はじめに
マッチングアプリで知り合った相手と食事をし、お酒を飲み、その後ホテルへ行った。解散後も通常どおりメッセージのやり取りを続けており、特にトラブルになった様子もなかった。
ところが数日後、あるいは数週間後になって突然、 「○○警察署ですが、お話を伺いたいことがあります。」 という連絡を受けるケースがあります。
相談者の方からは、
- 「相手も同意していたと思っていました。」
- 「その後も普通にLINEをしていました。」
- 「まさか刑事事件になるとは思っていませんでした。」
近年では、マッチングアプリを利用した出会いが一般的になった一方で、その後の男女間トラブルが不同意性交事件へ発展するケースもみられます。
特に不同意性交事件では、「相手も同意していると理解していた」という認識自体が争点となることも少なくありません。
本記事では、マッチングアプリをきっかけとした不同意性交事件で問題となりやすいポイントや、後日被害届が提出された場合の対応について解説します。
マッチングアプリをきっかけとした事案が増えている
現在では、マッチングアプリを利用した出会いは珍しいものではありません。職場や学校、友人の紹介などとは異なり、お互いのことを十分に知らないまま会うことも多く、短時間で親密な関係になるケースもあります。
マッチングアプリでの出会いには、
- 初対面であることが多い
- 飲酒を伴うことが多い
- 交際前に性的関係となることがある
- お互いの価値観や考え方を十分に把握できていない
そのため、一方では「当然に同意があった」と考えていても、他方では異なる認識を持っていることがあります。
実際に当事務所へ寄せられるご相談でも、マッチングアプリをきっかけとした男女間トラブルが、その後刑事事件へ発展したケースは少なくありません。
「相手も同意していると思っていた」が争点となるケース
マッチングアプリを利用した事案で最も多くみられるのが、 「相手も同意していると思っていた。」 というケースです。例えば、
- 食事や飲酒を共にした
- 相手が好意的だった
- 二人でホテルへ入った
- 明確に拒否された認識はなかった
- 解散後も通常どおり連絡を取り合っていた
しかし、後日になって相手方から、
- 「断れなかった。」
- 「怖くて拒否できなかった。」
- 「飲酒していて正常な判断ができなかった。」
- 「本当は嫌だった。」
本人としては、 「その場では何も言われなかった。」 「その後も普通に連絡を取り合っていた。」 という事情があるため、 「まさか犯罪になるとは思わなかった。」 と驚かれるケースも少なくありません。
もっとも、個々の事案によって事情は大きく異なります。
マッチングアプリを利用した事案では、当時どのような状況で、双方がどのように認識していたのかが重要な争点となることがあります。
後日になって被害届が提出されることはあるのか
「本当に被害を受けたのであれば、その日のうちに警察へ相談するのではないか。」 そう考える方も少なくありません。しかし実際には、
- 数日後
- 数週間後
- 場合によっては数か月後
友人や家族へ相談した結果、警察へ相談することを決める場合もありますし、時間の経過とともに被害感情が強くなるケースもあります。
そのため、
- 「その後も普通にLINEをしていた。」
- 「何事もなく解散した。」
- 「また会う約束をしていた。」
「その場では何も言われなかったから大丈夫。」 と自己判断することは避けるべきでしょう。
メッセージのやり取りは重要な資料となることがある
マッチングアプリを利用した事案では、LINEなどのメッセージアプリや、アプリ内のやり取りが重要な資料となることがあります。例えば、
- 会う約束をした経緯
- 当日のやり取り
- 食事や飲酒の予定
- ホテルへ行くまでの流れ
- 解散後のやり取り
- 後日のメッセージ
特に、 「その後も普通に連絡を取り合っていた。」 「また会う約束をしていた。」 という事情が、後に問題となることがあります。
もっとも、一部のスクリーンショットだけで結論が決まるわけではありません。
実務では、前後のやり取りを含めた全体の流れを踏まえて検討することが重要になります。
そのため、自己判断でメッセージを削除したり、アプリを退会したりすることは避けるべきです。
飲酒を伴うケースでは慎重な対応が必要
マッチングアプリで知り合った相手との食事では、飲酒を伴うことも少なくありません。しかし、
- かなり酔っていた
- 記憶が曖昧だった
- 双方とも飲酒していた
- 相手の受け答えや歩行が不自然だった
「相手もお酒を飲んでいたから問題ない。」 と考える方もいますが、 実際には、
- 飲酒量
- 酩酊の程度
- 会話の内容
- 当時の受け答え
また、 「自分も酔っていてよく覚えていない。」 というケースも少なくありません。
飲酒を伴う事案では、当日の状況を慎重に整理することが重要です。
マッチングアプリでトラブルになりやすいケース
飲酒量が多い場合
大量の飲酒を伴う場合には、お互いの認識に違いが生じやすくなります。当日初めて会った場合
初対面同士では、お互いの価値観や考え方を十分に理解できていないことがあります。年齢確認が十分できていない場合
プロフィール情報だけでは、年齢や属性を正確に把握できない場合があります。 不安がある場合には、慎重な対応が望まれます。相手がためらっている様子を見せている場合
明確な拒否がなかったとしても、- 迷っている
- 戸惑っている
- 嫌がっているように見える
飲酒後すぐにホテルへ行った場合
飲酒を伴った当日に性的関係となったケースでは、後に双方の認識の違いが問題となることがあります。トラブルを避けるために注意したいこと
年齢確認は慎重に行う
プロフィール情報だけで判断せず、不安がある場合には十分確認することが重要です。飲酒を前提とした出会いには注意する
大量の飲酒は、お互いの認識の違いが生じる原因となることがあります。相手がためらっている様子を見せたら行為を控える
明確な拒否がなくても、- 迷っている
- 戸惑っている
- 嫌がっているように見える
当日すぐにホテルへ行くことのリスクを理解する
初対面当日に性的関係となることは、後日認識の違いが問題となる可能性があります。警察から連絡が来たらどうなるのか
警察から突然連絡を受けると、- 「すぐに逮捕されるのではないか。」
- 「会社に知られてしまうのではないか。」
- 「前科が付いてしまうのではないか。」
もっとも、警察から連絡が来たからといって、直ちに逮捕されるわけではありません。
事案によっては、在宅事件として捜査が進むケースも少なくありません。
不同意性交事件における警察からの呼出しや、その後の手続については、以下の記事でも詳しく解説しています。
逮捕されることはあるのか
マッチングアプリをきっかけとした事案であっても、逮捕される可能性が全くないわけではありません。例えば、
- 警察からの呼出しに応じない
- 被害者へ直接連絡する
- メッセージやアカウントを削除する
- 所在が不明である
一方で、
- 住所や勤務先が明らかである
- 呼出しに応じている
- 証拠隠滅のおそれが低い
家族や会社に知られるのか
相談者の方が非常に気にされる点の一つです。在宅事件の場合には、直ちに勤務先や家族へ連絡が行くとは限りません。
もっとも、
- 逮捕された場合
- 家宅捜索が行われた場合
- 身元引受や家族の協力が必要となった場合
詳しくは関連記事をご覧ください。
示談はできるのか
不同意性交事件では、事案によって示談が重要となることがあります。もっとも、 「自分で謝罪したい。」 「直接話し合いたい。」 という理由で相手へ連絡することはおすすめできません。
直接連絡を行うことで、
- 圧力を受けた
- 口止めされた
- 働きかけを受けた
示談については、適切な時期・方法で進めることが重要です。
詳しくは関連記事をご覧ください。
不起訴になる可能性はあるのか
不同意性交事件であっても、すべての事件が起訴されるわけではありません。検察官は、
- 証拠関係
- 示談の有無
- 前科前歴
- 反省状況
- 事件の内容
- その他個別事情
そのため、不起訴となる可能性が全くないわけではありません。
詳しくは関連記事をご覧ください。
やってはいけない行動
相手へ直接連絡する
自己判断で相手へ謝罪や説明を行うことは避けるべきです。連絡内容によっては、 「口止めをされた。」 「働きかけを受けた。」 などと受け取られる可能性があります。
マッチングアプリのアカウントを削除する
利用していたマッチングアプリを退会したり、アカウントを削除したりすると、過去のやり取りが確認できなくなる場合があります。状況によっては、証拠隠滅を疑われる可能性もあります。
メッセージを削除する
LINEやメッセージアプリの内容は、当時の状況を確認する上で重要な資料となる場合があります。自己判断で削除することは避けましょう。
SNSへ投稿する
事件についてSNSへ投稿したり、第三者へ公開したりすることはおすすめできません。投稿内容が思わぬ形で関係者へ伝わる可能性があります。
また、その後の捜査や示談交渉へ影響することもあります。
弁護士へ相談せず事情聴取へ行く
警察から呼出しを受けると、 「正直に説明すればすぐ終わるだろう。」 と考えてしまう方も少なくありません。しかし、一度行った供述は、その後の捜査や処分判断にも影響する可能性があります。
警察から連絡を受けた段階で、一度弁護士へ相談した上で対応を検討することをおすすめします。
よくある質問
Q ホテルへ行った場合は同意があったことになりますか。
いいえ。ホテルへ行ったという事実だけで、当然に同意が認められるわけではありません。
個別具体的な事情を踏まえて判断されます。
Q 解散後も普通に連絡していました。それでも被害届は出されますか。
はい。後日になって被害届や被害相談が行われるケースもあります。
そのため、「その後も普通にやり取りしていたから大丈夫。」と自己判断することは避けるべきです。
Q 相手へ謝罪した方がよいですか。
自己判断による連絡はおすすめできません。まずは弁護士へ相談した上で、今後の対応を検討することが重要です。
Q LINEやメッセージは削除しない方がよいですか。
はい。当時の状況を整理する上で重要な資料となる場合があります。
削除する前に、一度弁護士へ相談することをおすすめします。
まとめ
マッチングアプリをきっかけとした不同意性交事件では、 「相手も同意していると思っていた。」 という双方の認識の違いが争点となることがあります。また、
- 飲酒の状況
- 当日のやり取り
- 解散後の連絡
- メッセージ全体の流れ
さらに、
- 大量の飲酒
- 当日初めて会ったケース
- 年齢確認が十分できていないケース
- 相手がためらっている様子があったケース
一方で、
- 相手へ直接連絡する
- マッチングアプリを退会する
- メッセージを削除する
- SNSへ投稿する
- 弁護士へ相談せず事情聴取へ臨む
マッチングアプリをきっかけとした不同意性交事件では、初動対応がその後の結果に大きく影響することがあります。
警察から連絡を受けた場合や、後日被害届が提出された可能性がある場合には、事実関係を十分整理した上で、できるだけ早い段階で弁護士へ相談することをおすすめします。