刑事事件
2026/09/07

大麻の営利目的所持・譲渡とは|量が多いだけで営利目的になる?実務上のポイントを弁護士が解説

はじめに

「自宅からかなりの量の大麻が見つかりました。営利目的を疑われています。」
「友人に大麻を渡したことはありますが、販売していたわけではありません。」
「警察から、スマートフォンの送金履歴について聞かれています。」
「大麻を売ったことがあります。初犯でも実刑になりますか。」

大麻事件では、単純な所持や施用だけでなく、営利目的での所持や譲渡が問題となることがあります。
営利目的が認定される事件は、自己使用目的の単純所持などと比較して、一般に重い刑事責任が問題となります。
そのため、家宅捜索で比較的多量の大麻が発見された方の中には、 「これだけ量が多ければ、もう営利目的になるのでしょうか。」 と不安になる方もいます。
しかし、営利目的の有無は、押収された大麻の量だけで機械的に決まるものではありません。
実際の薬物事件では、
  • 大麻の量
  • 保管・小分けの状況
  • 実際の譲渡記録
  • 送金履歴
  • SNSやTelegram等の通信
  • 帳簿やメモ
  • 関係者の供述
  • 取引の回数・期間
  • 捜査機関による内偵結果
など、さまざまな証拠が問題となります。
本記事では、大麻事件における「営利目的」とは何か、単純所持や単純譲渡と何が違うのか、どのような証拠から営利目的が判断されるのか、そして営利目的を疑われた場合の刑事手続について解説します。
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大麻事件における「営利目的」とは

営利目的という言葉から、 「大麻を売って生活しているような人だけが対象になる。」 と思われることがあります。
しかし、必ずしもそのような場合に限られません。
刑事事件における営利目的は、一般的には、薬物の取引によって財産上の利益を得ることを目的としていたかという観点から問題となります。 したがって、
  • 本業として販売していた
  • 大規模な組織に所属していた
といった事情がなければ営利目的にならない、というわけではありません。
一方で、他人に大麻を渡したという事実があるだけで、当然に営利目的になるわけでもありません。
そのため、 「譲渡したのか」と「営利目的で譲渡したのか」は分けて考える必要があります。

無料で友人に渡しても譲渡になることがある

例えば、 「自分が持っていた大麻を友人に少し分けただけです。」 というケースがあります。
代金を受け取っていなかったとしても、大麻を他人へ渡した行為について譲渡が問題となることがあります。
したがって、 「お金をもらっていないから犯罪ではない。」 とはいえません。
もっとも、無償で友人に渡した場合と、利益を得る目的で反復して販売していた場合とでは、事件の評価が異なります。
そのため、譲渡事件では、
  • 誰に渡したのか
  • 何回渡したのか
  • どの程度の量だったのか
  • 金銭の授受があったのか
  • 利益を得る目的があったのか
などを具体的に確認する必要があります。

大麻の量が多ければ営利目的になるのか

ここは、大麻事件でよく問題となる点です。
自宅などから多量の大麻が発見された場合、捜査機関から営利目的を疑われることがあります。
確かに、押収量は重要な事情の一つです。
自己使用としては不自然なほど大量であれば、 「なぜこれだけの量を保管していたのか。」 という問題が生じます。
しかし、 押収量が多いという事情だけから、当然に営利目的が認定されるわけではありません。
例えば、
  • 実際に販売していたのか
  • 誰に販売していたのか
  • 代金を受け取っていたのか
  • 反復して取引していたのか
  • 販売に関する通信が存在するのか
など、他の証拠との関係が重要になります。
したがって、 「○グラム以上なら営利目的」 といった単純な基準で判断できるものではありません。

実際の譲渡記録が重要になる

営利目的の譲渡事件では、実際に大麻を譲渡したことを示す記録が重要となります。
例えば、
  • いつ
  • 誰に
  • どの程度の量を
  • いくらで
  • 何回
譲渡したのかという点です。
捜査機関がこれらを裏付ける証拠をどの程度持っているかによって、事件の見通しは変わります。
単に、 「大麻をたくさん持っていた。」 という事実と、 「複数人に継続して販売していたことが具体的な証拠によって確認されている。」 という事件では、証拠関係が大きく異なります。

スマートフォンの通信履歴が重要な証拠になることがある

現在の薬物事件では、スマートフォンが重要な証拠となることがあります。
例えば、
  • LINE等のメッセージ
  • SNSのDM
  • Telegram等の通信
  • 写真
  • 取引に関するメモ
  • 連絡先
などです。
通信内容から、

「○個ほしい。」
「いくらですか。」
「いつもの場所で。」

など、取引をうかがわせるやり取りが確認される場合があります。
もっとも、一部のメッセージだけを取り出して意味を判断できるとは限りません。
前後の会話、相手方との関係、実際の金銭の移動、他の証拠なども含めて検討する必要があります。

送金履歴も重要になる

薬物取引では、現金だけではなく、振込みや各種送金手段が利用される場合があります。
そのため、
  • 銀行口座
  • キャッシュレス決済
  • その他の送金記録
などが問題となることがあります。
例えば、特定の人物から繰り返し一定額の送金を受け、その前後に大麻に関する通信が存在している場合には、取引を裏付ける資料として捜査される可能性があります。
一方で、 送金があったという事実だけで、それが大麻の代金であると当然に決まるわけではありません。
送金の趣旨、通信内容、関係者の供述その他の証拠を含めて判断されることになります。

帳簿やメモが押収されることもある

営利目的の薬物事件では、帳簿やメモが重要な証拠となる場合があります。
例えば、
  • 人名
  • 金額
  • 数量
  • 日付
  • 入金状況
などが記載された資料です。
それが実際の大麻取引を記録したものと認定できる場合には、取引の回数や規模を立証する資料となることがあります。
スマートフォンのメモ機能などに記録されている場合もあります。

計量器や小分け袋があると営利目的になるのか

家宅捜索で、
  • 電子秤
  • 小分け袋
  • 包装資材
などが発見されることがあります。
これらも、営利目的を検討する際の一事情となることがあります。
もっとも、 計量器がある、小分け袋があるというだけで、当然に営利目的が認定されるわけではありません。
それぞれの物について、
  • 何のために使用していたのか
  • 大麻との関係があるのか
  • 実際の販売記録があるのか
  • 通信履歴等と符合するのか
などを検討する必要があります。
刑事事件では、一つの事情だけを見るのではなく、複数の証拠を組み合わせて事実が認定されることがあります。

麻薬取締部などによる内偵捜査が行われていることもある

大麻の譲渡事件では、被疑者が家宅捜索を受ける前から捜査が進んでいる場合があります。
例えば、
  • 他の薬物事件から名前が出た
  • 購入者や関係者が供述した
  • 通信や取引に関する情報が得られた
  • 捜査機関が一定期間行動を確認していた
などです。
そのため、家宅捜索を受けた本人が、 「今日初めて警察に知られた。」 と思っていても、実際にはそれ以前から一定の捜査が行われていたという場合があります。
営利目的事件では、捜査機関が家宅捜索前の段階でどの程度の証拠を収集していたのかも重要になります。

「自分で使うために持っていた」という説明だけで足りるのか

大量の大麻を所持していた場合、 「全部自分で使うつもりでした。」 と説明するケースがあります。
しかし、本人がそう説明したからといって、当然に自己使用目的と認められるわけではありません。
捜査機関は、
  • 所持量
  • 使用頻度
  • 保管方法
  • 小分け状況
  • 通信履歴
  • 送金履歴
  • 実際の譲渡記録
  • 関係者の供述
などと本人の説明が整合するかを検討します。
反対に、量が多いという理由だけで本人の説明が当然に排斥されるわけでもありません。
重要なのは、本人の供述と客観的証拠がどのように対応しているのかです。

関係者の供述も重要になる

大麻の譲渡事件では、 「この人から買いました。」 という購入者等の供述が証拠となる場合があります。
複数の関係者が同じ人物から大麻を購入したと供述すれば、反復した譲渡を疑う材料となります。
もっとも、関係者の供述についても、
  • 具体性
  • 一貫性
  • 客観的証拠との整合性
  • 通信履歴との整合性
  • 金銭の移動との整合性
などを確認する必要があります。
関係者がそう話しているというだけで、供述内容のすべてが当然に正しいと決まるわけではありません。

単発の譲渡と反復継続的な販売では評価が異なる

例えば、 「友人から頼まれて一度だけ渡した。」 という事件と、 「一定期間、多数の人物へ繰り返し販売していた。」 という事件では、評価が異なります。
特に営利目的事件では、
  • 犯行期間
  • 譲渡回数
  • 譲渡人数
  • 売上
  • 利益
  • 組織性
などが重要となります。
したがって、営利目的を認める事件であっても、具体的にどの範囲の譲渡行為が証拠によって裏付けられているのかを確認することが重要です。

営利目的を認めたら必ず実刑になるのか

営利目的の大麻事件では、単純所持や単純施用と比較して、実刑のリスクは高くなります。
もっとも、 営利目的が認定されたからといって、必ず実刑になるとは限りません。
量刑では、
  • 初犯か
  • 前科前歴
  • 犯行期間
  • 譲渡回数
  • 取引規模
  • 得た利益
  • 組織性
  • 本人の役割
  • 反省状況
  • 再発防止策
  • 家族等の支援
などが問題となります。
そのため、 「営利目的だからもう執行猶予は無理だ。」 と自己判断する必要はありません。
一方で、営利目的事件は事案による差が大きく、単純所持事件と同じ感覚で見通しを判断することも適切ではありません。
具体的な証拠と事件規模を確認する必要があります。

営利目的を争う事件では何を確認するのか

営利目的を否認する事件では、 「売っていません。」 と述べるだけでは十分ではありません。
例えば、
  • 実際の譲渡記録が存在するのか
  • 金銭の授受があるのか
  • 送金の趣旨は何か
  • 通信内容は何を意味するのか
  • 帳簿とされるものは本当に取引記録なのか
  • 関係者は具体的に何を供述しているのか
  • 捜査機関がどのような内偵資料を持っているのか
などを検討する必要があります。
また、本人が営利目的を否認していても、客観的証拠と明らかに矛盾する説明を繰り返せば、その供述の信用性自体が問題となることがあります。
したがって、否認事件では、早い段階で証拠関係を想定しながら慎重に供述方針を検討することが重要です。

事実を認める事件では情状弁護も重要

実際に営利目的で大麻を譲渡していたことを認める場合には、事件内容を適切に整理するとともに、再犯防止へ向けた対応も重要となります。
薬物事件では、例えば、
  • 薬物専門医療機関への通院
  • 薬物関係者との関係の見直し
  • 家族による監督
  • 安定した生活環境
  • 仕事の継続
  • 本人の反省
などが問題となります。
特に薬物使用を伴う事件では、専門医療機関へ実際に通院し、治療を継続していることを刑事裁判で示す場合があります。
重要なのは、 「今後気を付けます」という言葉だけではなく、事件後に具体的な行動を始めていること です。

家族による支援も重要

営利目的事件であっても、本人の今後の生活環境は量刑上重要となる場合があります。
例えば、
  • 家族と同居する
  • 家族が生活状況を確認する
  • 通院を支援する
  • 金銭管理を行う
  • 薬物関係の交友関係から離れるよう支援する
などです。
刑事裁判では、親族が情状証人として出廷し、今後の監督について証言することもあります。

営利目的事件でやってはいけない行動

取引相手へ連絡する

捜査を受けていることが分かった後に、 「警察に何を話したのか。」 「自分の名前を出したのか。」 などと取引相手へ確認することは避けるべきです。
証拠隠滅や供述への働きかけを疑われる可能性があります。

関係者と供述を合わせる

「こういう説明に統一しよう。」 などと供述を合わせることも避けるべきです。
複数人が関係する事件では、それぞれの供述内容や客観的証拠との整合性が確認されます。

第三者に証拠を処分させる

別の場所にある薬物や関係資料等について、友人や家族へ処分を依頼することも避けるべきです。
本人が直接行わなくても問題となる可能性があります。

自己判断で事件を軽く見積もる

「一人にしか売っていないから大丈夫。」 「初犯だから実刑にはならない。」 などと自己判断することも危険です。
営利目的事件では、本人が把握していない証拠を捜査機関が既に収集していることがあります。

逮捕・勾留される可能性

営利目的の所持・譲渡事件では、身柄拘束を伴って捜査されることがあります。
特に、
  • 複数の取引相手がいる
  • 関係者が多数いる
  • 証拠隠滅が疑われる
  • 反復継続した取引が疑われる
などの場合には、関係者への働きかけ等が問題となることがあります。
また、逮捕・勾留後に接見等禁止決定が付され、家族等との面会が制限されるケースもあります。
その場合には、事案によって、
  • 勾留決定に対する対応
  • 接見等禁止の一部解除
  • 起訴後の保釈請求
などを検討することになります。

よくある質問

Q 大麻を大量に持っていたら営利目的になりますか。

量は重要な事情の一つですが、量だけで当然に営利目的が決まるわけではありません。
実際の譲渡記録、通信履歴、送金履歴、保管状況、関係者の供述などを含めて判断されます。

Q 友人に無料で大麻を渡しただけでも犯罪ですか。

無償であっても譲渡が問題となる可能性があります。
ただし、無償の単純譲渡と営利目的の譲渡は区別して検討する必要があります。

Q 電子秤が見つかったら営利目的になりますか。

電子秤の存在は一事情となり得ますが、それだけで営利目的が決まるわけではありません。
他の証拠との関係が重要です。

Q 送金履歴だけで大麻を販売したことになりますか。

送金履歴は重要な証拠となる場合がありますが、その送金が何のためのものだったのかを他の証拠と併せて検討する必要があります。

Q スマートフォンから過去の取引が見つかったらどうなりますか。

内容によっては、当初の事件以外の譲渡等について捜査が広がる可能性があります。

Q 営利目的なら初犯でも実刑ですか。

営利目的事件は単純所持等より厳しく評価されますが、営利目的だから必ず実刑になるとは限りません。
事件規模、取引回数、利益、前科前歴、再発防止策等によって判断されます。

Q 家宅捜索で押収された量より、過去の売買も調べられますか。

調べられることがあります。
通信履歴、送金履歴、関係者の供述、帳簿、内偵資料などから過去の譲渡について捜査が行われる場合があります。

まとめ

大麻事件では、営利目的の有無によって事件の評価が大きく変わることがあります。
もっとも、 「大量の大麻が見つかった=営利目的」 「電子秤がある=営利目的」 「送金を受けている=大麻の販売代金」 と、一つの事情だけから当然に結論が決まるわけではありません。
営利目的の所持・譲渡事件では、
  • 大麻の量
  • 保管・小分け状況
  • 実際の譲渡記録
  • SNSやTelegram等の通信
  • 送金履歴
  • 帳簿
  • 関係者の供述
  • 取引回数・期間
  • 捜査機関による内偵資料
などを総合して判断されます。
特に重要なのは、実際にどのような譲渡が行われ、その事実について捜査機関がどの程度の客観的証拠を持っているのかという点です。
営利目的を争う事件では、本人の説明だけでなく、客観的証拠との整合性を慎重に検討する必要があります。
一方、事実を認める事件では、営利目的だからといって直ちに実刑と決めつけるのではなく、
  • 犯行期間
  • 取引回数
  • 取引規模
  • 得た利益
  • 前科前歴
  • 本人の役割
など事件そのものを正確に整理するとともに、
  • 薬物専門医療機関への通院
  • 家族による監督・支援
  • 薬物関係の生活環境の見直し
  • 安定した生活の確保
など、再犯防止に向けた具体的な取組みを進めることも重要です。
また、捜査開始後に取引相手へ連絡したり、関係者と供述を合わせたり、第三者を介して証拠を処分したりすることは避けるべきです。
営利目的の大麻事件は、単純所持事件と比較して、証拠関係も量刑判断も複雑になりやすい事件です。
大麻の営利目的所持・譲渡を疑われている場合、スマートフォンや帳簿等を押収された場合、過去の取引まで捜査されている可能性がある場合には、できるだけ早い段階で薬物事件を扱う弁護士へ相談することをおすすめします。
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