刑事事件
2026/09/03

大麻事件の初犯は不起訴・執行猶予になる?|所持・施用・譲渡ごとの処分の見通しを弁護士が解説

はじめに

大麻事件についてご相談を受ける中で、
  • 「初犯ですが、実刑になりますか。」
  • 「大麻を少し持っていただけですが、不起訴になりますか。」
  • 「一度吸っただけでも前科が付くのでしょうか。」
  • 「友人へ少し渡したことがあります。所持だけの場合より重くなりますか。」
  • 「執行猶予を取るために、今からできることはありますか。」
といったご質問を多くいただきます。
特に初めて刑事事件の捜査を受ける方にとって、 不起訴、罰金、執行猶予、実刑 という言葉の違いが分からず、 「逮捕されたら刑務所へ行くのではないか。」 と強い不安を感じることも少なくありません。
もっとも、大麻事件の処分は、
  • 所持
  • 施用
  • 譲受
  • 譲渡
  • 営利目的
  • 栽培
など、どの犯罪が問題となっているかによって大きく異なります。
また、
  • 初犯かどうか
  • 大麻の量
  • 使用・取引の回数
  • 営利目的の有無
  • 前科前歴
  • 本人の反省状況
  • 再発防止への取組み
  • 家族等の支援
なども重要になります。
本記事では、初犯の大麻事件について、不起訴・執行猶予・実刑の違いや、所持・施用・譲渡など事件類型ごとの処分の考え方、そして執行猶予を目指すために重要となる事情について解説します。
刑事事件でお困りの方は
当事務所へご相談ください!

まず「不起訴」と「執行猶予」は全く違う

相談者の方から、 「不起訴と執行猶予は同じようなものですか。」 と聞かれることがあります。
しかし、両者は全く異なります。

不起訴

不起訴とは、検察官が刑事裁判を起こさない処分です。
不起訴となれば、
  • 刑事裁判は行われない
  • 有罪判決を受けない
  • 前科は付かない
ということになります。

執行猶予

一方、執行猶予は、裁判で有罪判決を受けた上で、一定期間、刑の執行を猶予する制度です。
つまり、執行猶予付き判決であっても有罪判決であり、前科は付きます。
そのため、 「前科を付けたくない」 という場合には不起訴を目指すことになります。
一方、起訴された事件では、実刑を回避し執行猶予付き判決を得ることが重要な目標となります。

大麻事件だからといって必ず実刑になるわけではない

大麻事件で逮捕されると、 「刑務所へ行くことになるのでしょうか。」 と不安になる方も少なくありません。
しかし、逮捕されたことと実刑になることは同じではありません。
逮捕は捜査段階の身柄拘束です。
最終的な処分や判決は、
  • 犯罪の内容
  • 前科前歴
  • 大麻の量
  • 反復継続性
  • 営利性
  • 再発防止への取組み
などを踏まえて判断されます。
したがって、 「大麻事件で逮捕された=実刑」 と考える必要はありません。

初犯の単純所持事件はどうなるのか

大麻事件で比較的多いのが、自己使用目的の単純所持です。
例えば、
  • 自分で吸うために持っていた
  • 少量を所持していた
  • 他人へ売る目的はなかった
といったケースです。
初犯の単純所持事件では、直ちに実刑となるケースばかりではありません。
もっとも、 「初犯だから不起訴になる」 というわけでもありません。
所持の事実が証拠上明確である場合には、初犯であっても起訴される可能性があります。
その場合には、執行猶予付き判決を目指して弁護活動を行うことになります。

初犯の大麻施用事件はどうなるのか

2024年12月12日の法改正施行により、大麻等の不正な施用についても処罰対象となりました。
そのため現在では、 「持ってはいないが吸った。」 という場合にも刑事事件となる可能性があります。
一方で、初犯の単純な施用事件についても、
  • 施用回数
  • 常習性
  • 所持等の別の犯罪があるか
  • 前科前歴
  • 再発防止策
などによって処分は異なります。
また、施用事件では、 本人が大麻だと認識して摂取したのか という故意の問題が生じるケースもあります。
尿検査等で陽性反応が出たからといって、個々の事件について本人の認識や施用経緯を検討する必要がなくなるわけではありません。
当事務所でも、施用が疑われた事件について、本人が置かれていた状況や摂取に至った可能性を具体的に整理し、不起訴となった事案があります。

大麻を譲渡した場合は単純所持より重く見られることがある

大麻を他人へ渡した場合には、譲渡の問題が生じます。
例えば、
  • 友人へ分けた
  • 一緒に使用するために渡した
  • 代金を受け取らずに譲った
といったケースです。
「お金を取っていないから問題ない。」 と考える方もいますが、無償であっても譲渡が犯罪となる場合があります。
一般的に、自己使用目的での単純所持と比較すると、他人へ薬物を流通させたという点が問題となります。
もっとも、譲渡したというだけで当然に実刑になるわけでもありません。
初犯で、
  • 単発的な譲渡
  • 営利目的がない
  • 反復継続性が低い
  • 再発防止環境が整っている
などの事情がある場合には、執行猶予付き判決を目指して弁護活動を行う余地があります。

「営利目的」が付くと事件の評価は大きく変わる

大麻事件では、 営利目的であったかどうか が非常に重要です。
例えば、
  • 大麻を仕入れて販売していた
  • 利益を得る目的で継続的に譲渡していた
  • 複数人へ反復して販売していた
といった場合には、単純な自己使用目的の事件とは評価が大きく異なります。
もっとも、 大麻の押収量が多いから、それだけで営利目的になるというわけではありません。
実際には、
  • 譲渡記録
  • SNSやTelegram等の通信
  • 送金履歴
  • 帳簿
  • 金銭の授受
  • 取引回数
  • 内偵捜査による証拠
  • 関係者の供述
などを含めて営利目的が問題となります。

営利目的なら必ず実刑になるのか

営利目的が認定される事件は、単純所持や自己使用目的の事件よりも厳しく評価されます。 もっとも、 営利目的が付いたからといって、すべての事件で必ず実刑になるわけではありません。 例えば、
  • 初犯である
  • 取引回数が限定されている
  • 犯行期間が短い
  • 得た利益が限定的である
  • 本人が十分に反省している
  • 薬物関係者との関係を断っている
  • 継続的な治療を開始している
  • 家族等の支援体制が整っている
などの事情が問題となります。
ただし、営利目的事件は事件ごとの差が非常に大きいため、 「この量なら執行猶予」 「この金額なら実刑」 と単純に線引きすることはできません。
個別具体的な証拠関係と量刑事情を丁寧に検討する必要があります。

大麻栽培事件はどうなるのか

大麻事件では、所持や施用だけでなく栽培が問題となるケースもあります。
栽培事件では、
  • 栽培株数
  • 栽培期間
  • 栽培設備
  • 自己使用目的か営利目的か
  • 実際の譲渡歴
  • 反復継続性
などが重要となります。
特に営利目的の栽培事件では、単純所持事件より重く評価される可能性があります。
一方で、栽培事件でも、量だけを見て直ちに処分が決まるわけではありません。
事件の具体的内容と情状を踏まえて判断されます。

初犯なら不起訴になることはあるのか

あります。
もっとも、大麻事件について、 「初犯=不起訴」 と考えるのは適切ではありません。
不起訴となるかどうかは、
  • 犯罪の立証が十分か
  • 本人の故意が認められるか
  • 所持・施用等の事実を認定できるか
  • その他の証拠関係
などによって判断されます。
例えば、所持事件であれば、
  • 本当に本人が大麻の存在を認識していたのか
  • 本人の占有・支配下にあったといえるのか
が問題となることがあります。
施用事件であれば、
  • 本人が大麻だと認識して摂取したのか
などが争点となる場合があります。
したがって、否認事件では、 初犯かどうか以上に、そもそも犯罪を立証できる証拠があるのか が重要です。

自分のものではない大麻が見つかった場合

例えば、
  • 共用の車
  • 会社の車
  • バーなど多数人が出入りする場所
  • 同居人と共用している住居
から大麻が発見されるケースがあります。
この場合、 「その場所から大麻が見つかった。」 というだけで、当然に本人の所持になるとは限りません。
一方、 「自分のものではありません。」 と述べるだけで不起訴になるわけでもありません。
実務では、
  • 発見場所
  • 本人との距離
  • 他の所持品との関係
  • 大麻の存在を認識していたか
  • その場所を誰が管理していたか
  • 同居人・同行者等の供述
  • 通信履歴
などを踏まえて、所持を認定できるかが問題となります。

執行猶予を目指す上で重要な事情

起訴された場合には、実刑を回避し執行猶予付き判決を目指すことが重要となります。
大麻事件の情状弁護では、単に、 「反省しています。」 「もう二度とやりません。」 と述べるだけではなく、具体的な再発防止策を示すことが重要です。

薬物専門医療機関への通院

当事務所では、事案によって、薬物問題を専門的に扱う医療機関等への通院を勧めることがあります。
例えば、
  • 実際に受診した
  • 継続的に通院している
  • 医師等から治療を受けている
  • 今後も治療を継続する予定である
といった事情です。
刑事裁判となった場合には、このような具体的な治療実績を裁判所へ示すことがあります。
「今後通院するつもりです。」 というだけではなく、 既に治療を始めている という事実には意味があります。

家族による支援・監督

家族の存在も重要となることがあります。
例えば、
  • 同居して生活状況を確認する
  • 通院を支援する
  • 薬物関係者との接触を避けるよう支援する
  • 金銭管理を手伝う
  • 定期的に本人と話をする
などです。 親族が裁判へ出廷し、今後の監督について証言するケースもあります。
重要なのは、 「家族が何となく見守ります。」 ではなく、 誰が、どのような方法で、どの程度継続して支援するのかを具体化することです。

薬物関係の交友関係を断つ

薬物事件では、本人が再び同じ環境へ戻ることが再犯リスクにつながる場合があります。
そのため、
  • 大麻の入手先
  • 使用仲間
  • 薬物関係の交友関係
から距離を置くことも重要です。
もっとも、捜査中に関係者へ連絡して、 「もう連絡しない。」 などと告げるべきという意味ではありません。
捜査開始後に薬物関係者へ連絡することは、証拠隠滅や口裏合わせを疑われる可能性があるため、避けるべきです。

仕事や生活環境を安定させる

  • 定職がある
  • 家族と安定した生活をしている
  • 今後も仕事を継続する
  • 規則正しい生活を送る
といった事情も、再犯防止環境を検討する上で意味を持つことがあります。
刑事裁判では、事件だけを見るのではなく、 本人が今後どのような生活を送り、再犯を防止できるのか という観点も重要です。

前科前歴がある場合

前科前歴がある場合には、初犯と比較して処分が厳しくなる可能性があります。
特に、
  • 同種の薬物前科
  • 執行猶予期間中
  • 前回の事件から短期間での再犯
などの場合には、慎重な対応が必要です。
一方で、前科があるから直ちに実刑になると決まるわけでもありません。
  • 前科の内容
  • 前回からの期間
  • 今回の事件内容
  • 再犯に至った経緯
  • 治療状況
  • 家族等の支援
などを踏まえて検討する必要があります。

初犯だから何もしなくてもよいわけではない

これは非常に重要です。 初犯の方の中には、 「初めてだから執行猶予でしょう。」 と考え、起訴後まで特に何も始めない方もいます。
しかし、情状弁護の観点からは、早期に行動を始めることに意味があります。
例えば、
  • 専門医療機関を受診する
  • 家族と再発防止策を話し合う
  • 薬物と関係のある生活環境を見直す
  • 今後の生活計画を具体化する
などです。
裁判になってから形式的に取り組むのではなく、事件後早い段階から継続的に取り組んでいることを示せる方が、説得力を持ちやすくなります。

やってはいけない行動

売人や関係者へ連絡する

捜査開始後に大麻の入手先や共犯者へ連絡することは避けるべきです。
証拠隠滅や口裏合わせを疑われる可能性があります。

第三者を介して証拠を処分する

本人が直接行わなくても、家族や友人等へ依頼して証拠を処分することは問題となり得ます。

事実関係について口裏合わせをする

複数人が関係する事件では、それぞれの供述内容が比較されることがあります。
供述を合わせる行為は避けるべきです。

「初犯だから大丈夫」と何もしない

初犯であることは重要な事情ですが、それだけで処分が決まるわけではありません。
再発防止へ向けた具体的な取組みを早期に始めることが重要です。

よくある質問

Q 大麻の初犯なら不起訴になりますか。

初犯であることだけで不起訴が決まるわけではありません。
犯罪を立証できる証拠があるのか、どのような事件なのかなどによって判断されます。

Q 初犯の単純所持で実刑になることはありますか。

事件の具体的内容によります。
初犯だから絶対に実刑にならないとは言えませんが、前科前歴や量、常習性などを踏まえて処分・量刑が判断されます。

Q 大麻を一回吸っただけでも前科が付きますか。

2024年12月12日以降、不正な大麻の施用自体が処罰対象となっています。
不起訴となれば前科は付きませんが、起訴され有罪判決が確定すれば前科となります。

Q 友人へ無料で大麻を渡しただけでも犯罪になりますか。

無償であっても譲渡が問題となります。
営利目的がなくても、単純所持とは異なる犯罪が成立する可能性があります。

Q 営利目的でも執行猶予になることはありますか。

個別事案によります。
営利目的は厳しく評価される事情ですが、営利目的だから当然に全件実刑になるわけではありません。
犯行態様、取引回数、利益、前科前歴、再発防止策などを含めて判断されます。

Q 執行猶予を取るために病院へ行った方がよいですか。

事案によりますが、薬物使用の問題がある場合には、専門医療機関への相談を検討することがあります。
刑事裁判でも、実際の通院状況や治療継続の見通しを情状資料として提出する場合があります。

まとめ

大麻事件では、 「初犯だから不起訴になる」 あるいは、 「逮捕されたから実刑になる」 という単純なものではありません。
処分や量刑は、
  • 所持
  • 施用
  • 譲渡・譲受
  • 営利目的
  • 栽培
など、どの犯罪が問題となっているのかによって異なります。
また、
  • 初犯か
  • 前科前歴
  • 大麻の量
  • 反復継続性
  • 営利性
  • 犯行の経緯
なども重要です。
否認事件では、そもそも本人の所持や施用を立証できるのかが重要となります。
一方、事実を認めて起訴された事件では、
  • 本人の反省
  • 薬物専門医療機関への継続的な通院
  • 家族による具体的な支援・監督
  • 薬物関係の生活環境の見直し
  • 安定した仕事や生活
などを具体的に示し、再犯防止環境を整えることが重要です。
特に薬物事件では、 「もう二度としません」と言うだけではなく、事件後に実際にどのような行動を始めたのか が重要となることがあります。
初犯の大麻事件で不起訴の可能性を知りたい場合、起訴された後に執行猶予を目指したい場合、営利目的や譲渡等を含む事件で実刑の可能性が不安な場合には、事件内容を具体的に確認した上で、できるだけ早い段階から弁護方針と再発防止策を検討することをおすすめします。
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