横領・背任で逮捕されたら

横領・背任で逮捕されたら

横領や背任で逮捕された場合、身柄拘束がいつまで続くのか、起訴・不起訴の見通しはどうなるのかと不安に感じる方も多いでしょう。

被疑者の家族も、検察官による処分や裁判所の判断が少しでも有利になることを願い、刑事事件に精通した弁護士に相談したいと考えていることでしょう。

そこで以下では、横領罪の内容背任罪の内容横領罪および背任罪の身柄状況横領罪および背任罪で逮捕された後はどうなるのか横領罪および背任罪の終局処理状況横領罪の科刑状況背任罪の科刑状況よくある事例などについて説明します。

なお、以下で引用する刑法の条文は、条文番号のみを掲げています。

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目次

横領罪の内容

横領罪は、単純横領業務上横領遺失物等横領の各類型から構成されています。

このうち、単純横領罪と業務上横領罪は、共に財物を委託された者が委託した者との信頼関係に背いてこれを領得する点にその本質があり、これを併せて委託物横領罪といっています。

これに対し、遺失物等横領罪は、このような委託信任関係を前提としない点で委託物横領罪とは異なり、むしろ窃盗罪に類似する領得罪といえます。

横領罪における行為はいずれも「横領すること」です。

横領罪は、実行に着手した時点で既遂となるため、未遂は認められておらず、未遂を処罰する規定もありません。

以下で、それぞれの内容について見てみましょう。

犯罪の成立

単純横領罪の場合

単純横領罪は、自己の占有する他人の物(1項)または公務所から保管を命ぜられた自己の物(2項)を横領したときに成立します(252条)。

たとえば、人から預かっていた書籍を勝手に売却した場合が該当します。

業務上横領罪の場合

業務上横領罪は、業務上占有している他人の物を横領したときに成立します(253条)。

たとえば、会社から保管を任されていた金銭を私的に費消した場合などが挙げられます。

遺失物等横領罪の場合

遺失物等横領罪は、占有を離れた他人の物を横領したときに成立します(254条)。

たとえば、路上に落ちていた財布を持ち去った場合などが典型例です。

客体

単純横領罪の場合

客体は、自己の占有する他人の物、または公務所から保管を命じられた自己の物です。

占有とは、事実上の支配に限らず、法律上の支配を含みます。

他人の物とは、他人が所有する財物を指し、その財物には動産だけでなく不動産も含まれます。また「他人」とは、行為者以外の者をいい、自然人・法人を問いません。

業務上横領罪の場合

客体は、業務上占有している他人の物です。「業務上占有」とは、業務の遂行として他人の物を占有している状態をいいます。

なお、「業務」とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して行われる事務を指します。

「占有」および「他人の物」の意味は、前記の説明のとおりです。

遺失物等横領罪の場合

客体は、遺失物、漂流物、その他占有を離れた他人の物です。

刑罰

横領罪の刑罰は、以下の表のとおりです。

罪名罰条刑罰
単純横領252条5年以下の拘禁刑
業務上横領253条10年以下の拘禁刑
遺失物等横領254条1年以下の拘禁刑または10万円以下の罰金もしくは科料

以下で用いる「横領罪」という表現は、単純横領罪・業務上横領罪・遺失物等横領罪の3類型を含む趣旨です。

背任罪の内容

背任罪は、他人のために事務を処理する者が、自己もしくは第三者の利益を図る目的、もしくは本人に損害を加える目的で任務に背く行為をし、その結果、本人に財産上の損害を与えたときに成立します(247条)。

たとえば、会社の担当者が機密情報を競合企業へ意図的に漏洩し、会社に損害を与えた場合が典型例です。

背任罪の主体は「他人のためにその事務を処理する者」(事務処理者)です。

「他人のためにその事務を処理する」といえるためには、一定の信任関係のもとで事務を委託されている関係が必要です。

典型例として、他人のために事務を処理する関係には、次のようなものがあります。

事務処理関係の典型例
  • 契約に基づく事務委託関係
    (委任、請負、雇用、寄託など)
  • 法令上の地位に基づく信任関係
    (後見人、取締役、破産管財人など)

これらはいずれも、他人のために事務を処理する関係が明確に認められるため、背任罪の主体となり得ます。

「事務」とは、本人以外の者のために行われる事務であることが必要です。

「自己もしくは第三者の利益を図る」とは、任務に背く行為によって自己または第三者に利益をもたらすことを指します。

背任罪が成立するには、自己もしくは第三者の利益を図る目的、あるいは本人に損害を与える目的のいずれかが必要であり、これらを総称して「図利加害目的」といいます。

「任務に背く行為」とは、本人からの信任や委託の趣旨に反する行為を指します。

「本人に損害を加えた」とは、任務違背により本人(会社)の財産が減少した場合、または本来得られるはずの利益が得られなかった場合を指します。

財産上の損害が実際に発生しなかった場合は、背任未遂として処罰されます(250条)。

背任罪の法定刑は、5年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です(247条)。

横領罪および背任罪の身柄状況

2024年検察統計年報によれば、令和6年における検察庁既済事件の横領罪および背任罪の身柄状況は、以下の表のとおりです(同年報「41 罪名別・既済となった事件の被疑者の逮捕および逮捕後の措置別人員」参照)。

罪名逮捕関係勾留関係
総数(A)逮捕されない者警察等で逮捕後釈放
警察等で逮捕・身柄付送致(B)検察庁で逮捕(C)身柄率(%)認容(D)却下(E)勾留請求率(%)
横領8,2687,010231,227814.9%1,1503195.6%
背任1491004932.9%47198.1%

身柄率は(B+C)÷A、勾留請求率は(D+E)÷(B+C)で算出されます。

横領罪では、逮捕率は15.2%1,258人)と高くはなく、逮捕後に釈放される者もいるため、総数(8,268人)のうち勾留率は13.9%1,150人)となっています。

また、逮捕された1,258人のうち91.4%が勾留されていますが、そもそも逮捕されない者が総数の84.8%を占めています。

背任罪では、逮捕率は32.9%49人)で、総数(149人)のうち勾留率は31.5%47人)となっています。

また、逮捕された49人のうち95.9%が勾留されていますが、逮捕されない者も全体の67.1%を占めています。

横領罪および背任罪で逮捕された後はどうなるのか

前記の「横領罪および背任罪の身柄状況」によれば、次のとおりです。

横領罪で逮捕された場合、勾留率は91.4%、勾留請求率は95.6%、勾留認容率は97.4%となっています。

したがって、横領罪で逮捕された場合、被疑者は引き続き勾留されるのが原則に近いといえます。

また、背任罪で逮捕された場合、勾留率は95.9%、勾留請求率は98.1%、勾留認容率は97.9%となっています。

したがって、背任罪で逮捕された場合、被疑者は引き続き勾留されるのが原則といえます。

横領罪や背任罪では、勾留期間は原則として10日間です。

しかし、以下のような事情がある場合には、検察官の請求により、裁判官がさらに10日以内の勾留延長を認めることがあります。

勾留延長が認められる主な事情
  • 捜査を継続しなければ、検察官が起訴・不起訴を判断できない場合
  • 捜査官が可能な限り捜査を尽くしたにもかかわらず、10日間の勾留期間内に必要な証拠を収集できなかった場合
  • 勾留を延長しないと捜査に重大な支障が生じるおそれが明らかな場合
  • 勾留を延長することで、捜査上の支障が解消されると認められる場合

このように、やむを得ない事情があると判断されたときに限り、勾留期間が最大でさらに10日間延長されることになります。

横領罪および背任罪の終局処理状況

2024年検察統計年報によれば、令和6年における横領罪および背任罪の検察庁終局処理人員は、以下の表のとおりです(同年報「8 罪名別・被疑事件の既済および未済の人員」参照)。

罪名総数起訴(起訴率)公判請求(起訴で占める率)略式命令請求(起訴で占める率)不起訴(不起訴率)起訴猶予(不起訴で占める率)その他(不起訴で占める率)
横領単純横領536167(31.2%)167369(68.8%)226(61.2%)143(38.8%)
業務上横領1,268588(46.4%)588680(53.6%)389(57.2%)291(42.8%)
遺失物等横領4,573662(14.5%)321(48.5%)341(51.5%)3,911(85.5%)3,643(93.1%)268(6.9%)
背任15751(32.5%)45(88.2%)6(11.8%)106(67.5%)28(26.4%)78(73.6%)

起訴率は「起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100によって算出され、不起訴率は「不起訴人員」÷(「起訴人員」+「不起訴人員」)×100で算出されます。

上記の数字によれば、業務上横領罪の起訴率が最も高く総数の5割近くを占め、単純横領罪と背任罪はおよそ3割となっています。

他方、遺失物等横領罪の起訴率は最も低く、その結果、不起訴率は逆に最も高くなっています。

また、略式命令請求については、遺失物等横領罪が起訴の約5割を占める一方、背任罪は約1割にとどまっています。

遺失物等横領罪で不起訴率が高く、略式命令請求が約5割を占めている理由としては、横領の客体が「持ち主の占有を離れた物」であるという性質によるものと考えられます。

横領罪の科刑状況

令和6年司法統計年報(2 刑事編)によれば、令和6年における通常第一審事件の横領罪の科刑状況は、以下の表のとおりです(同年報「第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮)」参照)。

総数実刑(実刑率)
228 (44.2%)
(実刑で占める割合)            
執行猶予(執行猶予率)
51610年以下7年以下5年以下3年2年以上1年以上6か月以上6か月未満288
(55.8%)
人数1
(0.4%)
6
(2.6%)
35
(15.4%)
11
(4.8%) 
59
(25.9%) 
39
(17.1%) 
62
(27.2%)
15
(6.6%)
総数516人数
実刑(実刑率)

228
(44.2%)

(実刑で占める割合)
10年以下1
(0.4%)
7年以下6
(2.6%)
5年以下35
(15.4%)
3年11
(4.8%) 
2年以上59
(25.9%) 
1年以上39
(17.1%) 
6か月以上62
(27.2%)
6か月未満15
(6.6%)
執行猶予
(執行猶予率)
288
(55.8%)

横領罪では、実刑率が44.2%、執行猶予率が55.8%となっています。量刑を判断する際には、次のような事情が考慮されます。

量刑判断で考慮される主な事情
  • 信頼関係があったかどうか、その程度
  • 被疑者が担っていた業務内容(業務上横領罪の場合)
  • 被害額の大きさや対象となった財物の性質・価値
  • 被害回復の状況(弁償の有無・内容)
  • 示談が成立しているかどうか
  • 前科の有無およびその内容
  • 反省の態度が認められるかどうか

これらの事情を総合的に踏まえて、実刑か執行猶予かが判断されます。

横領罪で執行猶予率が5割を超えている背景には、被害回復が大きく影響していると考えられます。

他方、金融機関の担当者や会社の経理担当者による業務上横領罪では、高額被害となる場合が多く、量刑が厳しくなる傾向にあり、その結果が刑期にも反映されています。

背任罪の科刑状況

令和6年司法統計年報(2 刑事編)によれば、令和6年における通常第一審事件の背任罪の科刑状況は、以下の表のとおりです(同年報「第34表 通常第一審事件の有罪(懲役・禁錮)」参照)。 

総数実刑(実刑率)
7(29.2%)
(実刑で占める割合)
執行猶予(執行猶予率)
245年以下3年2年以上1年以上6か月以上6か月未満17
(70.8%)
人数1
(14.3%)
4
(57.1%)
2
(28.6%)
総数24人数
実刑(実刑率)
7(29.2%)
(実刑で占める割合)
5年以下1
(14.3%)
3年
2年以上4
(57.1%)
1年以上2
(28.6%)
6か月以上
6か月未満
執行猶予
(執行猶予率)
17
(70.8%)

背任罪では、実刑率が29.2%、執行猶予率が70.8%となっています。量刑を判断する際には、次のような事情が考慮されます。

量刑判断で考慮される主な事情
  • 任務違背行為の内容
  • 任務違背の頻度
  • 行為の悪質性
  • 被害額の大小
  • 犯行の目的・動機
  • 被害回復や被害弁償の状況
  • 示談成立の有無
  • 前科の有無および内容
  • 被疑者(被告人)の反省の態度

これらの事情を総合的に考慮して、実刑にするか執行猶予とするかが判断されます。

背任罪で執行猶予率が約7割と高い背景には、被害が少額であるケースが多いことや、被害が回復されている事例が多いことが影響していると考えられます。

また、任務違背の内容・頻度・悪質性に加え、本人に与えた財産上の損害が大きい場合には、実刑に処される傾向があります。

よくある事例

横領・背任でよくある事例は、以下のとおりです。

使途を限定して預かった金銭のケース

甲が海外での商品買付けのために乙から現金100万円を預かっていたにもかかわらず、これを乙に無断で費消した場合、現金100万円の所有権は乙に留まっているため、甲には横領罪が成立します。

判例も、製茶の買付資金として寄託された金銭を遊興費等に費消した事案について、「使途を限定されて寄託された金銭は、特別の事情のない限り、受託者はその金銭について刑法252条にいわゆる「他人の物」を占有する者と解すべき」であるとして、横領罪の成立を認めています(最判昭26・5・25刑集5巻6号1186頁)。

このようなケースで横領罪が成立するのは、使途を限定して金銭が委託されている場合に限られます。

したがって、現金を委託された場合には、その委託趣旨として一般財産との混同が禁止されていたかどうかが、横領罪の成否を判断する重要な要素となります。

不動産の二重売買のケース

不動産の二重売買とは、甲が自己所有の不動産を乙(第1譲受人)に売却し、代金の全額(または大部分)を受領したにもかかわらず、乙への所有権移転登記が未了であることを利用して、同じ不動産を丙(第2譲受人)にも売却し、丙が所有権移転登記を完了することをいいます。

このような場合、本件不動産の所有権はすでに乙に移転しており、甲は乙との売買契約に基づいて所有権移転登記を行う義務を負っています。

しかし、登記簿上は依然として甲が所有名義人であり、処分可能な法律上の支配を有していると評価されるため、丙に売却して所有権移転登記を完了させると、乙への登記移転が不可能となります。

この結果、甲には横領罪が成立するとされています(最決昭33・10・8刑集12巻14号3237頁参照)。 

不動産の二重抵当のケース

不動産の二重抵当とは、債務者である甲が、債権者乙のために自己所有不動産に抵当権を設定して金銭を借り受けたにもかかわらず、乙の抵当権登記を行わないまま、別の債権者丙のために同一不動産へ第1順位の抵当権設定登記を行い、金銭を借り受ける行為をいいます。

判例は、このような場合、甲が乙のために第1順位の抵当権設定登記を完了させるよう協力する義務を負っているのは甲の事務であり、その事務は主として乙(抵当権者)の利益のために行われるべきものであるとしています。

そして、甲が乙の抵当権を後順位へと実質的に後退させたことは、乙に財産上の損害を与える行為に該当するとして、背任罪の成立を認めています(最判昭31・12・7刑集10巻12号1592頁)。

まとめ

横領・背任で逮捕された場合には、一定期間の身柄拘束が続く可能性があるため、早期に弁護士へ相談することが重要です。

刑事事件に精通した弁護士であれば、横領・背任の各類型に応じた適切な弁護方針を立て、今後の見通しについて具体的な助言を行うことができ、被疑者(起訴後は被告人)にとって有利な結果につながる可能性が高まります。

横領・背任に関する事件でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

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