刑事事件
2026/09/14

性的関係を持った相手から突然お金を要求されたら|警察・被害届を示唆された場合の対応

はじめに

「性的関係を持った相手から、突然お金を払ってほしいと言われた。」
「『お金を払わなければ警察に相談する』というLINEが届いた。」
「『被害届を出す』と言われ、示談金としてまとまった金額を要求されている。」

このような状況になれば、どう対応すればよいのか分からず、大きな不安を感じるでしょう。
特に近年では、マッチングアプリやSNSなどをきっかけに知り合った相手と初めて会った当日に性的関係を持ち、その後になって双方の認識の違いが問題となるケースがあります。
その中には、相手から「同意していなかった」「本当は嫌だった」などと言われ、その後、慰謝料や示談金などの名目で金銭を要求されるケースもあります。
当事務所にも、マッチングアプリやSNSなどで知り合った相手と性的関係を持った後、「同意していなかった」「警察に相談する」などと言われ、金銭を要求されているというご相談が寄せられることがあります。
このような場合、 「お金を払えば警察には行かないのではないか。」 「早く終わらせたいので、要求された金額を払ってしまおう。」 と考える方もいるでしょう。
しかし、事実関係を十分に確認しないまま金銭を支払ったり、謝罪文や示談書に署名したりすることはおすすめできません。
相手が何を理由として金銭を求めているのか、どのような条件が提示されているのか、また、支払いや合意がその後の刑事事件・民事事件にどのような影響を及ぼす可能性があるのかを検討する必要があります。
一方で、相手から「警察に行く」と言われながら金銭を要求されたからといって、直ちに相手の行為が恐喝罪に当たるわけでもありません。
本記事では、性的関係を持った相手から突然金銭を要求された場合に確認すべきことや、「警察へ相談する」「被害届を出す」などと言われた場合の対応について、刑事事件を取り扱う弁護士が解説します。
刑事事件でお困りの方は
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性的関係の後に金銭を要求されたら、まず何を確認すべきか

突然金銭を要求されると、どうしても要求された金額に目が向きがちです。
しかし、まず確認すべきなのは、「いくら要求されているか」だけではなく、相手が何を理由として金銭を求めているのかという点です。
例えば、
  • 「性的行為に同意していなかった」と主張している
  • 精神的苦痛について慰謝料を求めている
  • 「示談金」として一定額を提示している
  • 「払わなければ警察へ相談する」と言っている
  • 「支払わなければ被害届を出す」と言っている
  • 支払期限や振込先まで指定している
など、状況によって要求の内容は異なります。
また、金銭要求がLINEやマッチングアプリ内のメッセージ、SNSのDMなどで行われている場合には、そのやり取りが重要な資料となることがあります。
まずは、相手の要求内容を正確に把握するとともに、相手と知り合ってから性的関係を持つまでの経緯、その後のやり取り、いつからどのような理由で金銭を要求されるようになったのかを整理することが大切です。

金銭を要求されたからといって直ちに「恐喝」とは限らない

「お金を払わなければ警察へ行くと言われた。これは恐喝ではないか。」 と考える方もいるでしょう。
しかし、警察への相談を示唆しながら金銭を要求されたという事情だけで、直ちに恐喝罪が成立すると判断することはできません。
性的被害を受けたと考えている人が警察へ被害を申告すること自体は当然に違法ではありません。また、その被害について損害賠償や示談として金銭を求めることも、それだけで恐喝になるわけではありません。
一方、金銭を支払わせる目的で相手を畏怖させるような害悪を告知し、その要求方法などが正当な権利行使として許容される範囲を超える場合には、恐喝罪等の成否が問題となることがあります。
例えば、 「金を払わなければ会社に性的関係のことを全部話す。」 「払わなければ家族にばらす。」 などと告げて金銭を要求している場合には、その具体的な言動や要求の経緯、要求額などを踏まえた検討が必要です。
したがって、 「これは恐喝だから絶対に払わない。」 「逆にこちらから警察へ行く。」 などと直ちに自己判断することはおすすめできません。
まずは相手とのメッセージなどを保存し、どのような理由・方法によって金銭が要求されているのかを確認する必要があります。

「払わなければ警察に行く」と言われた場合

性的関係を持った後、 「○万円払わなければ警察へ相談する。」 「支払わないのであれば被害届を出す。」 などと言われることがあります。
このようなメッセージを受け取れば、 「本当に警察へ行くのだろうか。」 「警察へ行かれる前に払った方がよいのではないか。」 と焦ってしまう方もいるでしょう。
しかし、相手が実際に警察へ相談するかどうかを確実に予測することはできません。
また、要求された金銭を支払ったからといって、それだけで相手が警察へ相談しなくなるわけでも、刑事事件になる可能性がなくなるわけでもありません。
重要なのは、相手の要求に対して感情的に反応するのではなく、これまでの経緯と現在の要求内容を整理した上で、どのような対応を取るべきか検討することです。

要求された金額をすぐに支払ってもよいのか

「100万円を要求されているが、それで終わるのであれば払ってしまいたい。」
「金額の問題ではないので、とにかく早く解決したい。」

このように考える方もいます。
しかし、相手から提示された金額をそのまま支払う前に、少なくとも、
  • 何についての支払いなのか
  • 支払うことで何が解決されるのか
  • 相手との間でどのような合意をするのか
  • 支払い後に追加請求される可能性はないか
  • 警察への相談や被害届についてどのような取扱いとなるのか
などを確認する必要があります。
単に相手の指定口座へ金銭を振り込んだだけでは、その後の法律関係がどのように整理されたのか明確にならない場合があります。
また、事実関係に争いがある場合には、金銭を支払ったという事実や、その際に送ったメッセージ、謝罪文などが、その後の刑事手続や民事手続においてどのような意味を持つ可能性があるのかについても検討する必要があります。
金銭を支払うこと自体よりも、何を解決するための支払いなのか、その結果として双方がどのような合意をするのかを整理することが重要です。

「示談金を払えば被害届を出さない」と言われた場合

相手から、 「示談金を払えば被害届は出さない。」 と言われる場合があります。
ここで注意したいのは、相手が「示談金」という言葉を使っているからといって、提示された金額を支払えば刑事事件についてすべて解決するとは限らないという点です。
特に、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は、被害者の告訴がなければ起訴できない「親告罪」ではありません。
そのため、「被害届を出さない」「被害届を取り下げる」という合意があったとしても、それだけで当然に捜査や起訴ができなくなるわけではありません。
もっとも、刑事事件において被害者との示談が成立していることや、被害者が加害者を許す意思(宥恕)を示していること、処罰を求めない旨の意思を示していることは、捜査機関が処分を判断する際の重要な事情となることがあります。
したがって、刑事事件を念頭に置いた示談では、単に「○○万円を支払う」というだけではなく、示談書の内容を含め、どのような条件で合意するのかを慎重に検討することが重要です。
相手から示談を持ちかけられた場合であっても、自分だけで条件を決めたり、すぐに金銭を支払ったりするのではなく、弁護士へ相談することをおすすめします。

マッチングアプリで知り合った相手から金銭を要求された場合

マッチングアプリをきっかけとして知り合った相手とのトラブルでは、相手について把握している情報が限られていることがあります。
初めて会った当日に食事や飲酒をし、そのままホテルや自宅へ行った場合などでは、後になって双方の認識の違いが問題となるケースがあります。
例えば、 「ホテルへ行った時点ではお互いに同意していると理解していた。」 「性的関係を持った後も普通にLINEをしていた。」 という場合であっても、後日、相手から「性的行為には同意していなかった」などと異なる主張をされることがあります。
もっとも、ホテルへ一緒に行ったことや、その後もLINEをしていたという事情だけで、性的行為についての同意の有無が決まるわけではありません。
マッチングアプリ内でのやり取り、LINE、当日の行動、飲酒状況、性的関係に至るまでの経緯、その後のメッセージなどを含め、事実関係を具体的に整理する必要があります。
また、相手から金銭を要求された場合には、マッチングアプリ内のメッセージを自己判断で削除したり、アカウントを退会したりすることはおすすめできません。
これまでのやり取りが、後に事実関係を確認するための重要な資料となる可能性があるためです。

金銭要求のLINE・DM・メールは削除しない

相手から金銭を要求された場合、そのやり取りは削除せずに保存しておくことが重要です。
例えば、
  • 最初に金銭を要求されたメッセージ
  • 要求された金額
  • 支払期限
  • 振込先
  • 「警察へ相談する」というメッセージ
  • 「被害届を出す」というメッセージ
  • 「会社や家族に話す」というメッセージ
  • 金銭を支払った場合に何をすると説明されているのか
などは、その後の対応を検討する上で重要な資料となる可能性があります。
また、金銭要求が始まった後のメッセージだけではなく、相手と知り合った当初からのやり取りも保存しておいた方がよいでしょう。
一部分だけを切り取るのではなく、マッチングアプリ、LINE、SNSのDMなどについて、可能な限り前後のやり取りを含めて確認できる状態にしておくことが重要です。

自分から金額交渉や謝罪を始めることは慎重に考える

金銭を要求された場合、 「100万円は払えないが、50万円なら払う。」 「いくら払えば警察には行かないのか。」 などと、自分から交渉を始めたくなることがあります。
しかし、事実関係や相手の主張を十分に確認しないまま金額交渉を行うことはおすすめできません。
また、 「警察には行かないでほしい。」 「被害届だけは出さないでほしい。」 「本当に申し訳なかった。」 などと繰り返しメッセージを送ることについても慎重な検討が必要です。
相手とのLINEやDM等のやり取り自体が、その後の捜査や裁判において証拠となる可能性があります。
特に、事実関係に争いがある場合には、不用意な説明や謝罪が、本人の意図とは異なる意味で評価される可能性も否定できません。
早く解決したいという気持ちがあっても、まず現在の状況を整理した上で対応を検討することが重要です。

相手から示談書・合意書・念書への署名を求められた場合

金銭要求とともに、
  • 示談書
  • 合意書
  • 念書
  • 謝罪文
などへの署名を求められる場合があります。
このような書面が提示された場合には、内容を十分に確認せず署名することは避けるべきです。
例えば、 「性的行為について同意がなかったことを認める。」 「無理やり性的行為をしたことを認める。」 「本件について謝罪する。」 「慰謝料として○○円を支払う。」 などの記載がある場合には、その内容が後の刑事事件や民事事件において重要な意味を持つ可能性があります。
特に、事実関係に争いがあるにもかかわらず、早期解決を優先するあまり、自分の認識と異なる事実を認める内容の書面へ安易に署名することは避けるべきです。
また、金銭を支払う条件だけではなく、合意によって何が解決されるのかについても確認する必要があります。
その場で署名するよう求められた場合であっても、まず書面の内容を確認し、必要に応じて弁護士へ相談してください。

相手の弁護士から突然連絡が来た場合

本人からではなく、相手が依頼した弁護士から突然連絡が来ることもあります。
例えば、 「依頼者が性的被害を受けたと主張している。」 「慰謝料として○○万円を請求する。」 といった内容の通知書や内容証明郵便が届く場合があります。
弁護士名義の書面が届くと、焦ってすぐに電話をしたり、書面に書かれた内容をすべて認めるような回答をしたりする方もいます。
しかし、まずは相手がどのような事実を主張し、何を根拠として、何を求めているのかを確認することが重要です。
回答期限が記載されている場合には、その期限も確認しましょう。
相手方に弁護士が付いている場合には、自分だけで相手方代理人と交渉を始める前に、ご自身も弁護士へ相談した上で対応を検討することをおすすめします。

「会社に言う」「家族に知らせる」と言われた場合

金銭要求とともに、 「払わなければ会社へ連絡する。」 「家族に全部話す。」 などと言われるケースもあります。
特に、会社経営者や役員、医師など社会的信用が重要となる立場にある方にとっては、勤務先や家族へ知られることへの不安から、要求された金額をすぐに支払いたいと考えることもあるでしょう。
しかし、このような場合も焦って対応することはおすすめできません。
どのような内容のメッセージが届いているのかを保存し、金銭の要求と会社・家族等への連絡がどのように結び付けられているのかを確認することが重要です。
前述したとおり、被害を主張して損害賠償を求めること自体と、勤務先や家族への暴露などを利用して金銭を要求することとは、法的な評価が異なる場合があります。
具体的な言動や要求方法によっては恐喝罪等の成否が問題となる可能性もあるため、早い段階で弁護士へ相談することを検討してください。

警察からまだ連絡が来ていなくても弁護士へ相談できる

相手から、 「警察へ相談する。」 「被害届を出す。」 と言われていても、現時点では警察から何も連絡が来ていない場合があります。
そのため、 「本当に警察から連絡が来てから弁護士へ相談すればよいのではないか。」 と考える方もいるでしょう。
しかし、警察から連絡が来る前の段階であっても、弁護士へ相談することは可能です。
当事務所でも、警察から連絡を受ける前の段階で、相手方から金銭を要求され、今後どのように対応すべきかというご相談を受けることがあります。
特に、
  • 相手から具体的な金額を要求されている
  • 支払期限を設定されている
  • 警察への相談や被害届について言及されている
  • 示談書などへの署名を求められている
  • 相手の弁護士から通知書が届いている
  • 会社や家族への連絡を示唆されている
といった事情がある場合には、警察から連絡が来るまで何もしないのではなく、早い段階で事実関係を整理し、対応方針を検討することに意味があります。

弁護士へ相談すると何をしてもらえるのか

性的関係を持った相手から金銭を要求されている場合、弁護士へ相談することで、まず現在の状況と法的な問題点を整理することができます。
例えば、
  • 相手と知り合ってから性的関係に至るまでの経緯
  • 相手が現在どのような主張をしているのか
  • 要求されている金額や条件
  • LINEやマッチングアプリ内のメッセージの内容
  • 警察や被害届についてどのように言われているのか
  • 示談書などが提示されているか
  • 既に相手へどのような回答をしているのか
などを確認します。
その上で、事案に応じて、相手方への回答、金銭請求に対する交渉、示談条件・示談書の検討、警察から連絡を受けた場合を見据えた対応などを検討することになります。
事実関係に争いがある場合には、相手方の主張だけではなく、マッチングアプリやLINE等のやり取り、当日の客観的な状況、その後の双方の行動など、現在残っている資料を確認することも重要です。
「金額的には払えるから払ってしまおう。」 と考える場合であっても、その支払いによって何が解決されるのかが整理されていなければ、問題が終わるとは限りません。
早期解決を希望する場合だからこそ、支払いをする前に状況を整理することが重要です。

よくある質問

Q 「お金を払わなければ警察に行く」と言われました。恐喝ではないのでしょうか。

その言葉だけで直ちに恐喝罪に当たると判断することはできません。
性的被害を訴えて警察へ相談することや、被害について損害賠償を求めること自体が当然に違法になるわけではありません。
一方、金銭を支払わせるために会社や家族への暴露などを告げて畏怖させるなど、その具体的な要求方法によっては恐喝罪等が問題となる場合があります。
相手とのやり取りを保存した上で、具体的な内容について弁護士へ相談することをおすすめします。

Q 要求された金額を払えば被害届は出されませんか。

金銭を支払ったという事実だけで、当然に被害届が提出されなくなるわけではありません。
示談をするのであれば、金額だけでなく、何について、どのような条件で解決するのかを明確にする必要があります。
また、不同意性交等罪や不同意わいせつ罪は非親告罪であるため、被害届を出さない、あるいは取り下げるという事情だけで当然に捜査や起訴ができなくなるものでもありません。

Q 相手から100万円を要求されています。妥当な金額でしょうか。

金額の妥当性は、事案の内容や相手の主張、具体的な事実関係などによって異なります。
金額だけを見て判断するのではなく、まず何を理由とする請求なのか、その金額を支払うことで何を解決するのかを確認する必要があります。

Q 相手から示談書が送られてきました。署名してもよいでしょうか。

内容を十分に確認しないまま署名することはおすすめできません。
特に、事実関係に争いがあるにもかかわらず、性的行為について同意がなかったことなどを認める記載がある場合には注意が必要です。
署名前に弁護士へ相談することを検討してください。

Q マッチングアプリで知り合った相手です。アカウントを削除してもよいでしょうか。

自己判断でアカウントを削除したり、退会したりすることはおすすめできません。
マッチングアプリ内のやり取りが、後に事実関係を確認するための重要な資料となる可能性があります。

Q まだ警察からは何も連絡がありません。相談するのは早すぎませんか。

早すぎるとは限りません。
相手から具体的な金銭要求を受け、警察への相談や被害届の提出を示唆されている場合には、警察から連絡が来る前の段階で事実関係や手元の資料を整理し、対応方針を検討することが有益な場合があります。

まとめ

性的関係を持った相手から突然金銭を要求され、 「払わなければ警察へ相談する。」 「被害届を出す。」 などと言われれば、早く問題を終わらせたいという気持ちから、要求された金額をすぐに支払いたくなることもあるでしょう。
しかし、金銭を要求されたからといって、直ちに相手の要求が不当であるとも、反対に直ちに支払うべきであるとも判断できません。
まず、
  • 相手が何を理由として金銭を求めているのか
  • 具体的にいくら要求されているのか
  • 警察や被害届についてどのように言われているのか
  • 金銭を支払った場合に何を合意するのか
  • LINEやマッチングアプリ内にどのようなやり取りが残っているのか
  • 既に自分が相手へどのような回答をしているのか
などを整理することが重要です。
また、焦って金銭を支払ったり、自分から金額交渉を始めたり、自分の認識と異なる内容の謝罪文・示談書へ署名したりすることは避けるべきです。
LINE、SNS、マッチングアプリ等のメッセージについても、後に重要な資料となる可能性があるため、自己判断で削除しないようにしてください。
当事務所でも、マッチングアプリやSNSなどで知り合った相手と性的関係を持った後、相手から金銭を要求され、「警察へ相談する」「被害届を出す」などと言われた段階でご相談を受けることがあります。
警察からまだ連絡が来ていない場合であっても、相手から具体的な金銭を要求されている場合や、「警察へ相談する」「被害届を出す」「会社や家族へ連絡する」などと言われている場合には、金銭を支払ったり、相手との交渉を進めたりする前に、できるだけ早い段階で弁護士へ相談し、事実関係と今後の対応を整理することをおすすめします。
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