刑事事件
2025/06/16 2026/05/19

万引き・窃盗で逮捕されたら | 刑罰やよくある事例について

万引き・窃盗で逮捕された場合、どのくらい身柄拘束が続くのか、起訴されるのか、それとも不起訴になるのか、不安に感じる方も多いでしょう。

被疑者の家族としても、検察官の判断や裁判の結果が少しでも有利になることを願い、刑事事件に詳しい弁護士に相談したいと考えるのが自然です。

以下では、窃盗の態様と主な手口、窃盗罪の身柄状況、検察庁の終局処理状況、裁判所の科刑状況、万引きにおける微罪処分、よくある事例などについて説明します。

なお、以下の統計の数値は、いずれも犯罪白書によるものです。

財産事件の全体像を知りたい方は、以下の記事も併せてご覧ください。

刑事事件でお困りの方は
当事務所へご相談ください!

窃盗罪と万引きに関する基礎知識

窃盗とは、他人の財産を、その持ち主の意思に反して自分のものにする行為であり、刑法235条により「10年以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金」に処されます。令和7年6月1日の法改正により、「懲役」は「拘禁刑」という表記に改められます。

窃盗にはさまざまな手口が存在し、万引きもその一つです。万引きは他の窃盗と比べて検挙件数が多く、さらに「微罪処分率」が高いという特徴があります。令和6年版犯罪白書(令和5年の統計)によると、万引きは窃盗の手口別検挙件数のうち39.9%を占めており、次点の自転車盗(7.0%)や車上・部品ねらい(6.0%)などを大きく上回る割合です。

万引きや窃盗事件で被疑者にとって最も望ましいのは、警察による微罪処分であり、次に検察官による不起訴処分です。これらの処分は前歴にはなりますが、前科は付きません。

一方で、被害額が軽微であっても罰金刑となった場合には前科が付くため、可能であれば、微罪処分または不起訴処分で終わることが望ましいといえます。

窃盗の態様と主な手口

窃盗の態様は、侵入窃盗非侵入窃盗乗り物盗に分けられます。これらの態様ごとに、典型的な犯行手口が分類されています。

窃盗の態様に対応する主な手口は、下記表のとおりです。

窃盗の態様 主な手口
侵入窃盗 空き巣、出店荒し、忍込み、事務所荒し、金庫破り、倉庫荒し、病院荒し
非侵入窃盗 万引き、車上・部品ねらい、払出盗、置引き、職権盗、すり、ひったくり
乗り物盗 自転車盗、自動車盗、オートバイ盗

払出盗とは、不正に取得し、または不正に作成したキャッシュカード等を利用してATMから現金を窃取することをいいます。

職権盗とは、公務員等の身分を詐称し、捜査、検査等を装い、隙を見て金品を窃取することをいいます。

窃盗罪の身柄状況

検察庁既済事件の身柄状況(窃盗罪)は、下記表のとおりです。

逮捕関係 勾留関係
総数(A) 逮捕されない者(%) 警察等で逮捕後釈放(%) 警察等で逮捕・身柄付送致(B)(%) 検察庁で逮捕(C)(%) 身柄率(%) 認容(D) 却下(E) 勾留請求率(%)
80,397 53,784(66.9) 1,417(1.8) 25,170(31.3) 26(0.03) 31.3 23,408 596 95.3
逮捕関係
総数(A) 80,397
逮捕されない者(%) 53,784(66.9)
警察等で逮捕後釈放(%) 1,417(1.8)
警察等で逮捕・身柄付送致(B)(%) 25,170
(31.3)
検察庁で逮捕(C)(%) 26(0.03)
身柄率(%) 31.3
勾留関係
認容(D) 23,408
却下(E) 596
勾留請求率(%) 95.3

身柄率は(B+C)÷Aで、勾留請求率は(D+E)÷(B+C)でそれぞれ求めます。

上記の数字から、逮捕率は33.1%(26,613人)で、逮捕後釈放されている者もあって、勾留率は29.1%(23,408人)にすぎません。

検察庁の終局処理状況

検察庁終局処理人員(窃盗罪)は、下記表のとおりです。

総数 起訴(起訴率) 公判請求
(起訴で占める率)
略式請求
(起訴で占める率)
不起訴
(不起訴率)
起訴猶予
(不起訴で占める率)
その他
(不起訴で占める率)
67,975 30,373(44.7%) 24,862(81.9%) 5,511(18.1%) 37,602(55.3%) 29,517(78.5%) 8,085(21.5%)
総数 67,975
起訴
(起訴率)
30,373
(44.7%)
公判請求
(起訴で占める率)
24,862
(81.9%)
略式請求
(起訴で占める率)
5,511
(18.1%)
不起訴
(不起訴率)
37,602
(55.3%)
起訴猶予
(不起訴で占める率)
29,517
(78.5%)
その他
(不起訴で占める率)
8,085
(21.5%)

起訴率は、「起訴人員÷(起訴人員+不起訴人員)×100」の計算式で得た百分比、不起訴率は、「不起訴人員÷(起訴人員+不起訴人員)×100」の計算式で得た百分比のことです。

上記の数字から明らかなように、不起訴率の方が起訴率よりも高くなっています

裁判所の科刑状況

裁判所の科刑状況(窃盗罪)について見てみましょう。

簡易裁判所の科刑状況

通常第一審における有期刑(懲役)科刑状況は、下記表のとおりです。

総数 2年以上3年以下 1年以上2年未満 6か月以上1年未満 6か月未満
実刑(うち一部執行猶予) 全部執行猶予 実刑(うち一部執行猶予) 全部執行猶予 実刑(うち一部執行猶予) 全部執行猶予 実刑(うち一部執行猶予) 全部執行猶予
1,764 34(0) 164 317(1) 922 135(0) 189 1(0) 2
総数 1,764
2年以上3年以下
実刑(うち一部執行猶予) 34(0)
全部執行猶予 164
1年以上2年未満
実刑(うち一部執行猶予) 317(1)
全部執行猶予 922
6か月以上1年未満
実刑(うち一部執行猶予) 135(0)
全部執行猶予 189
6か月未満
実刑(うち一部執行猶予) 1(0)
全部執行猶予 2

一部執行猶予とは、実刑部分と猶予部分をあわせた刑期によるものです。

上記の数字から、実刑率は27.6%(487人)全部執行猶予率は72.4%(1,277人)になっています。

地方裁判所の科刑状況

通常第一審における有期刑(懲役)科刑状況は、下記表のとおりです。

総数 10年超
15年以下
7年超
10年以下
5年超
7年以下
3年超
5年以下
2年以上3年以下 1年以上2年未満 6か月以上1年未満 6か月未満
実刑(一部猶予) 全部猶予 実刑(一部猶予) 全部猶予 実刑(一部猶予) 全部猶予 実刑(一部猶予) 全部猶予
10,551 1 6 43 674 1,750(6) 1,754 1,988(8) 2,976 859(3) 491 7(0) 2
総数 10,551
10年を超え15年以下 1
7年を超え10年以下 6
5年を超え7年以下 43
3年を超え5年以下 674
2年以上3年以下
実刑(うち一部執行猶予) 1,750(6)
全部執行猶予 1,754
1年以上2年未満
実刑(うち一部執行猶予) 1,988(8)
全部執行猶予 2,976
6か月以上1年未満
実刑(うち一部執行猶予) 859(3)
全部執行猶予 491
6か月未満
実刑(うち一部執行猶予) 7(0)
全部執行猶予 2

上記数字から、実刑率は50.5%(5,328人)全部執行猶予率は49.5%(5,223人)で、ほぼ拮抗しています。

 

罰金の科刑状況

第一審における罰金科刑状況は、下記表のとおりです。

通常第一審

総数 100万円未満 50万円未満 30万円未満 20万円未満 10万円未満 5万円未満
493 17 217 236 20 0 3
総数 493
100万円未満 17
50万円未満 217
30万円未満 236
20万円未満 20
10万円未満 0
5万円未満 3

罰金額は、20万円以上50万円未満が全体の92%を占めています。

略式手続

総数 100万円 100万円未満 50万円未満 30万円未満 20万円未満 10万円未満 5万円未満
4,917 1 415 1,863 2,406 230 2 0
総数 4,917
100万円 1
100万円未満 415
50万円未満 1,863
30万円未満 2,406
20万円未満 230
10万円未満 2
5万円未満 0

罰金額は、20万円以上50万円未満が全体の87%を占めています。

万引きにおける微罪処分

万引きとは、買い物客を装い、店員の目を盗んで売り場の商品をこっそり盗む行為です。この行為は、刑法上の「窃盗罪」にあたります。そのため、原則として通常の刑事事件として警察の捜査対象となります。

微罪処分とは?

ただし、犯罪の内容が非常に軽微な場合には、「微罪処分(びざいしょぶん)」と呼ばれる特別な取り扱いがされることがあります。

微罪処分は、刑事訴訟法第246条ただし書きおよび犯罪捜査規範第198条に基づき、司法警察員(警察官など)が「検察官に送致する必要がない」と判断した場合に適用されます。

これは、事件を検察官に送っても、結局「起訴猶予(起訴しない)」となると明らかな場合に、無駄な手続きを省くための制度です。

微罪処分の運用と統一性の確保

とはいえ、警察官の判断だけで微罪処分を認めてしまうと、運用にばらつきが生じる可能性があります。そこで、検事正(検察庁のトップ)が基準を示し、各地域の警察に対して統一的な運用ができるよう指示を出しています。

万引きにおける微罪処分の適用例

万引きにおいて、次のような条件がすべて揃っている場合には、微罪処分が認められることがあります。

微罪処分が認められる条件
  • 被害額が少ない(おおむね2万円以下)
  • 犯行の状況が軽微(計画的でなく、偶発的なもの)
  • 商品の返還や弁償など、被害が回復されている
  • 被害店舗が処罰を望んでいない
  • 被疑者が素行不良ではなく、再犯の可能性が低い

これに該当するのは、窃盗・詐欺・横領などの比較的軽い財産犯と、それに関連する事案です。

万引きの微罪処分率

万引き事件における微罪処分の割合(検挙された人のうち、微罪処分となった人の割合)は次のとおりです。

微罪処分の割合
  • 女性:48.5%
  • 男性:38.5%

微罪処分に伴う措置

司法警察員が微罪処分を行う際には、犯罪捜査規範第200条に基づいて、次のような措置が必要とされています。

微罪処分に伴う措置
  1. 被疑者に対して、厳しく注意し、再犯防止を促す。
  2. 親権者や雇い主など、被疑者を監督する立場の人に対し、今後の監督について注意を促し、その内容を書面で受け取る。
  3. 被疑者に対し、被害者への謝罪や被害弁償など、適切な対応をとるよう指導する。

微罪処分が行われると、捜査は終了し、被疑者は逮捕や裁判を受けることなく事件は終結します。

よくある事例

万引き・窃盗でよくある事例は、以下のとおりです。

万引きで微罪処分になる可能性のあるケース

司法警察員が行う微罪処分は、上述したように、少なくとも、被害の回復と被害者が処罰を求めていないことが前提とされています。

したがって、万引きで微罪処分となるためには、万引きされた商品は売り物にならないとされていますので、万引きした被疑者は、被害商品の買い取りや被害弁償を行い、被害の回復を図るとともに、被害者の処罰感情を和らげるよう努める必要があります。

しかし、万引きの場合、被疑者やその家族が被害者に、被害商品の買い取りや被害弁償(以下、あわせて「被害弁償等」といいます)を申し入れたとしても、必ず受け入れられるとは限りません。被害弁償等がなされなければ、被害者の処罰感情の宥和も得られません。

そのためには、法律のプロである弁護士の手を借りて、被害弁償等に臨むのが望ましいことになります。

弁護士は、被害者の気持ちにも配慮しながら、被害者と折衝してその理解を得たうえ、被害を与えたことに見合う適切な金額で、被害弁償等(場合によっては示談)をします。そうすれば、被害者の処罰感情の宥和も得られることになります。

これにより、司法警察員による微罪処分の可能性が高まると考えられます。

万引きで不起訴処分になる可能性のあるケース

司法警察員の微罪処分を受けられず、万引きが検察官に送致された場合、被疑者にとって次に有利な処分は、検察官の不起訴処分になります。

被疑者に前科前歴がある場合や被害者の処罰感情が強い場合には、原則として微罪処分にはなりません。しかし、いずれの場合も、検察官の不起訴処分の余地は残っています。

万引きは、上述したように、窃盗の検挙件数の手口別構成比の39.9%を占め、また、万引きを含む窃盗の起訴率は44.7%、不起訴率は55.3%となっています。

正式な手続きのなかで、万引きは、侵入窃盗、乗り物盗や、他の非侵入窃盗の車上・部品ねらい、払出盗、置引き、自動販売機ねらい、すり、ひったくりなどの手口に比べ、一般的に、悪質性は低いと見られています。

そうすると、万引きについては、微罪処分にならなかった場合でも、早期に弁護士へ相談し、被害者への被害弁償などを行えば、不起訴処分となる可能性が高まります。

特殊詐欺で、受け子がキャッシュカードをすり替える前に犯行を断念したケース

特殊詐欺は、複数人が役割を分担しながら、組織的に行うのが一般的です。具体的には、以下のような役割があります(以下「犯人グループ」といいます)。

特殊詐欺の役割分担
  • かけ子:被害者に電話をかけて信用させ、金銭やカードの提供を誘導する役割
  • 出し子:被害者からだまし取ったキャッシュカードなどを使ってATMなどで現金を引き出す役割
  • 受け子:被害者から現金やキャッシュカードを直接受け取る役割
  • 指示役:全体の計画を立て、各役割に指示を出すリーダー的役割

このように、特殊詐欺は明確な役割分担のもとで遂行されるため、組織的犯罪として厳しく取り締まられています

本件では、犯人グループが被害者からキャッシュカードを窃取しようと企て、まず警察官を装った人物が被害者に電話をかけ、「被害者名義の口座から預金が引き出される詐欺被害が発生しており、再び被害にあわないようにするため、金融庁の職員が持参する封筒にキャッシュカードを入れて保管する必要がある」と虚偽の説明をしました。

そして、指示役の指示を受けた金融庁職員を装う者(以下「被告人」といいます)が被害者宅を訪問し、キャッシュカードを封筒に入れさせたうえで被害者に印鑑を取りに行かせ、その隙に偽の封筒とすり替えてカードを盗むという計画が立てられました。

ところが、被告人が被害者宅から約140メートル離れた路上に到達した時点で警察官が後をつけていることに気づき、指示役に指示を求めるなどして、犯行を断念しました。

このような「すり替え型窃盗」に関しては、従来、被害者宅に到達した時点を窃盗未遂の実行の着手とみる判例と、被害者宅に接近した段階で着手と認める判例に分かれていました。

最高裁判所は、この事件において後者の見解を採用し、新たな判断を示しました(最高裁令和4年2月14日決定)。

その理由は以下のとおりです。

「被害者に電話をかけキャッシュカードを封筒に入れて保管することが必要でありこれから訪れる者が作業を行う旨信じさせ、被害者宅を訪れる被告人が封筒に割り印をするための印鑑を被害者に取りに行かせた隙にキャッシュカード入りの封筒と偽封筒とをすり替えてキャッシュカードを窃取するという犯行計画に基づいて、すり替えの隙を生じさせる前提となり、被告人が被害者宅を訪問し虚偽の指示等を行うことに直接つながるとともに、被害者に被告人の指示等に疑問を抱かせることなくすり替えの隙を生じさせる状況を作り出すような嘘が述べられ、金融庁職員を装いすり替えによってキャッシュカードを窃取する予定の被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では、被害者が間もなく被害者宅を訪問しようとしていた被告人の説明や指示に従うなどしてキャッシュカード入りの封筒から注意をそらし、その隙に被告人がキャッシュカード入りの封筒と偽封筒とをすり替えてキャッシュカードの占有を侵害するに至る危険性が明らかに認められる。」

さらに、

「このような本件事実関係のもとにおいては、被告人が被害者に対して印鑑を取りに行かせるなどしてキャッシュカード入りの封筒から注意をそらすための行為をしていないとしても、本件うそが述べられ、被告人が被害者宅付近路上まで赴いた時点では、窃盗罪の実行の着手が既にあったと認められる。被告人には、窃盗未遂罪が成立する。」と判示しました。

この決定により、最高裁は、かけ子が被害者に虚偽の情報を伝え、すり替えを実行する者が被害者宅付近の路上まで到達した時点で、すでに窃盗の実行に着手していると認められるという判断を示したのです。

まとめ

刑事事件でお困りの方は
当事務所へご相談ください!

万引き・窃盗で逮捕された場合、不安や疑問を抱く方も多いでしょう。被疑者の微罪処分不起訴処分を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

万引き・窃盗の中には、被害者との示談や被害弁償が、被疑者の処分結果に影響を与える場合もあります。そして、被害者との折衝、示談交渉などは、法律のプロである弁護士に委ねるのが望ましいのです。

弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判所に対して適切に働きかけます。経験豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しについても具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者にとって有利な結果につながる可能性が高まります。万引き・窃盗でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

© 弁護士法人 赤坂ユスト法律事務所