大麻取締法で逮捕されたら

大麻取締法で逮捕されたら

大麻の規制法違反で逮捕された場合、今後どうなるのか、身柄拘束が長期化するのではないかと不安に感じる方も多いでしょう。また、逮捕された被疑者の家族も、被疑者のために大麻を含む薬物犯罪に強い弁護士を探したいと考えるのが自然です。

近年、大麻の使用行為そのものも処罰対象となるよう法律が改正され、その内容は大きく報道されています。では、何がどのように変わったのか。まずはその改正の流れを確認しておきましょう。


以下では、大麻とは何か大麻の規制法違反で逮捕された場合に問われる罪関連する罰則旧大麻取締法違反の起訴率や科刑状況大麻に関して用いられる令状、そして逮捕されるケースの具体例などについて詳しく解説します。

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目次

法改正の概要:大麻取締法から麻向法への移行

大麻取締法は、令和5年(2023年)12月に改正され、これに伴い麻薬および向精神薬取締法(以下「麻向法」といいます)も改正されました。

今回の改正では、大麻草から製造された医薬品の施用等を可能にするため、大麻から製造された医薬品の施用、交付、受施用の禁止規定が削除され(いわゆる医療用大麻の解禁)、大麻およびその有害成分であるTHC(テトラヒドロカンナビノール)は、麻向法上の「麻薬」として位置づけられることとなりました。これにより、大麻の不正な施用についても他の規制薬物と同様に麻向法の禁止規定および罰則(施用罪)が適用されます。

また、大麻が麻薬として位置づけられたことにより、輸入・輸出・製造・所持・譲渡・譲受といった行為はすべて麻向法による規制対象となりました。

一方で、旧大麻取締法は主に大麻草の栽培を規制する法律となるため、その名称は「大麻草の栽培の規制に関する法律」(以下「大麻草栽培規制法」)へと変更され、令和6年(2024年)12月12日から施行されています。

これにより、大麻草から製造された医薬品については、医師から処方された場合に限り、使用が認められるようになりました。

大麻とは

大麻とは、大麻草栽培規制法により定義されており、大麻草(カンナビス・サティバ・リンネ)およびその製品のことをいいます。ただし、大麻草のうち、種子および成熟した茎は大麻から除かれています。

また、大麻草の製品であっても、大麻草としての形状を有しないものは、大麻から除かれています。

大麻草には、カンナビノイドと呼ばれる独特な化合物群が含まれます。その主なカンナビノイドとしてTHC(テトラヒドロカンナビノール)CBD(カンナビジオール)が知られています。

大麻草の花や葉には、THCという脳などの中枢神経系に作用する有害成分が含まれており、大麻を乱用したり、長く使い続けたりすると、記憶への影響や学習能力の低下などをもたらします。

旧大麻取締法では、大麻草の特定の部位、すなわち主に大麻草の花や葉の部位にTHCが多く含まれているため、これらの部位を規制するいわゆる部位規制を実施してきました。

しかし、今回の改正では、この部位規制から、大麻を麻向法の麻薬として位置づけ、THCを直接規制する成分規制へと変更されました。

そして、大麻規制が麻向法による成分規制に移行したことから、上述したように、旧大麻取締法に処罰規定が存在しなかった大麻使用行為が麻向法における「施用罪」として処罰されることになったのです。

このように、大麻およびその有害成分であるTHCは、麻向法における麻薬の一つとして位置づけられました。

しかし、CBD自体は、麻薬成分ではないため、麻向法の規制対象ではありません。

もっとも、麻向法の有害成分規制への移行に伴い、麻薬成分ではない大麻草由来製品(例:CBD製品)については、花穂や葉から抽出されたものであっても流通および使用が可能となることから、当該製品に微量に残留するTHCの残留限度値を設けることとされました。

その結果、残留限度値を超える量のTHCを含有する製品については、「麻薬」として規制し、その施用を罰則の対象とすることになりました。

THCの残留限度値は、下記表のとおりです。

製品区分THC残留限度値想定される製品例
油脂(常温で液体のもの)、粉末100万分中10分の量(10ppm、10mg/kg、0.0010%)・CBDオイル、ヘンプシードオイル、化粧オイル等【植物油】
・CBDパウダー、プロテイン等【粉末類】
水溶液1億分中10分の量(0.10ppm、0.10mg/kg、0.000010%)・清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水等【アルコール水溶液を含む水溶液】
・牛乳、植物性の飲料等【コロイド溶液】
その他100万分中1分の量(1ppm、1mg/kg、0.0001%) ・菓子類、錠剤、バター類【固形物全般】
・電子タバコ等【グリセリンと脂肪酸が結合した化合物、水を含まない有機溶媒製品】
・シャンプー、リンス、乳液、クリーム、マヨネーズ、バーム、ドレッシング等【粘性が高い、もしくはグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率が高い、またはその両方の水との混合物】
・ゼリー等【ゲル状でグリセリンと脂肪酸が結合した化合物を含まない半固形物】
製品区分油脂(常温で液体のもの)、粉末
THC残留限度値100万分中10分の量(10ppm、10mg/kg、0.0010%)
想定される製品例・CBDオイル、ヘンプシードオイル、化粧オイル等【植物油】
・CBDパウダー、プロテイン等【粉末類】
製品区分水溶液
THC残留限度値1億分中10分の量(0.10ppm、0.10mg/kg、0.000010%)
想定される製品例・清涼飲料水、アルコール飲料、化粧水等【アルコール水溶液を含む水溶液】
・牛乳、植物性の飲料等【コロイド溶液】
製品区分その他
THC残留限度値100万分中1分の量(1ppm、1mg/kg、0.0001%) 
想定される製品例・菓子類、錠剤、バター類【固形物全般】
・電子タバコ等【グリセリンと脂肪酸が結合した化合物、水を含まない有機溶媒製品】
・シャンプー、リンス、乳液、クリーム、マヨネーズ、バーム、ドレッシング等【粘性が高い、もしくはグリセリンと脂肪酸が結合した化合物の含有率が高い、またはその両方の水との混合物】
・ゼリー等【ゲル状でグリセリンと脂肪酸が結合した化合物を含まない半固形物】

すべての製品は、常温(15~25℃)における状態で区分を判断します。

たとえば氷菓のように、凍結された状態で販売されている製品であっても、常温において液体となるものは、液体となった状態で判断されます。

また、大麻草栽培規制法では、後述するとおり、無免許での大麻草の栽培等が禁止され、大麻草の栽培免許についても、「大麻草の製品の原材料とする場合」(第一種)「医薬品の原材料とする場合」(第二種)に区分され(産業用大麻の解禁)、さらに、第一種免許のもとで栽培可能な大麻草について、有害成分(THC)の濃度が基準値以下の大麻草から採取した種子等を用いて栽培しなければならない管理方法とされました。

大麻の規制法違反で逮捕されたら問われる罪

大麻の規制法である麻向法および大麻草栽培規制法の各違反は、大麻も犯罪の客体とするもので、その輸入、輸出、製造、所持、譲渡、譲受、施用および栽培が罪に問われます。

以下では、それぞれの罪について説明します。

大麻の輸入、輸出および製造

大麻の輸入とは、国外から国内に大麻を搬入することをいいます。

大麻の輸出とは、国内から国外に大麻を搬出することをいいます。

大麻の製造とは、大麻草からTHCを抽出して残留限度値を超える量のTHCを含有する製品を作り出すことなどをいいます。

大麻の所持、譲渡および譲受

大麻の所持とは、人が大麻を保管する実力支配関係を有していることをいいます。

大麻の譲渡とは、相手方に対し、大麻についての法律上または事実上の処分権限を付与し、かつ、その所持を移転することをいいます。

大麻の譲受とは、相手方から、大麻についての法律上または事実上の処分権限を付与され、かつ、その所持の移転を受けることをいいます。

大麻の施用

大麻の施用とは、大麻をその用法に従って用いる一切の行為のことをいいます。

大麻草の栽培

大麻草の栽培とは、大麻草の種子を蒔いてから大麻を収穫するまでの一連の行為のことをいいます。

大麻草の栽培に当たっては、特別の免許が必要とされています。 

大麻草の栽培に関する免許区分は、下記表のとおりです。

名称目的免許権者
第一種大麻草採取栽培者 大麻草から製造された製品の原材料の採取都道府県知事
第二種大麻草採取栽培者医薬品の原料の採取厚生労働大臣
大麻草研究栽培者大麻草の栽培を伴う研究厚生労働大臣  

用語の説明

大麻草採取栽培者とは、都道府県知事の許可を受けて、種子または繊維を採取する目的で、大麻草を栽培する者のことをいいます。

大麻草研究栽培者とは、厚生労働大臣の許可を受けて、大麻草を研究する目的で、大麻草を栽培する者のことをいいます。

大麻草栽培者とは、大麻草採取栽培者および大麻草研究栽培者のことをいい、大麻草栽培者でなければ大麻草を栽培してはならないものとされています。

第一種大麻草採取栽培者とは、都道府県知事の許可を受けて、大麻草から製造される製品の原材料を採取する目的で、大麻草を栽培する者のことをいいます。

第二種大麻草採取栽培者とは、厚生労働大臣の許可を受けて、医薬品の原材料を採取する目的で、大麻草を栽培する者のことをいいます。

施行関係

大麻草栽培規制法は、令和7年(2025年)3月1日の施行により、栽培者免許を取得した者が大麻草を栽培し、医薬品の原料とすることや、麻薬等の有害・違法成分を含まない大麻草由来の製品等に加工することが可能になりました。

ただし、第一種大麻草採取栽培者および第二種大麻草採取栽培者が大麻草の加工をしようとするときは、厚生労働大臣の許可を受けなければならないこととされています。

また、第一種大麻草採取栽培者は、「THCの濃度が0.3%を超えない大麻草」の種子等を用いて栽培しなければなりません。

大麻に関する罰則

大麻に関する罰則は、下記表のとおりです。 

罰則に記載されている懲役は「拘禁刑」、有期懲役は「有期拘禁刑」と表記されるようになります。この変更は、令和7年(2025年)6月1日(改正刑法施行日)から適用されます。

規制法主な違反態様罰則
麻向法輸入、輸出、製造(営利目的なし)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
所持、譲渡、譲受 (営利目的なし)7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
施用(使用)(営利目的なし)7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
大麻草栽培規制法栽培(営利目的なし)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 
規制法麻薬及び向精神薬取締法
主な違反態様輸入、輸出、製造
(営利目的なし)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金
主な違反態様所持、譲渡、譲受 
(営利目的なし)7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
主な違反態様施用(使用)
(営利目的なし)7年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)または情状により1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)および300万円以下の罰金
規制法大麻草栽培規制法
主な違反態様栽培
(営利目的なし)1年以上10年以下の懲役(拘禁刑)
(営利目的あり)1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)または情状により1年以上の有期懲役(有期拘禁刑)および500万円以下の罰金 

旧大麻取締法違反の起訴率など

令和2年版犯罪白書(薬物犯罪。以下「犯罪白書」といいます)によれば、令和元年の起訴人員および不起訴人員を合わせた人員のうち、起訴率は50.6%起訴猶予率は35.7%その他の不起訴率は13.7%になっています。旧大麻取締法違反の起訴率は、他の薬物犯罪に比べて低い傾向にあります。

旧大麻取締法違反の科刑状況

犯罪白書によれば、旧大麻取締法違反に関する令和元年の地方裁判所における有期懲役の科刑状況(罪名別)を見ると、全部執行猶予が85.9%一部執行猶予(宣告した刑期の一部を実刑にするとともに、その残りの刑期の執行を猶予するもの)が2.1%全部実刑が12.0%になっています。

大麻に関して用いられる令状

大麻に関して用いられる令状は、以下のそれぞれの場合に示すとおりです。

なお、下記の令状により得られた証拠物(大麻樹脂)、尿、毛髪および異物(大麻樹脂)については、さらに鑑定が必要になります。

体腔(口腔、膣肛門)に挿入された証拠物(大麻樹脂)の捜索・差押えが必要な場合

実務では、捜索差押許可状身体検査令状が併用されています。

尿の強制採取が必要な場合

大麻使用の疑いがある場合に、被疑者が尿の任意提出を拒否したような場合には、尿を強制的に採取して尿中に大麻成分の含有があるか否かを検査する必要があります。

実務では、このような強制採尿令状として、捜索差押許可状が用いられています。

ところで、厚生労働省の資料によれば、THCは体内に摂取された後、代謝され、THC代謝物 (THC-COOH-glu)として尿中に排泄されます。そのため、使用の立証には、THC代謝物のTHC-COOHを調べることになります。一般的にTHC摂取後1週間程度は、検査可能な量が尿中に排泄されます。常習者に関しては、3か月を超えて検出される例があることが知られています。

毛髪の強制採取が必要な場合

大麻の使用歴については、規制法が施行されてからは、一般的には採取した尿の検査をして大麻成分の含有の有無を調べることになります。しかし、大麻使用の疑いがあるのに、検尿によっても大麻成分の含有が検出できない場合や検出できてもその使用を否認して知らないうちに体内に入ったなどと弁解がなされることが考えられます。

このような場合には、他の薬物犯罪と同様に、過去の使用歴を調べるために毛髪を採取してこれを検査する方法がとられることになるでしょう。

その場合、他の薬物犯罪と同様に、「毛髪50本程度を醜状や皮膚に損傷を生じさせないように切り取って採取すること」などと記載した鑑定処分許可状身体検査令状が併用されることになります。

嚥下された異物(大麻樹脂)の押収が必要な場合

実務では、差し押さえるべき物として「被疑者の嚥下した大麻と認められる茶褐色樹脂」、条件として「レントゲン検査機器または下剤(吐剤)の使用による体腔内の検査、異物の採取については、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせること」などと記載した捜索差押許可状鑑定処分許可状が併用されることになります。

大麻の規制法違反で逮捕されるケース

大麻の規制法違反で逮捕されるケースは、以下のとおりです。

なお、大麻の施用(使用)が処罰されることになったため、逮捕後に尿の任意提出を求められたり、場合によっては尿の強制採取も多くなることが予想されます。

現行犯逮捕されるケース

別件の捜索差押許可状により、被疑者の自宅を捜索していた際に、大麻草の栽培が確認された場合や、職務質問時に挙動不審と判断され、所持品検査の結果、カバンの中から大麻が発見されたことから、被疑者が現行犯逮捕される場合です。

通常逮捕されるケース

大麻草の栽培や大麻所持を目撃した者からの情報に基づき、捜査を開始して嫌疑が固まったところで、裁判官から逮捕状の発付を得て、被疑者が後日通常逮捕される場合です。

緊急逮捕されるケース

大麻所持を目撃した者からの通報を受け、警察官が付近を巡回していた際、通報者の目撃情報に沿う人相、年齢、服装、荷物携帯の者を発見し、職務質問をしようとしたところ、その者が逃走しようとしたため、通報を受けた容疑者と確信し、嫌疑が十分であること、および急速を要する状況があることを被疑者に告げて、被疑者が緊急逮捕される場合です。

まとめ

大麻の規制法違反で逮捕された場合、不安や疑問が募ることと思います。被疑者の早期釈放や不起訴を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判官に対して適切に働きかけます。経験豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しについても具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者に有利な結果を引き出す可能性が高まります。

しかし、本来であれば不起訴処分が得られる可能性が高い事案であっても、初動対応を誤ったために起訴されてしまう可能性もあります。

このように初動対応が非常に重要であることから、大麻の規制法に違反したことでお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。 

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