ストーカー事件で逮捕されたら

ストーカー事件で逮捕されたら

ストーカー事件で逮捕された場合、犯罪の性質上、身柄拘束が長引き、厳しい処分が予想されるため、不安を感じる方も多いでしょう。

ストーカーとは、英語の「stalk(忍び寄る)」に由来する言葉で、相手の意思に反して執ようにつきまとう行為を指します。日本でも、桶川ストーカー殺人事件などを契機に、ストーカー被害の深刻さが広く認識されるようになりました。

以下では、ストーカー規制法とは、ストーカー規制法による規制の対象、警告および禁止命令等、ストーカー規制法違反の罰則、よくある事例などについて説明します。

刑事事件でお困りの方は

当事務所へご相談ください!

当事務所へ
ご相談ください!

目次

ストーカー規制法の成立と背景

ストーカーは、「行為が執ようであること」や「次第にエスカレートすること」が特徴とされ、殺人など重大犯罪に発展する危険性があります。そのため、早期かつ適切な対策が求められていました。

こうした社会的背景を踏まえ、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」(以下「ストーカー規制法」)が平成12年(2000年)に制定・施行され、近年では令和3年(2021年)にも改正が行われました。

なお、以下のストーカー規制法における条文は、単に条文番号のみを掲げています。

ストーカー規制法とは

ストーカー規制法は、後述する「つきまとい等または位置情報無承諾取得等」を繰り返すストーカー行為者に警告を与えたり、悪質な場合は逮捕することで被害を受けている者を守る法律です。

以下で、ストーカー規制法の目的、ストーカー行為について見てみましょう。

ストーカー規制法の目的

ストーカー規制法は、1条で、「ストーカー行為等について必要な規制を行うとともに、その相手方に対する援助の措置等」を手段として、「個人の身体、自由および名誉に対する危害の発生を防止」することと「国民の生活と平穏に資すること」を法の目的として掲げています。

ストーカー行為

ストーカー行為とは、同一の者に対し、後述する「つきまとい等または位置情報無承諾取得等」を反復して行うことをいいます(2条4項)。

ただし、ストーカー規制法2条1項1号から4号までの行為および5号(電子メールの送信等に係る部分に限る)については、身体の安全、住居などの平穏、または名誉が害される、あるいは行動の自由が著しく害されるような「不安」を相手に与える態様で、「つきまとい等」が同一の者に対して反復して行われた場合に限り、「ストーカー行為」として成立することとされています。

ストーカー規制法による規制の対象

ストーカー規制法による規制の対象となるのは、「つきまとい等または位置情報無承諾取得等」と「ストーカー行為」の2つです。

以下で、「つきまとい等または位置情報無承諾取得等」について見てみましょう。

つきまとい等(2条1項)

法は、特定の者に対する恋愛感情や好意の感情、またはその感情が満たされなかったことへの怨恨を晴らす目的で、特定の者またはその身近な者(配偶者や親族など)に対して行われる以下の8つの行為を「つきまとい等」と規定しています。

つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等(1号)

つきまといや待ち伏せ、進路をふさぐ行為のほか、住居・勤務先・学校など、相手が実際にいる場所や普段いる場所の周囲で見張りをしたり、押しかけたり、周辺をむやみにうろついたりすることを指します。

具体例は、下記のとおりです。

つきまとい・待ち伏せ・押し掛け・うろつき等の具体例
  • 相手方を尾行してつきまとう。
  • 通勤・通学途中など、相手方の行動先で待ち伏せする。
  • 相手方の進路に立ちふさがる。
  • 相手方の自宅や職場、学校などや通常所在する場所(行き付けの喫茶店)の付近において見張りをする。
  • 相手方の自宅や職場、学校などや実際にいる場所(たまたま立ち寄った店舗)に押し掛ける。
  • 相手方の自宅や職場、学校などや実際にいる場所(旅行先のホテル)の付近をみだりにうろつく。

監視していると告げる行為(2号)

相手に行動を監視されていると感じさせるようなことを告げたり、そうした状態に置いたりすることを指します。

具体例は、下記のとおりです。

監視していると告げる行為の具体例
  • 相手方のその日の服装や行動パターンを電子メールや電話で告げ、いつも行動を監視していることを気づかせる。
  • 相手方が帰宅した直後に、「お帰りなさい」などと電話する。
  • 相手方がよくアクセスするインターネット上の掲示板に書き込みをする。
  • 公共の自転車置き場に置かれている相手方の自転車にメモを置く。

面会や交際等の要求(3号)

面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求することを指します。

具体例は、下記のとおりです。

面会や交際等の要求の具体例
  • 相手方が拒否しているにもかかわらず、面会や交際、復縁など、相手方に義務のないことを求める。
  • 待ち合わせ場所を指定し、そこに来ることを相手方に要求する。
  • 贈り物を受け取るよう相手方に要求する。

乱暴な言動(4号)

著しく粗野または乱暴な言動をすることを指します。

具体例は、下記のとおりです。

乱暴な言動の具体例
  • 相手方に、大声で「馬鹿野郎」などと粗野な言葉を浴びせる。
  • 相手方の家の前で大声を出したり、車のクラクションを鳴らすなど、乱暴な言動をする。
  • 「一生呪ってやる」など、相手に不安を与える乱暴な内容のメールを送信する。

無言電話、拒否後の連続した電話・文書の送付・ファクシミリ・電子メール・SNSメッセージ等(5号)

無言電話をかけたり、拒否されたにもかかわらず、繰り返し電話をかけたり、文書やファクシミリを送ったり、電子メールやSNSメッセージを送り続ける行為を指します。

具体例は、下記のとおりです。

無言電話や拒否後の連続した連絡などの具体例
  • 相手方に電話をかけ、相手方が電話に出たにもかかわらず、沈黙を保つ。
  • 相手方が拒否しているにもかかわらず、携帯電話や自宅、会社に何度も連続して電話をかける。
  • 相手方の自宅の郵便受けに直接手紙を何度も連続して投函する。
  • 相手方が拒否しているにもかかわらず、何度も連続して手紙等の文書やファクシミリ、電子メール、SNSのメッセージを送信する。

汚物などの送付(6号)

汚物や動物の死体など、著しく不快または強い嫌悪感を与える物を送りつけたり、相手が見える場所に置いたりする行為を指します。

具体例は、下記のとおりです。

汚物などの送付の具体例
  • 糞尿を相手方の自宅前に置く。
  • 汚物や動物の死体など、相手方に不快感や嫌悪感を与えるものを自宅や職場に送りつける。
  • 動物の死体などの写真を相手方に送りつける。

名誉を傷つける行為(7号)

相手の名誉を傷つけるような内容を伝えたり、誰でも見られる状態に置いたりする行為を指します。

具体例は、下記のとおりです。

名誉を傷つける行為の具体例
  • 相手方の名誉を傷つけるような内容の文書を電子メールで送信する。
  • 相手方を中傷する内容をインターネット掲示板に掲載する。
  • 相手方を中傷するビラを郵便受けに投函する。

性的羞恥心の侵害(8号)

その人の性的羞恥心を害するような内容を告げたり、そのような状況に置いたりする行為のほか、卑わいな文書・画像・電子データなどを送付したり、誰でも見られる状態に置いたりすることを指します。

具体例は、下記のとおりです。

性的羞恥心の侵害の具体例
  • 電話や手紙で、卑わいな言葉を告げ、はずかしめようとする。
  • わいせつな写真を相手方の自宅や職場に送りつける。
  • 相手方の裸体を撮影した画像データを、相手方に電子メールで送信したり、インターネット掲示板に掲載したりする。

位置情報無承諾取得等(2条3項)

法は、特定の者に対する恋愛感情や好意の感情、またはその感情が満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、特定の者またはその身近な者(配偶者や親族など)に対して行われる以下の2つの行為を「位置情報無承諾取得等」と規定しています。

GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為(1号)

相手方の承諾を得ないで、GPS機器等を用いて位置情報を取得することです。

具体例は、下記のとおりです。

GPS機器等を用いて位置情報を取得する行為の具体例
  • 相手方の承諾を得ることなく、相手方の車両や所持している物にGPS機器等を取り付け、相手方の位置情報をスマートフォン等で受信する。
  • 相手方のスマートフォン等を勝手に操作し、記録されている位置情報を画面上に表示させて盗み見る。
  • 相手方のスマートフォンに位置情報を共有するアプリケーションを勝手にインストールして、そのスマートフォンの位置情報を取得する。

GPS機器等を取り付ける行為等(2号)

相手方の承諾を得ないで、相手方の所持する物にGPS機器等を取り付けるなどすることです。

具体例は、下記のとおりです。

GPS機器等を取り付ける行為等の具体例
  • 相手方の使用・乗車する自動車の底部にGPS機器等をガムテープで貼り付ける。
  • プレゼントの内部にGPS機器等を取り付けて相手方に直接手渡したり、郵便等で送付したりする。
  • 相手方の所持するカバン等にGPS機器等を差し入れる。

警告および禁止命令等

それぞれについて見てみましょう。

警告

警察本部長等は、警告を求める旨の申し出を受けた場合に、つきまとい等または位置情報無承諾取得等をして相手方に不安を覚えさせる行為(以下「法3条違反行為」といいます)があり、かつ、更に反復のおそれがあると認めるときには、当該行為をした者に対し、更に反復して当該行為をしてはならない旨を警告することができます(4条)。 

警告は行政指導で、行為者に義務を課したり、その権利を制限するような法律上の拘束力はありません。

禁止命令等

公安委員会は、法3条違反行為があった場合に、行為者が更に反復して当該行為を行うおそれがあると認めるときは、相手方の申し出または職権で、更に反復して当該行為をしてはならない旨の命令を発することができます(5条)。 

禁止命令等は行政処分で、行為者に義務を課し、権利を制限する行政上の不利益処分です。

ストーカー規制法違反の罰則

ストーカー規制法違反の罰則は、下記表の番号、行為者、罰条に対応するとおりです。

なお、罰則に記載されている懲役は、令和7年(2025年)6月1日(改正刑法施行日)から「拘禁刑」に表記が変更されます。

番号行為者罰条罰則
ストーカー行為をした者18条1年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金
禁止命令等に違反してストーカー行為をした者19条1項2年以下の懲役(拘禁刑)または200万円以下の罰金
②のほか、禁止命令等に違反してつきまとい等または位置情報無承諾取得等をすることにより、ストーカー行為をした者19条2項2年以下の懲役(拘禁刑)または200万円以下の罰金
②・③のほか、禁止命令等に違反した者20条6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金
番号
行為者ストーカー行為をした者
罰条18条
罰則1年以下の懲役(拘禁刑)または100万円以下の罰金
番号
行為者禁止命令等に違反してストーカー行為をした者
罰条19条1項
罰則2年以下の懲役(拘禁刑)または200万円以下の罰金
番号
行為者②のほか、禁止命令等に違反してつきまとい等または位置情報無承諾取得等をすることにより、ストーカー行為をした者
罰条19条2項
罰則2年以下の懲役(拘禁刑)または200万円以下の罰金
番号
行為者②・③のほか、禁止命令等に違反した者
罰条20条
罰則6か月以下の懲役(拘禁刑)または50万円以下の罰金

よくある事例

ストーカー規制法違反でよくある事例は、以下のとおりです。

なお、下記の政令とは、ストーカー行為等の規制等に関する法律施行令(以下「施行令」といいます)のことです。

法2条1項5号の電子メールの送信等のケース

この場合の電子メールには、パソコンや携帯端末によるEメールに加えて、ウェブメールサービスを利用したものも含まれます。また、携帯電話などによるSMS(ショートメッセージサービス)や、電話番号を用いて通信文などを送受信するSNSのメッセージ機能も対象となります。

法2条3項1号の規制の対象となる位置情報を「政令で定める方法」により取得するケース

以下のような行為が、規制の対象となる、位置情報を政令で定める方法により取得する場合にあたります。

規制の対象となる行為
  • 相手方のスマートフォンに記録されている当該スマートフォンの位置情報をその画面に表示させて盗み見る行為(施行令2条1号)
  • 相手方の所持するスマートフォンに記録されたその位置情報データを、当該スマートフォンにメモリーカードを接続してコピーする行為(施行令2条2号)
  • 相手方の所持するスマートフォンにインストールされたアプリケーションにより送信された当該スマートフォンの位置情報データを、行為者のスマートフォンにインストールされた同一のアプリケーションにより受信する行為(施行令2条3号)

法2条3項2号の移動に伴いGPS機器等を移動し得る状態にする行為として「政令で定める行為」をするケース

以下のような行為が、政令で定める対象行為に該当します。

政令で定める対象行為
  • 相手方の自動車の収納ボックスにGPS機器等を仕掛ける行為(施行令3条1号)
  • 相手方のカバンのポケットにGPS機器等を入れる行為(施行令3条1号)
  • GPS機器等を入れたバッグを相手方に直接手渡したり、送付したりする行為(施行令3条2号)
  • 相手方の利用している社用車やタクシー等にGPS機器等を取り付けたり、同車の収納ボックスにGPS機器等を入れたりする行為(施行令3条3号)

なお、取り付けの対象となる車両としては、GPS機器等が相手方とともに移動し得る状態になることを想定し、自動車、原動機付き自転車、自転車、身体障害者用の車椅子および歩行補助車が規定されています(施行令3条3号)。

まとめ

ストーカー規制法違反で逮捕された場合、不安や疑問が募ることと思います。被疑者の早期釈放や不起訴を目指すためには、できるだけ早く弁護士に相談することが重要です。

ストーカー行為は、次第にエスカレートして、凶悪な犯罪に発展するおそれがあります。ストーカー行為は決して軽視すべきではありません。

弁護士は、事件の内容に応じた最適な戦略を立て、捜査機関や裁判所に対して適切に働きかけます。経験豊富な弁護士であれば、起訴・不起訴の見通しについても具体的なアドバイスを受けることができ、被疑者に有利な結果を引き出す可能性が高まります。ストーカー規制法違反でお困りの際は、ぜひ当事務所にご相談ください。

刑事事件でお困りの方は

当事務所へご相談ください!

当事務所へ
ご相談ください!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次