犯罪をしていないにもかかわらず犯罪者として扱われることを一般に「冤罪」といいます。捜査機関が誤って犯罪を行っていない人を犯罪者として扱うことで、身に覚えのないことで逮捕されることがあった場合、どう対応すればよいのでしょうか。
そこで以下では、冤罪として逮捕された場合の対応方法を解説します。
冤罪とは
冤罪(えんざい)とは、犯罪をしていないにもかかわらず、犯罪者として扱われることをいう一般的な用語です。冤罪という言葉は「痴漢冤罪」というセットで用いられますが、この場合は痴漢をしていないにもかかわらず痴漢をしたとして扱われることをいいます。過去には死刑判決が出るような重大な事件で、警察・検察の自白強要や証拠の捏造などが明るみになり無罪となったケースが多数あります。
誤認逮捕と冤罪の違い
冤罪とよく似た言葉に誤認逮捕が挙げられます。誤認逮捕は犯人ではない人を逮捕してしまうことをいいます。逮捕に関する用語ですが、冤罪の一種といえるでしょう。
冤罪であることを主張する方法
冤罪であることを主張する方法に次のものが挙げられます。
- アリバイを証明する
- 目撃者を探す
- DNA鑑定を要求する
アリバイを証明する
犯行時刻に現場にはいなかった場合、犯人であると追及し続けることはできないでしょう。例えば、犯行時刻に飲食店で食事をしていた場合、その飲食店の防犯カメラの映像を捜査機関に提出することで、犯行時刻に現場にいなかったと証明できます。アリバイを証明することで、冤罪であることを主張します。
目撃者を探す
犯行現場で別の人が犯人を見ていた場合や、自分が犯人ではないことを証明するような目撃者がいる場合があります。例えば、男性が犯人として疑われている場合に、犯行現場から女性が出てきたのを目撃した人がいる場合、その目撃証言をしてもらうことで自分が犯人ではないことの裏付けになります。そのため、目撃者を探すことで冤罪であることを主張します。
DNA鑑定を要求する
犯行現場でDNAを採取できるような場合には、DNA鑑定を要求することで自分が犯人ではないと主張する根拠になります。
冤罪で逮捕された場合の対応策
冤罪で逮捕された場合の対応策を知っておきましょう。
虚偽の自白をしない
刑事事件では被疑者に対して取調べが行われます。冤罪による刑事事件の多くでは、過酷な取調べを受けた結果、自分が犯罪を行ったと認める虚偽の自白を強いられることがあります。そして、その自白が証拠として用いられ、有罪と判断されることがあります。刑事事件において自白は有力な証拠となるため、虚偽の自白は絶対にしないようにしましょう。
供述調書に安易にサインしない
取調べの内容は供述調書という書面として残されます。供述調書を作成する場合、作成時に内容を読み聞かせ、被疑者がサインすることが必要です。供述調書にサインすると、記載内容を認めたことになります。虚偽の自白をさせられた場合や誘導尋問などで不利な内容を供述させられた場合には、供述調書に安易にサインしないようにしましょう。
冤罪で逮捕された場合には弁護士に依頼する
冤罪で逮捕された場合には弁護士に依頼しましょう。
弁護士に依頼する
冤罪で逮捕された場合、自分が犯人ではないと主張するために、アリバイを示す、目撃者を探すなどの行動が必要です。しかし、逮捕されている場合、自由に行動ができないので、これらの行為ができません。逮捕されて勾留されるまでの72時間の間は家族であっても面会ができず、家族に協力してもらうのも困難です。そのため、弁護士に依頼し、適切な対応や取調べへの対処について助言を受けることが望ましいでしょう。
弁護士に依頼する場合、本人だけでなく家族も依頼することができます。
当番弁護士制度を利用する
弁護士に依頼するためにはお金が必要です。そのため、すぐに費用を用意できない場合には、弁護士を派遣してくれる日本弁護士連合会の当番弁護士制度を利用しましょう。逮捕直後1回に限り、無料で弁護士を呼べる当番弁護士の制度を利用して、取調べへの対処について助言を受けましょう。
国選弁護制度を利用する
弁護士に依頼する費用が用意できない場合の制度として、国選弁護制度が設けられています。
この制度には、勾留中の被疑者を対象とした「被疑者国選弁護制度」と、起訴後の被告人を対象とした「被告人国選弁護制度」があります。
50万円以上の資産がなく、弁護士費用を工面できない場合には、国の費用で弁護士を選任してもらうことが可能です。
ただし、逮捕の段階では国選弁護制度は適用されないため、まずは当番弁護士制度を利用しましょう。
まとめ
冤罪なのに逮捕された場合、捜査機関が辻褄を合わせるために虚偽の自白を強要し、強引に有罪に導こうとすることがあります。最悪のケースでは有罪とされてしまう可能性もあり、適切な対処が必要です。逮捕されている場合には自由に行動できず、適切な対応も困難になるため、なるべく早く弁護士に依頼するようにしましょう。