刑事事件の時効について

刑事事件の時効について

刑事事件には、一定の期間の経過により起訴や刑の執行ができなくなる「時効」という制度があります。特に「公訴時効」は、起訴が可能な期間を定めるもので、被疑者がいつまでも刑事責任を問われることがないように設けられています。

事件の重大性によって時効の期間は異なり、殺人など一部の重大犯罪では時効が存在しないケースもあります。

そこで以下では、時効について、公訴時効と消滅時効の違い、犯罪ごとの具体的な時効期間、公訴時効が停止するケースやその計算方法、法改正の影響などを解説します。

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目次

刑事事件の時効の種類

刑事事件における「時効」には主に2種類あります。ひとつは「公訴時効」で、犯罪が行われてから一定期間が過ぎると、検察官が起訴できなくなる制度です。もうひとつは「消滅時効」で、刑の確定後に一定期間が経過すると、刑の執行ができなくなるものです。

つまり、公訴時効は「起訴までの期限」、消滅時効は「刑罰の執行までの期限」という違いがあります。時効については公訴時効が特に重要です。

公訴時効

公訴時効とは、検察官が犯罪について起訴(公訴提起)できる期間の制限を意味します。

一定の期間が経過すると、その犯罪については原則として刑事訴追ができなくなります。これは、長期間が経過することで証拠が散逸したり、記憶が曖昧になるなどして、公正な裁判が困難になるために設けられている制度です。

公訴時効の期間は犯罪の重大性に応じて異なり、殺人などの重大犯罪では時効が存在しない場合もあります。

消滅時効

消滅時効は、刑事事件において有罪判決が確定した後、一定期間が経過したことで、刑罰の執行ができなくなる制度です。

たとえば懲役刑を受けた者が逃亡していた場合などに、一定年数が経過すると刑務所に収容されなくなるという仕組みです。これは社会秩序や個人の更生の観点から、過度に長期間追跡を続けることが妥当でない場合に適用されます。消滅時効の期間も刑の内容により異なります。

公訴時効の期間

公訴時効の期間は、犯罪の法定刑の重さによって細かく分類されています。

たとえば殺人などの重大犯罪は「時効なし」、一方で比較的軽微な犯罪であれば1年や3年など短い期間が定められています。これらの期間は刑事訴訟法第250条に規定されており、原則としてその期間が経過すると起訴はできなくなります。

以下では、刑の重さごとに設けられた具体的な時効期間について詳しく見ていきます。

人を死亡させた罪であって拘禁刑に当たる罪

刑事訴訟法第250条第1項は、人を死亡させた罪であって拘禁刑に当たる罪の公訴時効について次のように定めています。

法定刑の上限時効期間該当する例
死刑なし殺人罪、強盗殺人罪、汽車転覆致死罪、水道毒物等混入同致死罪
無期の拘禁刑30年不同意わいせつ致死罪、不同意性交等致死罪、往来危険致死罪
長期20年の拘禁刑20年傷害致死罪、危険運転致死罪、
その他10年業務上過失致死罪、自動車運転過失致死罪

人を死亡させた罪であって拘禁刑以上の刑に当たるもの以外の罪

刑事訴訟法第250条第1項は、人を死亡させた罪であって拘禁刑に当たるもの以外の罪について次のように定めています。

法定刑の上限公訴時効期間該当する例
死刑25年現住建造物等放火罪、殺人未遂罪、内乱罪、外患誘致罪
無期の拘禁刑20年不同意わいせつ致傷罪、不同意性交等致傷罪、通貨偽造罪、身の代金目的略取罪、強盗致傷罪
長期15年以上の拘禁刑10年強盗罪、傷害罪、非現住建造物等放火罪、往来危険罪
15年不同意性交等罪、監護者性交等罪
長期15年未満の拘禁刑7年窃盗罪、詐欺罪、恐喝罪、業務上横領罪、盗品有償譲受け罪
12年不同意わいせつ罪、監護者わいせつ罪、児童福祉法違反(児童に淫行をさせる行為)
長期10年未満の拘禁刑5年未成年者略取及び誘拐罪、横領罪
長期5年未満の拘禁刑もしくは罰金3年暴行罪、侮辱罪、過失傷害罪、過失致死罪、名誉毀損罪、器物損壊罪
拘留または科料1年軽犯罪法違反

公訴時効の停止とは?

「公訴時効の停止」とは、一定の条件が満たされる場合に、進行中の公訴時効のカウントが一時的に止まる制度です。

たとえば、犯人が国外に逃亡している場合や、少年事件として家庭裁判所に送致された場合などが典型例です。この制度が適用されると、時効期間が一時的に中断され、その期間を除外して計算します。つまり、停止中は時効が進行せず、条件が解除された時点から再び進行が再開されます。

逃亡や未成年者であることを理由に、事件が時効で処理されることを防ぐための重要な制度です。

公訴時効はいつから計算する?

公訴時効の起算点は、原則として「犯罪が終了した時点」です。

たとえば窃盗であれば盗みが完了したとき、暴行なら暴力を加えた瞬間からカウントが始まります。ただし、継続的な犯行や複数の犯罪にまたがる場合は、最後の行為が終わった時点が起算点となることがあります。

犯罪後に公訴時効の規定が変わった場合は?

時効制度が改正された場合、基本的には「犯罪が発生した時点で有効だった法律」に基づいて時効期間が適用されます。つまり、改正後に時効が廃止された場合でも、原則としてさかのぼって適用されることはありません

たとえば、2010年の刑事訴訟法改正により殺人罪の公訴時効が廃止されましたが、これは改正後に発生した事件に限って適用されます。

まとめ

刑事事件における公訴時効は、事件の重大性に応じて期間が定められており、一定の年数が経過すると、検察官は原則起訴できなくなります。

時効制度には、証拠保全の限界や被疑者の人権保護といった目的がありますが、逃亡や少年事件による停止制度、時効起算点のルールなど複雑な要素も含まれています。

過去の犯罪でも制度改正によって扱いが変わることはあるため、実際に関係する可能性がある場合は、早めに弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。

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