はじめに
「大麻事件で逮捕されたら、医師免許は取り消されるのでしょうか。」「初犯で執行猶予が付いた場合でも、医業停止になるのでしょうか。」
「刑事事件が終わった後、医道審議会ではどのような手続が行われるのでしょうか。」
医師が大麻事件で逮捕された場合、刑事処分だけでなく、医師免許への影響を心配される方も多いでしょう。
医師の場合、刑事事件で有罪判決を受けた後、さらに医師法に基づく行政処分が問題となる可能性があります。
行政処分には、戒告、医業停止、医師免許の取消しがあり、処分の内容によっては医師としての仕事や生活に重大な影響が生じます。
特に注意したいのは、刑事事件で執行猶予付き判決となった場合でも、医業停止などの行政処分を受ける可能性があるという点です。
また、医道審議会における行政処分は、刑事事件の結果だけで機械的に決まるものではありません。
事件の内容や刑事処分に加え、医師としての職業倫理、行為の悪質性、再発防止に向けた取組みなどを踏まえた検討が必要となります。
そのため、医師の薬物事件では、刑事事件の初期段階から、その後の医道審議会における行政処分を見据えた弁護活動を行うことが重要です。
当事務所では、これまで医道審議会に関する案件を多数取り扱ってきました。
本記事では、医師が大麻事件で逮捕・捜査された場合について、刑事処分と医師免許の関係、過去の行政処分例、医道審議会の手続、刑事弁護段階から準備すべき事項などを、実務的な観点から解説します。
大麻事件で逮捕されたら医師免許は取り消されるのか
結論からいうと、大麻事件で逮捕されたという事実だけで、直ちに医師免許が取り消されるわけではありません。刑事事件では、逮捕、勾留、起訴、不起訴、有罪判決など、それぞれの段階を分けて考える必要があります。
医師法第4条では、罰金以上の刑に処せられた者などについて、医師免許を与えないことがあると定められています。
また、医師法第7条では、医師が同法第4条各号のいずれかに該当する場合や、医師としての品位を損するような行為があった場合に、厚生労働大臣が次の行政処分を行うことができるとされています。
- 戒告
- 3年以内の医業停止
- 医師免許の取消し
一方で、大麻事件で有罪判決を受けた場合には、刑事事件とは別に医師法上の行政処分が問題となる可能性があります。
また、刑事事件で不起訴となった場合でも、医師法上の別の処分根拠が問題となる余地があるため、行政処分の可能性が当然に消滅するとは限りません。
刑事事件と医道審議会による行政処分は別の手続
医師の大麻事件を考える上で重要なのは、刑事事件と医師法上の行政処分を区別することです。刑事事件では、警察・検察による捜査が行われ、起訴された場合には裁判所が有罪・無罪や刑罰を判断します。
これに対して、医師免許に関する行政処分は、医師法に基づき、医道審議会の意見を聴いた上で厚生労働大臣が行うものです。
つまり、刑事裁判で執行猶予付き判決となり、刑務所へ収容されなかったとしても、その後に医業停止処分を受ける可能性があります。
また、刑事事件が終了したからといって、直ちに翌日から医業停止になるわけでもありません。
行政処分には刑事事件とは別の手続があり、処分が決定されるまでに一定の期間を要することがあります。
医師にとっては、刑事事件の終了が、必ずしも資格に関する問題の終了を意味しないことに注意が必要です。
医道審議会では何を基準に行政処分が判断されるのか
医道審議会医道分科会は、「医師及び歯科医師に対する行政処分の考え方について」という基準を公表しています。この基準では、行政処分の内容を判断する際、刑事裁判における量刑や執行猶予の有無などを参考にすることを基本としています。
その上で、医師として求められる倫理に反する行為については、その事情を考慮して厳しく判断するという考え方が示されています。
したがって、医道審議会における行政処分は、単に犯罪名だけで決まるものではありません。
大麻事件であれば、例えば次のような事情が検討上重要になると考えられます。
- 大麻の施用、所持、譲受け、譲渡等のいずれが問題となっているのか
- 犯行が一時的なものか、反復継続していたものか
- 所持量や施用期間、関与の程度
- 営利目的や他人への譲渡の有無
- 前科・前歴や同種行為の有無
- 刑事裁判における量刑や執行猶予の有無
- 事件後の治療や再発防止に向けた取組み
- 医師としての職務との関係
- その他、医師としての適格性や職業倫理に関する事情
特に薬物事件については、医道審議会の行政処分基準において、医師が薬物の作用や危険性に関する知識を有しているにもかかわらず違反行為に及んだ点を重く評価する考え方が示されています。
医療行為とは無関係な私生活上の大麻事件であっても、医師としての職業倫理や適格性が問題となる可能性があるということです。
医師が大麻事件で医業停止となった過去の事例
厚生労働省は、医道審議会医道分科会における行政処分の答申概要を公表しています。過去には、大麻取締法違反を理由として医師に医業停止処分が答申された例があります。
| 医道審議会の開催時期 | 公表された違反内容 | 答申された行政処分 |
|---|---|---|
| 2020年3月 | 大麻取締法違反 | 医業停止1年6月 |
| 2021年1月 | 大麻取締法違反 | 医業停止1年6月 |
| 2021年9月 | 大麻取締法違反 | 医業停止1年 |
| 2023年11月 | 麻薬及び向精神薬取締法違反・大麻取締法違反 | 医業停止2年 |
ただし、厚生労働省が公表する答申概要だけでは、個々の事件における施用回数、所持量、前科の有無、刑事裁判の具体的な量刑、再発防止策など、すべての事情を把握できるわけではありません。
そのため、これらの事例を単純に比較して、特定の事情が何か月の処分差を生じさせたと断定することはできません。
また、2024年12月の法改正によって大麻の不正な施用も処罰対象となったため、改正前の大麻取締法違反の事例と、改正後の施用事件をそのまま同一視することも適切ではありません。
重要なのは、過去に医業停止1年となった例があるからといって、別の大麻事件でも当然に医業停止1年になるわけではないという点です。
処分の見通しを検討する際には、過去の公表事例に加え、具体的な犯罪事実、刑事処分の内容、事件後の事情などを総合的に確認する必要があります。
初犯・執行猶予でも医業停止になる可能性はある
「初犯で執行猶予が付けば、医師免許には影響しないのでしょうか。」このような質問を受けることがあります。
しかし、執行猶予付き判決であっても、有罪判決であることに変わりはありません。
そのため、医師法第4条に定める「罰金以上の刑に処せられた者」に該当することとなり、医師法第7条に基づく行政処分が問題となる可能性があります。
また、医道審議会の行政処分基準では、刑事裁判の量刑や執行猶予の有無を参考にすることが明示されています。
したがって、執行猶予が付いたかどうかは行政処分の検討において意味を持ちますが、それだけで行政処分を免れるわけではありません。
特に医師の場合には、刑事事件で実刑を回避することだけを目標とするのではなく、その後の行政処分まで見据えて弁護方針を検討する必要があります。
大麻事件で不起訴になれば医道審議会の処分は受けないのか
不起訴とは、検察官が刑事裁判を提起しないと判断することです。不起訴となれば、その事件について刑事裁判で有罪判決を受けることはありません。
これは医師にとって非常に重要な意味を持ちます。
医師法第4条では「罰金以上の刑に処せられた者」が相対的欠格事由の一つとされているため、不起訴となれば、少なくとも当該事件について、この事由に該当することはありません。
そのため、医師の大麻事件において不起訴処分を目指すことは、前科を避けるという意味だけでなく、その後の医師免許への影響を考える上でも重要です。
もっとも、不起訴になれば医師法上の行政処分が絶対に行われないとまではいえません。
医師法第7条では、同法第4条の相対的欠格事由に該当する場合だけでなく、医師としての品位を損するような行為があった場合も行政処分の対象となり得るためです。
また、不起訴には嫌疑なし、嫌疑不十分、起訴猶予などがあり、それぞれ事実関係や処分理由は異なります。
したがって、不起訴となった場合でも、その理由や事件の具体的な内容を踏まえ、行政処分の可能性を個別に検討する必要があります。
刑事事件の初期段階から医道審議会を見据えた弁護活動が重要
医師の大麻事件では、刑事事件と行政処分を別々の問題として扱うのではなく、相互に関連する問題として検討することが重要です。刑事事件では、不起訴の獲得、身柄拘束からの早期解放、刑事裁判における量刑などが問題となります。
一方、医道審議会では、刑事事件の内容や判決結果を踏まえ、医師としての職業倫理や適格性が検討されます。
そのため、刑事事件の段階でどのような主張を行い、どのような資料を提出するかは、後の行政処分を考える上でも重要な意味を持ちます。
1.刑事事件における事実関係を正確に整理する
まず重要なのは、問題となっている行為の内容を正確に整理することです。大麻事件といっても、単純な施用や所持と、反復継続的な譲渡、営利目的の行為などでは、事件の性質が異なります。
また、施用や所持を認める事件と、故意や所持の認識などを争う事件でも、弁護方針は異なります。
刑事事件において認定された事実は、その後の行政処分を検討する上でも重要な資料となり得ます。
そのため、認めるべき事実と争うべき事実を慎重に区別し、客観的な証拠に基づいて対応する必要があります。
2.再発防止に向けた取組みを早期に開始する
薬物事件では、再発防止に向けた取組みも重要です。事案によっては、薬物依存に関する専門医療機関への受診、継続的な治療、家族による支援、生活環境の見直しなどを検討することになります。
これらは刑事裁判における情状資料となり得るだけでなく、後の行政処分手続において、事件後の取組みを説明する資料としても活用できる可能性があります。
もっとも、単に通院を開始したという事実だけで、行政処分が軽くなることが保証されるわけではありません。
本人の問題認識、治療の必要性、継続状況、具体的な再発防止策などを踏まえた検討が必要です。
3.刑事事件と行政処分で主張が矛盾しないようにする
刑事事件と行政処分の双方を見据える上で、特に注意したいのが主張の整合性です。例えば、刑事事件では一定の事実を否認していたにもかかわらず、行政処分手続では十分な検討をせずに異なる説明をしてしまえば、供述の信用性などが問題となる可能性があります。
一方で、刑事事件の段階で事実関係を十分に検討せず、安易に不利な事実まで認めることも適切ではありません。
刑事事件と行政処分では手続の目的や判断対象が異なりますが、両者で問題となる事実関係には重なる部分があります。
そのため、刑事事件の初期段階から、後の行政処分でどのような説明が必要になるのかも見据えて対応することが望ましいといえます。
医道審議会による行政処分までの流れ
刑事事件が終了した後、医師法上の行政処分が検討される場合には、刑事事件とは別の手続が進められます。具体的な経過や期間は事案によって異なりますが、行政処分が検討される場合には、おおむね次のような段階が問題となります。
1.刑事事件の結果や処分対象事実の確認
行政処分の検討に当たっては、刑事事件の結果や問題となった行為の内容が重要な資料となります。有罪判決を受けた事件では、判決内容や認定された事実関係などを踏まえて検討が行われます。
もっとも、刑事事件の終了から行政処分までの期間が一律に決まっているわけではありません。
2.意見の聴取・弁明の聴取
医師法では、行政処分の内容に応じて、処分対象者の意見を聴くための手続が定められています。医師免許の取消しを予定する場合には、医師法第7条に基づく意見の聴取が問題となります。
一方、医業停止を予定する場合には、弁明の聴取が行われることがあります。
医業停止に関する弁明の聴取では、予定される処分内容や処分の原因となる事実などが通知され、対象となる医師が意見を述べる機会が設けられます。
また、医師法上、代理人の出頭や証拠書類等の提出も認められています。
この段階では、単に反省していると述べるだけではなく、処分対象事実、刑事事件の結果、事件後の事情、再発防止策などを整理し、必要に応じて資料を提出することが重要です。
3.医道審議会による審議
厚生労働大臣が医師法第7条に基づく行政処分を行う場合には、あらかじめ医道審議会の意見を聴く必要があります。医道審議会では、刑事事件の内容や行政処分の判断基準などを踏まえて審議が行われます。
なお、意見の聴取や弁明の聴取と、医道審議会による審議そのものは区別する必要があります。
医師本人が医道審議会の審議の場で直接説明することが当然に予定されているわけではありません。
そのため、所定の意見聴取・弁明手続の段階で、主張や資料を適切に提出することが重要になります。
4.厚生労働大臣による処分決定
医道審議会の意見を踏まえ、厚生労働大臣が行政処分を決定します。行政処分として医業停止が命じられた場合には、定められた期間、医業を行うことができなくなります。
医師免許の取消しとなった場合には、医師として医業を行う資格を失うことになります。
行政処分の内容によって、勤務先や医療機関の運営に与える影響も大きく異なります。
医道審議会への対応ではどのような資料を準備するべきか
医道審議会に関する行政処分手続では、刑事事件の結果だけでなく、個別の事情をどのように説明するかが重要です。事案によって異なりますが、例えば次のような資料の準備が考えられます。
- 刑事事件の判決書など、刑事処分の内容が分かる資料
- 事件の経緯や事実関係を整理した説明書面
- 本人の反省や再発防止に関する書面
- 専門医療機関への通院・治療に関する資料
- 家族等による支援体制を示す資料
- 勤務状況や職務上の経歴に関する資料
- 事件後の生活状況や改善状況を示す資料
例えば、薬物依存に関する治療が必要な事案では、治療内容や継続状況が重要となる一方、そもそも依存性や反復性が争われている事案では、提出する資料の内容を慎重に検討する必要があります。
また、刑事事件における主張と整合しない内容の書面を提出することも避けるべきです。
重要なのは、事件の性質に応じて、医師としての適格性や再発防止に関する事情を、客観的な資料に基づいて適切に説明することです。
医業停止となった場合、医師として働くことはできるのか
医業停止処分を受けた場合、処分期間中は医業を行うことができません。これは、勤務医であるか開業医であるかによって変わるものではありません。
勤務医の場合には、外来診療、手術、当直など、医師として行う業務への影響が問題となります。
開業医の場合には、診療を継続できなくなることに加え、患者への対応、代診医の確保、スタッフの雇用、医療機関の運営などについても検討する必要があります。
また、医業停止は医師免許の取消しとは異なりますが、処分期間が終了したからといって、勤務先との雇用関係や従前の勤務条件が当然に回復するわけではありません。
勤務先の就業規則や雇用契約、医療機関の運営体制などによって、別途対応が必要になる場合があります。
したがって、行政処分への対応では、処分の内容だけでなく、その後の医師としての勤務や生活への影響も見据えて準備することが重要です。
行政処分後には再教育研修が必要となることがある
医師法第7条の2では、戒告や医業停止などの処分を受けた医師に対して、厚生労働大臣が再教育研修を受けるよう命じることができると定められています。再教育研修は、医師としての倫理の保持や、医師として必要な知識・技能に関する研修です。
そのため、医師の大麻事件では、行政処分の内容だけでなく、再教育研修の対象となるかどうかも確認する必要があります。
行政処分への対応を検討する際には、医業停止期間中の勤務上の問題や、処分後の再教育研修なども含めて、医師としての業務再開を見据えた準備が必要となります。
勤務先の病院に大麻事件を知られることはあるのか
大麻事件で逮捕されたからといって、すべての事件について警察から勤務先へ一律に通知されるわけではありません。しかし、逮捕・勾留によって勤務できなくなれば、結果として勤務先に事件を知られる可能性があります。
特に医師の場合には、
- 外来診療や手術の予定が入っている
- 当直勤務がある
- 長期間の欠勤が難しい
- 担当患者の引継ぎが必要になる
- 勤務先から欠勤理由の説明を求められる
また、事件が報道された場合や、勤務先が別の経路から事件を把握する可能性もあります。
勤務先が事件を把握した場合には、就業規則や雇用契約、事件の内容などによって、休職や懲戒処分などが問題となることがあります。
ただし、刑事事件で逮捕されたという事実だけで、勤務先による解雇などが当然に有効となるわけではありません。
具体的な対応については、勤務先との契約関係や就業規則、事件の内容を踏まえて検討する必要があります。
医師の場合は逮捕・勾留からの早期解放も重要
医師の大麻事件では、医師免許への影響だけでなく、身柄拘束による勤務への影響も重要です。逮捕・勾留によって長期間勤務できなくなれば、患者への対応や勤務先との関係に重大な支障が生じる可能性があります。
そのため、刑事事件の内容に応じて、勾留を避けるための活動、勾留に対する不服申立て、起訴後の保釈請求などを検討することになります。
もっとも、医師という職業に就いていることだけで、当然に逮捕や勾留を回避できるわけではありません。
身柄拘束の必要性は、逃亡や罪証隠滅のおそれなど、個別の事情を踏まえて判断されます。
弁護活動においては、住居や勤務状況、家族の支援、捜査への対応状況などを整理し、身柄拘束の必要性について適切に主張することが重要です。
医師の大麻事件では刑事弁護と行政処分への対応を一体的に検討する
医師の大麻事件では、刑事事件への対応だけを考えていては十分でない場合があります。刑事事件で不起訴を目指すのか、起訴された場合にどのような量刑を目指すのか、身柄拘束からの早期解放を図るのかといった問題に加え、その後の医師法上の行政処分についても検討する必要があります。
また、刑事事件が終了した後に初めて医道審議会への対応を考えるのではなく、刑事事件の段階から、後の行政処分で問題となり得る事情を整理しておくことが望ましいといえます。
当事務所では、これまで医道審議会に関する案件を多数取り扱ってきました。
刑事事件についても専門的に取り扱っており、医師が刑事事件の捜査を受けた場合には、刑事処分と医師免許に関する行政処分の双方を見据えた対応を検討することができます。
特に薬物事件では、刑事事件における事実関係の整理、再発防止に向けた取組み、刑事裁判で提出する情状資料などが、その後の行政処分を考える上でも重要な意味を持つ場合があります。
医師の大麻事件では、刑事事件と医道審議会への対応を切り離すのではなく、両者を見据えて一貫した弁護方針を検討することが重要です。
よくある質問
Q 大麻事件で逮捕されたら医師免許は取り消されますか。
逮捕されたという事実だけで、直ちに医師免許が取り消されるわけではありません。ただし、有罪判決を受けた場合などには、医師法に基づく行政処分が問題となる可能性があります。
Q 初犯で執行猶予が付けば医業停止にはなりませんか。
初犯で執行猶予付き判決となった場合でも、医業停止などの行政処分を受ける可能性があります。刑事裁判の量刑や執行猶予の有無は行政処分の判断において参考とされますが、それだけで行政処分の有無や内容が決まるわけではありません。
Q 大麻事件では医業停止何年になりますか。
過去には、大麻取締法違反を理由として医業停止1年、1年6月などが答申された例があります。もっとも、行政処分の内容は個別の事情によって異なります。
過去の公表事例だけから、自分の事件の医業停止期間を正確に予測することは困難です。
Q 不起訴になれば医道審議会の対象にはなりませんか。
不起訴となれば、その事件について罰金以上の有罪判決を受けることはありません。これは医師法上の行政処分を考える上でも重要です。
ただし、医師としての品位を損する行為があった場合など、別の処分根拠が問題となる余地があるため、不起訴となれば行政処分が絶対に行われないとは限りません。
Q 医道審議会には本人が出席して説明するのでしょうか。
医師法上、行政処分を予定する場合には、処分の内容に応じて意見の聴取や弁明の聴取などの手続が設けられています。これらの手続と医道審議会による審議そのものは別です。
本人が医道審議会の審議の場で直接説明することが当然に予定されているわけではありません。
Q 医道審議会の行政処分手続にも弁護士を依頼できますか。
依頼することは可能です。医師法上、所定の手続において代理人の出頭や証拠書類等の提出が認められています。
弁護士に依頼することで、処分対象事実の整理、提出資料の検討、弁明書等の作成、手続への対応などについて支援を受けることができます。
Q 刑事事件が終わってから医道審議会対応を依頼しても間に合いますか。
刑事事件の終了後から対応を開始することも可能です。ただし、刑事事件の段階で認定された事実や判決内容は、その後の行政処分を検討する上でも重要な資料となります。
そのため、可能であれば刑事事件の初期段階から行政処分を見据えて対応することが望ましいといえます。
まとめ
医師が大麻事件で逮捕された場合、逮捕されたという事実だけで直ちに医師免許が取り消されるわけではありません。しかし、大麻事件で有罪判決を受けた場合には、刑事事件とは別に、医師法に基づく行政処分が問題となる可能性があります。
また、初犯で執行猶予付き判決となった場合でも、医業停止などの行政処分を受ける可能性があります。
医道審議会における行政処分では、刑事裁判の量刑や執行猶予の有無などが参考とされるほか、医師としての職業倫理や事件の具体的な内容なども問題となります。
そのため、医師の大麻事件では、単に刑事事件でどのような処分を受けるかという問題だけではなく、
- 刑事事件における事実関係の整理
- 不起訴や刑事裁判における量刑の見通し
- 身柄拘束による勤務への影響
- 再発防止に向けた取組み
- 医道審議会における行政処分への対応
- 医業停止後の勤務や医療機関の運営
特に重要なのは、刑事事件が終了してから医道審議会への対応を考えるのではなく、刑事事件の初期段階から、その後の行政処分を見据えた弁護活動を行うことです。
当事務所では、医道審議会に関する案件を多数取り扱ってきました。
医師が大麻事件で捜査を受け、医師免許や勤務先への影響を心配されている場合には、刑事事件と行政処分の双方を見据えて、早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。