、わいせつな行為をしたときに成立します。

監護者性交等罪は、18歳未満の者を現に監護する者であることによる影響力を利用して、当該18歳未満の者を相手方として性交等をしたときに成立します。

不同意わいせつ等致死傷罪および不同意性交等致死傷罪

不同意わいせつ等致死傷罪は、不同意わいせつ罪・監護者わいせつ罪またはこれらの罪の未遂罪を犯して、人を死傷させたときに成立します。

不同意性交等致死傷罪は、不同意性交等罪・監護者性交等罪またはこれらの未遂罪を犯して、人を死傷させたときに成立します。

面会要求罪・面会罪および映像送信要求罪

面会要求罪は、下記の番号Ⅰの要件のいずれかの行為をしたときに成立します。

面会罪は、下記の番号Ⅱの要件のとおり、面会要求の結果、面会をしたときに成立します。

映像送信要求罪は、下記の番号Ⅲの要件のいずれかの行為を要求したときに成立します。

ただし、これらの罪が成立するためには、被害者が13歳未満の者である場合、または、被害者が13歳以上16歳未満の者で、行為者が5歳以上年長である場合である必要があります。

番号要件
わいせつの目的で16歳未満の者に対し、以下のいずれかの行為をしたこと
①威迫・偽計・誘惑して面会を要求すること
②拒否されたのに反復して面会を要求すること
③金銭その他の利益を供与、またはその申し込みや約束により面会を要求すること 
上記の①ないし③の行為により、わいせつの目的で16歳未満の者と面会をしたこと 
16歳未満の者に対し、以下のいずれかの行為を要求したこと
①性交等をする姿態をとった映像を送信すること
②膣や肛門に陰茎以外の身体の一部を挿入した姿態、性的な部位に触れた姿態、性的な部位を露出した姿態などをとった映像を送信すること

性犯罪の罪名と刑罰の関係

上述した性犯罪について、該当条文、罪名、刑罰について整理してみましょう。

なお、刑罰に記載する懲役が括弧書きの拘禁刑に、有期懲役が括弧書きの有期拘禁刑になるのは、令和7年6月1日(改正刑法の施行日)からです(無期懲役と無期拘禁刑との関係も同じ)。

該当条文罪名刑罰
176条不同意わいせつ罪6月以上10年以下の懲役(拘禁刑)
177条不同意性交等罪5年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
179条1項監護者わいせつ罪6月以上10年以下の懲役(拘禁刑)
179条2項監護者性交等罪5年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
181条1項不同意わいせつ等致死傷罪無期または3年以上の懲役(拘禁刑)
181条2項不同意性交等致死傷罪無期または6年以上の懲役(拘禁刑)
182条1項面会要求罪1年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 
182条2項面会罪2年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金
182条3項映像送信要求罪1年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金
該当条文176条
罪名不同意わいせつ罪
刑罰6月以上10年以下の懲役(拘禁刑)
該当条文177条
罪名不同意性交等罪
刑罰5年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
該当条文179条1項
罪名監護者わいせつ罪
刑罰6月以上10年以下の懲役(拘禁刑)
該当条文179条2項
罪名監護者性交等罪
刑罰5年以上の有期懲役(有期拘禁刑)
該当条文181条1項
罪名不同意わいせつ等致死傷罪
刑罰無期または3年以上の懲役(拘禁刑)
該当条文182条1項
罪名面会要求罪
刑罰1年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金 
該当条文181条2項
罪名不同意性交等致死傷罪
刑罰無期または6年以上の懲役(拘禁刑)
該当条文182条1項
罪名面会要求罪
刑罰2年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金
該当条文182条3項
罪名映像送信要求罪
刑罰1年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金

性犯罪で逮捕された後の流れと弁護活動

被疑者は、逮捕後最大72時間自由を拘束され、その後は通常、逮捕から48時間以内に検察官に送致され、検察官は被疑者を受け取ってから24時間以内に裁判官に対し、長期の身柄拘束を求める勾留請求を行います。

裁判官は、検察官からの勾留請求を受け、被疑者に対する勾留質問を行って、被疑者が罪を犯した疑いがあり、住居不定、証拠隠滅のおそれまたは逃亡のおそれのいずれかにあたり、捜査を進めるうえで身柄の拘束が必要であれば、被疑者の勾留を認めます。

なお、勾留期間は原則10日間ですが、やむを得ない事由がある場合には、さらに10日以内の延長が認められることもあります。

弁護士は、被疑者逮捕直後に弁護活動に従事できれば、早期釈放や勾留の阻止に向けて、捜査機関(警察官・検察官)や裁判官に働きかけたりすることも可能になります。

不起訴処分の可能性

性犯罪の場合であっても、犯罪を裏付ける証拠がないときには「嫌疑なし」、被害者の承諾の可能性があるか犯行を裏付ける証拠が不十分なときは「嫌疑不十分」、特段の前科がなく、犯行を認めていて、犯行態様が悪質でなく、示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和されているときは「起訴猶予」として、不起訴処分の可能性もあるといえます。

もちろん性犯罪は非親告罪ですから、示談が成立したからといって、不起訴処分になるわけではありません。

しかし、現実問題として、性犯罪でも、もちろん犯罪の内容によるとはいえ、不起訴処分で終わっている事例もあるのです。

被害者との示談と被害者の処罰感情の緩和の重要性

被害者との示談が成立し、被害者の処罰感情が緩和されれば、不起訴処分で終わる事例があることは上述したとおりですが、このことは、公判段階でもいえることです。

すなわち、執行猶予となる可能性も出てきますし、また、実刑であっても、刑期が軽減されることにつながります。

それは、被害弁償金、賠償金あるいは慰謝料など、その金銭の性質や名目は問わず、被害者が被疑者(起訴後の被告人)と示談し、示談金を受け取ることは、被害者の処罰感情が緩和されたとみなされるためです。そのためには、どうしても弁護士の手を借りる必要があります。

被害者との示談交渉は、多くの場合、かなりの困難を伴います。逮捕後、初期段階では被疑者やその家族は被害者の連絡先を知ることができず、捜査機関も被害者の氏名や連絡先を開示しません。

しかし、弁護士であれば、捜査機関も、捜査の進捗状況によっては、被害者の承諾が得られた場合に限り、被害者の連絡先を開示してくれる可能性があります。その開示が得られれば、弁護士は被害者およびその家族の心情にも最大限配慮し、示談交渉を行います。

示談交渉では、被疑者・被告人の真摯な反省と誠意ある謝罪の気持ちを、被害者(被害者が未成年の場合は保護者)に受け入れてもらう必要があります。これらを受け入れてもらえれば、被害者との示談の成立、そして被害者の処罰感情の緩和の可能性が高くなります。

性犯罪では厳罰化傾向が強いものの、弁護士に依頼し、示談が早期に成立すれば、被疑者に有利な処分や被告人に有利な裁判結果を得られる可能性が高くなります。このように、被害者との示談被害者の処罰感情の緩和が、非常に重要です。

性犯罪で問題となるケース

性犯罪で問題となるケースは、以下のとおりです。

性交等となるケース

従来の性交等は、膣(女性器)、肛門および口腔に陰茎(男性器)を挿入し、または挿入させることとされていましたが、改正刑法では、これらに加え、膣および肛門への陰茎以外の身体の一部(手指など)および物の挿入が性交等に含まれることになりました。

このような挿入行為は、従来の規定では、強制わいせつ罪にあたるとされていましたが、改正刑法では不同意性交等罪が成立することになります。物には、形状・性質による限定はなく、たとえば、錠剤・座薬のように挿入後溶けるような物なども含まれます。

したがって、男性から女性や女性から男性に対する異性間だけでなく、男性から男性、女性から女性に対する同性間においても、上記の挿入行為によって、不同意性交等罪が成立することになります。

被害者の年齢および行為者との年齢差について誤信していたケース

被害者の年齢および行為者との年齢差は、故意における認識対象なので、14歳の被害者(中学生)を16歳以上(高校生)であると誤信した場合、また、13歳以上16歳未満の被害者とは5歳以上年齢差があるのに、それがないと誤信した場合には、誤信したことに合理的な理由が認められる場合、あるいは、誤信したことを虚偽だと決めつけるには合理的な疑いが残る場合には、故意が阻却されます。

被害者の誤信や人違いを利用するケース

被害者が医療行為やマッサージであると誤信していることを利用して、わいせつな行為や性交等をした場合には、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立します。

また、たとえば、真実は夫とは別の人物であるのに、暗闇の中で、行為者を夫と勘違いしていることを利用して、わいせつな行為や性交等をした場合には、不同意わいせつ罪や不同意性交等罪が成立します。

これらについては、従来は、心理的・精神的な抗拒不能として、準強制わいせつ罪・準強制性交等罪の成否が問題とされていましたが、改正刑法では明文で規定されることになりました。

まとめ

性犯罪で逮捕された場合、まずは冷静に状況を理解し、迅速に弁護士に相談することが最も重要です。弁護士は、被疑者の早期釈放を目指して、法的手続きの中で必要なサポートを提供します。また、被害者との示談交渉や被害者の処罰感情の緩和を通じて、問題の解決に向けて尽力します。

性犯罪はその内容や法的処罰が複雑であり、早期の対応が案件の結果を大きく左右します。被害者の立場を尊重しつつ、法的な手続きにおいて適切なアドバイスを受けることが、被疑者にとって最良の選択となります。性犯罪で逮捕されてお困りの方は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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